日米協定「熟議」遠く きょう衆院委採決
2019年11月15日

日米貿易協定の承認案は15日、衆院外務委員会で採決される。政府・与党が成立を急ぐ中、審議は11時間で終わり、環太平洋連携協定(TPP)を大きく下回る。農産品の影響試算の根拠や、牛肉のセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の実効性などを巡る政府と野党の議論は平行線のまま。「熟議」につながらないまま衆院の審議は終わる。
10月24日の衆院本会議で審議入りしたが、外務委で予定されていた審議は2度延期された。公職選挙法違反疑惑を巡り、辞任した閣僚2人が説明責任を果たさないことに野党が反発し、国会審議が空転したためだ。
本格的な質疑は11月6日に始まったが、8日の質疑では要求資料の提出に応じない政府・与党に主要野党が反発して退席。与党側は、質問者不在のまま時間を進める「空回し」で審議時間を消化するなど対立が深まった。13日には正常化したが、政府と野党のやりとりはかみ合わないまま。結局、与野党の合意で採決日程が決まり、衆院での実質的な審議は終わった。
衆院での審議時間は11時間。「空回し」の時間を除けば10時間にも満たない。TPPは2016年に特別委員会を設けて70時間以上、米国抜きのTPP11は18年に20時間以上審議したのと比べると、議論の不足は否めない。
政府・与党は、日米協定を今国会の最重要案件に位置付ける。その分、野党の視線も厳しく、国会運営の駆け引き材料になった面があるが、野党内には「審議時間をより多く確保する方法がなかったか」(農林幹部)との声も漏れる。
審議の中で、野党が特に批判を強めたのが影響試算だ。政府は農産品について「生産額は減少するが、国内対策によって生産量や農家所得は維持される」との説明を変えていないが、国内対策は指針となるTPP等関連政策大綱の改定さえ完了していない。
野党からは「予算を出してから言え」と、政府説明の根拠の乏しさに批判が相次いだ。
より現実的な試算を求める声も出た。日米協定の試算は、既に発効済みのTPPや欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を前提としていないことを野党は問題視。既存の通商協定を踏まえた具体的な試算を示すよう要求したが、政府・与党側は一貫して拒否している。
牛肉SGは、発動した場合の再協議規定を巡る攻防が激化した。発動すれば「発動水準をより一層高いものに調整する」協議に入り、期限も決まっている。引き上げを前提とした規定だとして、野党はSGの効果を疑問視する。
一方、SGの再協議についての政府答弁は「結果は予断していない」(茂木敏充外相)にとどまり、SGの先行きの不透明さは解消されないままだ。生産量や農家所得を維持する国内対策の具体像や、SGの実効性をどう確保するかなど、農業経営に直結する論点の議論は深まらなかった。
審議時間 延期・空回しTPP下回る
10月24日の衆院本会議で審議入りしたが、外務委で予定されていた審議は2度延期された。公職選挙法違反疑惑を巡り、辞任した閣僚2人が説明責任を果たさないことに野党が反発し、国会審議が空転したためだ。
本格的な質疑は11月6日に始まったが、8日の質疑では要求資料の提出に応じない政府・与党に主要野党が反発して退席。与党側は、質問者不在のまま時間を進める「空回し」で審議時間を消化するなど対立が深まった。13日には正常化したが、政府と野党のやりとりはかみ合わないまま。結局、与野党の合意で採決日程が決まり、衆院での実質的な審議は終わった。
衆院での審議時間は11時間。「空回し」の時間を除けば10時間にも満たない。TPPは2016年に特別委員会を設けて70時間以上、米国抜きのTPP11は18年に20時間以上審議したのと比べると、議論の不足は否めない。
政府・与党は、日米協定を今国会の最重要案件に位置付ける。その分、野党の視線も厳しく、国会運営の駆け引き材料になった面があるが、野党内には「審議時間をより多く確保する方法がなかったか」(農林幹部)との声も漏れる。
試算・SG 議論は平行線なお残る懸念
審議の中で、野党が特に批判を強めたのが影響試算だ。政府は農産品について「生産額は減少するが、国内対策によって生産量や農家所得は維持される」との説明を変えていないが、国内対策は指針となるTPP等関連政策大綱の改定さえ完了していない。
野党からは「予算を出してから言え」と、政府説明の根拠の乏しさに批判が相次いだ。
より現実的な試算を求める声も出た。日米協定の試算は、既に発効済みのTPPや欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を前提としていないことを野党は問題視。既存の通商協定を踏まえた具体的な試算を示すよう要求したが、政府・与党側は一貫して拒否している。
牛肉SGは、発動した場合の再協議規定を巡る攻防が激化した。発動すれば「発動水準をより一層高いものに調整する」協議に入り、期限も決まっている。引き上げを前提とした規定だとして、野党はSGの効果を疑問視する。
一方、SGの再協議についての政府答弁は「結果は予断していない」(茂木敏充外相)にとどまり、SGの先行きの不透明さは解消されないままだ。生産量や農家所得を維持する国内対策の具体像や、SGの実効性をどう確保するかなど、農業経営に直結する論点の議論は深まらなかった。
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地方版総合戦略 5年後へ真剣に丁寧に 住民主体本音で議論 北海道鹿追町
今後5年間の地域の目指す将来像を描く地方版総合戦略の策定が各地で進む。地方創生の交付金を得るためだけでなく、地域ならではの“未来予想図”を作ろうとワークショップなどの手法を取り入れる自治体が目立つ。地域の課題解決や目標に向け議論を深め、住民主体の策定に向けた模索が始まっている。
農商工や福祉 多世代が参加
11月半ば、人口5300人の北海道鹿追町。「公共交通機関が減った。畜産農家と連携しバイオガスでバスを走らせられないか」「移住者や地域に興味を持つ人を温かく迎えられる町にしたい」。農家や会社員、高校生や高齢者、役場職員、JA鹿追町役職員ら80人が思い思いの意見を出す。各テーブルで付箋に自分の考えを書き、町の課題や将来像をポスターに記した。
千歳市から移住した斉藤亜利紗さん(26)は「JAや商工会の人と初めて話し、親しくなれた。町の未来は自分たちの問題。毎年ワークショップを開いてほしい」と話す。
同町が夏から開くワークショップには毎回、JA役職員が10人程度と農家も参加する。JAの櫻井文彦常務は「農業の課題を農家以外の人と共有したいと思い参加した。多世代と意見を交わせて楽しい」。80ヘクタールで畑作経営する植田葉子さん(55)は「農業と家事に追われ、真剣に街づくりを考えたことはなかった。意見を出し合って作った計画ができると思う」と話す。
同町では、5年前の同戦略を町の産官学の代表を集めた審議会で決めた。今回は審議会とは別に、公募などで集まった住民がワークショップを開き、福祉や経済などテーマごとに話し合い戦略に反映させる。同町企画財政課は「新たな戦略策定は住民主体で身近なものにしたい」と話す。年度内に、戦略と町の総合計画を策定する方針だ。
外部委託の反省踏まえ
地域の将来設計を描く地方版総合戦略。地方自治総合研究所が2018年に公表した調査では、回答した1342市町村のうち77%がコンサルタントなど外部に策定を委託していた。この反省から、プロセスを重視し住民主体の戦略にする動きが生まれている。アンケートや集落点検など手法はさまざま。策定時期は基本的に今年度だが、話し合う期間を確保するため、策定を来年度に延長する自治体も複数ある。
香川県東かがわ市は11月上旬、気軽で自由に対話ができる「ワールドカフェ」を試みた。今後も対話型の話し合いを行い、戦略づくりの参考にする。同市は「言いっ放しでなく、住民の意見を戦略に反映する仕組みを模索している」とする。
鳥取県琴浦町は「ことうら未来カフェ」で、将来の町の姿を住民同士が話し合う。長崎県五島市は、市民と高校生に交通や農業、病院などの課題などを聞くアンケートを実施。同市は「雇用の場の確保や担い手不足対策を求める意見が多く骨子案に反映する」とする。
形式的でなく 地方自治総合研究所の今井照主任研究員の話
5年前も、建前はさまざまな業界の人を集めて策定するように言われたが、実際は期間も短く、形式的な策定が主だった。地方創生は、人口増という数字達成を目的にしてはいけない。地方再生に向けて地域にとって何が必要なのかを話し合い、住民目線で主体的な形にする必要がある。
<ことば> 地方版総合戦略
「まち」「ひと」「しごと」を柱に、目標を掲げて策定する自治体の将来計画。15年度から始まり、今後5年の政策目標や施策の基本方向を盛り込む。現在、各自治体が第1期(15~19年度)の検証と併せ、次期5年間を見据えた同戦略の策定を進めている。国のまち・ひと・しごと総合戦略は年内に決定する。
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2019年12月01日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 冬まで高品質桃 10品種で長期リレー 労力分散贈答品に
JA岡山西吉備路もも出荷組合は、10品種の桃をリレー形式で長期間出荷し、ブランドを築いている。6月中旬から12月上旬までの長期出荷は全国的に珍しい。中元や歳暮の贈答需要に対応した所得安定や、労力分散を図っている。現在は、高糖度で日持ちが良いJA独自ブランド「冬桃がたり」を出荷。シーズン最後に高品質桃を出荷し、消費を取り込み、来季の販売につなげる。
同組合は、6月中旬の極早生品種「はなよめ」を皮切りに、12月上旬まで「冬桃がたり」を出荷する。
近年、力を入れているのが、シーズン終盤の「冬桃がたり」の生産、販売だ。極晩生種で、1玉約250グラム、平均糖度は15以上。品質や日持ちの良さから、歳暮やクリスマスの贈答需要が強い。卸売価格は、夏に出荷する主力「清水白桃」の2倍以上。今季は11月20日から出荷を始め、12月10日ごろまでを計画する。
「冬桃がたり」は2011年に栽培を始め、組合員94人のうち今は35人が1ヘクタールで生産している。生産量は増え、19年産は前年比4割増の3・5トン、販売額は5割増の1000万円を計画する。
栽培管理は4~11月まで8カ月を要する。一般的な剪定(せんてい)は夏と冬の2回だが、「冬桃がたり」は、夏も果実が樹上にあるため、冬の1回で作業を終わらせる必要がある。剪定場所の判断が重要で、組合内で研究を重ねている。収穫から出荷までは、室温7度に設定したJAの予冷庫で貯蔵。温度変化を抑え、品質を保持する。
1ヘクタールで10品種を栽培する組合長の板敷隆史さん(46)は「労力が分散され、安定収入につながる。増産して需要に応えたい」と意気込む。
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2019年12月06日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 豪雨被災から1年5カ月 営農再開へ一歩 果樹産地の総社市
2018年7月の西日本豪雨でブドウ園などの農地や農業用施設に甚大な被害を受けた果樹産地・JA岡山西管内の岡山県総社市福谷地区。6日で1年5カ月となる中、営農再開の動きが始まった。県と市の連携で氾濫した高梁川の堤防を整備し、浸水被害を受けた約3ヘクタールの園地をかさ上げする。100年続く農業に向け、地域の話し合いが進み、近く工事が始まる。JAは営農や融資相談で復興を後押しする。異常気象のリスクが高まる中、災害に強い地域農業のモデルとして注目が集まる。(鈴木薫子)
次代に継に向け 堤防整備、園地かさ上げ
同地区は県内有数のブドウの早期加温栽培産地。しかし、園地には、ビニールが剥がれ、骨組みがあらわのハウスや、川から流れてきた大きな岩が目立つ。堤防の決壊で農地の浸水や施設が倒壊。今も園地は豪雨被害発生時のままだ。
県は同地区で約2キロにわたる高梁川の堤防整備に乗り出した。道路から1、2メートル上げる計画で下流側から用地取得を進めている。同地区の他、高梁川に隣接する4地区で計約5キロの堤防を整備。近く工事に着手し、22年度内の完了を目指す。
園地整備は同市が担当する。堤防から下の園地を3、4メートルかさ上げし、堤防と同じ高さにする方針。整備範囲は上流約600メートルで園地は約3ヘクタール。河川などの残土で埋め立て、栽培用に上層60センチはきれいな土で埋め立てを計画する。復旧には、JA担当者も営農再開に向け密に情報交換をする。
ブドウや桃の生産者22人でつくる福谷果樹組合は、被災した18年産売上高は前年産比2割減の6500万円。19年産は上向いたが、被災前水準には達していない。
ブドウ「マスカット・オブ・アレキサンドリア」などを栽培する同組合の温室ブドウ部会の仮谷昌典部会長は、経営面積の半分の10アールでハウス3棟が倒壊。被害を免れたハウスとの距離は30メートル。半分の土地で収益を高めようと栽培に励む。54歳の仮谷部会長は「80代まで農業を続けたい。今が踏ん張り時。復旧に時間がかかるのは覚悟の上で、次世代のために災害に強い農業を復活させたい」と強調する。
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2019年12月03日

日米協定“拙速”承認 来年1月1日発効へ 参院
日米貿易協定は4日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、承認された。来年1月1日に発効する見通し。牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税を削減。生産額の減少は過去の大型協定に匹敵する。昨年末に発効したTPP、今年2月に発効した欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に続き大型協定の発効が迫り、日本農業はかつてない自由化に足を踏み入れる。
同協定を巡る交渉は4月に開始。9月に最終合意し、10月に署名した。合意内容の公表から協定の国会審議までは1カ月足らず。TPPなど過去の大型協定と比べても異例の短さで、情報開示や国民的な議論の不十分さが目立った。
同日の採決では、自民、公明両党と日本維新の会などが賛成。立憲民主党、国民民主党などの共同会派や共産党は反対した。
政府は今後、関連する政令改正などの国内手続きを終え、米国に通知する。米国側は国内法の特例に基づき議会審議を省く方針。両国の合意で発効日を決められ、米国の要望に応じて1月1日の発効となる見通しだ。
発効後、日米は追加交渉に向けた予備協議に入り、4カ月以内に交渉分野を決める。政府は関税交渉について「自動車・自動車部品を想定しており、農産品を含めてそれ以外は想定していない」(茂木敏充外相)としているが、具体的な交渉範囲は協議次第だ。
協定では、牛肉は関税率を最終的に9%まで削減する。セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)を設定した一方、発動した場合、発動基準をさらに高くする協議に入る。TPPのSGと併存し、低関税で輸入できる量がTPPを超えるため、政府は加盟国との修正協議に乗り出す。
今後、追加交渉での農産品の扱いやSGの発動基準数量の引き上げの動向などが焦点になる。
日本の攻めの分野の自動車・同部品の関税撤廃は継続協議となった。
政府の影響試算では、農林水産物の生産額は、米国抜きのTPP11の影響も踏まえると最大2000億円減る。国会審議で野党は、日欧EPAなど発効済みの他の貿易協定も含めたより精緻な試算を求めたが、政府・与党は応じなかった。
政府・与党は現在、中長期的な農政の指針となる食料・農業・農村基本計画の見直しの議論を進めている。一連の大型協定による農産品の自由化にどう対応するか具体策が問われている。
国内対策 農家規模問わず
政府は4日、日米貿易協定に伴い、国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」改定案を自民、公明両党に示し、了承された。農業分野では、中山間地を含めた生産基盤強化の必要性を強調し、「規模の大小を問わず、意欲的な農林漁業者」を支援する方針を明記。新たに肉用牛や酪農の増頭・増産対策などを盛り込んだ。政府は5日に正式決定し、2019年度補正予算に農林水産業の対策費として3250億円程度を計上する。
改定案では、国内外の需要に応え、国内生産を拡充するため農林水産業の生産基盤を強化する必要性を指摘。畜産クラスター事業による中小・家族経営支援の拡充や、条件不利地域も含めたスマート農業の活用も盛り込んだ。規模要件の緩和や優先採択枠の設置で対応する。
自民党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(本部長=森山裕国対委員長)などの会合で、西村康稔経済再生担当相は「(農業の)国内生産を確実に拡大するため、中山間地域も含めた生産基盤を強化していく」と述べた。森山本部長は会合後、「(家族経営を)政策の横に置くのではなく、中心に据えてやっていくことが大事だ」と記者団に語った。
改定案には輸出向けの施設整備、堆肥活用による全国的な土づくりの展開、家畜排せつ物の処理円滑化対策、日本で開発した農産物の新品種や和牛遺伝資源の海外流出対策なども盛り込んだ。
農林水産分野の対策の財源について、既存の農林水産予算に支障のないよう「政府全体で責任を持って」確保する方針は改定案でも維持した。
TPPの牛肉SGの発動基準見直しを巡っては、「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況などを見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行っていく」との記述にとどめた。
日米協定国会承認 期限ありき審議不足 再協議規定 農業扱い不透明
日米貿易協定は、踏み込んだ議論には至らないまま、国会審議が終結した。来年1月1日発効を目指す政府・与党は、野党側の資料請求にも応じず、議論がかみ合わないまま審議が進展。野党も最終的には4日の参院本会議での採決に応じたため、農産品の再協議の可能性をはじめとした懸念を掘り下げることなく、協定は承認された。衆参両院の委員会審議は22時間余り。過去の経済連携協定を大きく下回る。
参院本会議では、これまでの委員会審議と同様に、農産品について、米国が「特恵的な待遇を追求する」と明記した再協議規定への懸念が続出。採決の最終盤となっても不明瞭な部分が残っている実態が改めて浮き彫りになった。
国民民主党の羽田雄一郎氏が再協議規定について「米国の強い意志を感じる」と指摘。大統領再選を目指すトランプ氏の強硬姿勢を警戒した。
協定に賛成した日本維新の会の浅田均氏も「米国がさらに強気の姿勢で交渉に臨んでくるのは不可避。積み残しになった自動車・同部品の関税撤廃の確定も含め、交渉は一筋縄ではいかない」と警鐘を鳴らした。
ただ、野党側は採決を容認。会議場内では「反対」などの声が出たが、賛否の投票作業は淡々と進んだ。
衆参両院を通じて、審議不足は否めない結果となった。衆院では、自動車の追加関税の回避の根拠となる議事録など示さない政府・与党に対し、主要野党が反発して退席。与党側が審議時間の消化を優先。質問者不在のまま割当時間を消化する「空回し」を含めても、審議時間は22時間余りにとどまる。
一方、環太平洋連携協定(TPP)は2016年、衆参両院に特別委員会を設けて計130時間以上審議。日米協定の審議時間は短さが際立つ。
さらに衆院では、協定の審議が「桜を見る会」の説明責任を巡る与野党の駆け引き材料になった部分も多い。野党内からも「政争の具にせず、審議の充実を追求していくべきだった」(幹部)と審議運営を批判する声が出ている。
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2019年12月05日
日米協定参院委可決 牛肉SG、追加交渉分野 懸念拭えぬまま
日米貿易協定の承認案を巡る参院外交防衛委員会の審議が3日、終了したが牛肉セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の発動基準数量の引き上げや、追加交渉での農産品の扱いなど、同協定が抱える多くの懸念事項は払拭(ふっしょく)されなかった。野党側が追及するも政府側は従来の答弁に終始。国会での議論は消化不良のまま、協定の発効へ最終局面に入る。
農産品で議論になったのは、SGの発動基準の見直しだ。協定の補足文書では、発動した場合、基準を一層高いものに調整する協議に入ることを明記。初年度の基準が2018年度の輸入実績よりも低くSGが発動しやすい半面、協議による基準引き上げの動向が焦点になっている。
立憲民主、国民民主など野党でつくる共同会派の舟山康江氏は「(日本側が)相当不利な書きぶりだ」、共産党の井上哲士氏も「極めて特例的な規定だ」と批判。協定発効後はSGが発動しても税率は発効前の38・5%にしか上がらないことを踏まえ、輸入抑制効果を疑問視した。
茂木敏充外相は、SGの発動について、輸入業者が発動基準をにらんで年度末に輸入量を調整すると見通し、「毎年そういう(発動する)ことが起きるとは想定していない」との認識を示した。内閣官房の渋谷和久政策調整統括官は「協議することは同意したが、先は予断していない」と従来の答弁を繰り返した。
日米が発効後4カ月以内に予備協議し、追加交渉の分野を決めるという規定も論点になった。政府は交渉でまとまらなかった自動車・同部品の関税撤廃期間を追加交渉で扱うと説明してきた。
舟山氏は「自動車の関税撤廃を獲得する時は、何も譲らないと約束すべきだ」とし、農産品などの一層の市場開放をしないよう強く求めた。
渋谷氏は「協定を誠実に履行することが米国にとって望ましい」と協定の基本的な在り方を述べるにとどまり、具体的な対象分野への言及は避けた。
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2019年12月04日
農政の新着記事

日米協定 規模問わず支援明記 畜産増頭強化も 政策大綱改定
政府は5日、環太平洋連携協定(TPP)等総合対策本部(本部長=安倍晋三首相)を開き、日米貿易協定の国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」を改定した。中小・家族経営や条件不利地も含め、規模の大小を問わずに意欲的な農家を支援する方針を明記。畜産の増頭支援やスマート農業の推進を重視した。来年1月1日にも日米協定の発効を控える中、長期的な生産基盤の強化につなげられるかが課題になる。
2019年度補正予算の農林水産対策費として反映する。安倍首相は「なお残る国民の不安を払拭(ふっしょく)する必要がある。国内産業の競争力強化に加えて、農林水産業の生産基盤強化に努める」と強調した。
江藤拓農相は同日、農水省の対策本部で「必要な補正予算の確保を含め、しっかりと対応を議論し、これからの食料・農業・農村基本計画の議論にも反映していきたい」との考えを示した。
来年1月1日に発効する見通しとなった日米貿易協定やTPPでは、特に畜産・酪農への長期的な影響が懸念される。
大綱では基盤強化策として「肉用牛・酪農経営の増頭・増産を図る生産基盤の強化」を掲げた。畜産クラスター事業での中小・家族経営向け支援を拡充する。堆肥の活用による全国的な土づくりの展開も打ち出した。
スマート農業の活用、輸出拡大の環境整備などにも力点を置く。一連の財源確保は「既存の農林水産予算に支障を来さないよう、政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する」との方針を維持した。
牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)では、TPPの発動基準数量が米国離脱後も見直されず、日米貿易協定のSGと併存するため、基準数量の調整が課題。大綱では「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況を見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行う」とした。
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2019年12月06日

中小規模に配慮を 畜酪対策で決議 衆参農水委
衆参農林水産委員会は5日、畜産・酪農対策を中心に一般質疑をした。対策取りまとめに向けて、関連補給金は中小規模や家族経営の意欲喚起も考慮して決定することなどを政府に求める決議を全会一致で採択した。江藤拓農相は、関連対策の畜産クラスター事業の要件緩和に前向きな考えを示した。豚コレラ(CSF)の殺処分に伴う手当金の非課税化については、過去の事例を踏まえて議員立法を提起した。
決議では加工原料乳生産者補給金・集送乳調整金の単価や総交付対象数量、肉用子牛生産者補給金の保証基準価格は、中小・家族経営を含む酪農家の意欲喚起を考慮して決定するよう要望。畜産クラスター事業などは、中小・家族経営にも配慮しつつ、地域一体の機械導入などを強力に支援するよう求めた。
畜産クラスター事業の規模拡大要件について、江藤農相は中小規模、家族経営にとって「大きなハードル。重要な政策課題だ」と指摘。地理条件などで規模拡大が難しい農家らへの支援を検討する方針を示した。
加工原料乳生産者補給金の単価決定に向け、江藤農相は環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)、日米貿易協定を踏まえ、「農家の不安に寄り添わなくてはならない」と強調。「財務(省)と、しっかり交渉をやらせていただく」と単価水準確保に力を入れる考えを示した。共産党の紙智子氏への答弁。
豚コレラ発生農家には家畜伝染病予防法(家伝法)に基づき、全頭殺処分を求め、殺処分した豚の評価額と同等の手当金を支払う。ただ手当金は所得税の対象。経営再開の財源確保のため、非課税化を求める声は多い。
口蹄(こうてい)疫の発生時は、議員立法による措置で非課税となった。江藤農相は、現在の法的状況下で非課税にするのは不可能としつつ、「もう一回議員立法でやっていただければ法的には可能」と述べ、与野党議員に検討を提起した。国民民主党の関健一郎氏への答弁。
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2019年12月06日

日米協定“拙速”承認 来年1月1日発効へ 参院
日米貿易協定は4日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、承認された。来年1月1日に発効する見通し。牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税を削減。生産額の減少は過去の大型協定に匹敵する。昨年末に発効したTPP、今年2月に発効した欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に続き大型協定の発効が迫り、日本農業はかつてない自由化に足を踏み入れる。
同協定を巡る交渉は4月に開始。9月に最終合意し、10月に署名した。合意内容の公表から協定の国会審議までは1カ月足らず。TPPなど過去の大型協定と比べても異例の短さで、情報開示や国民的な議論の不十分さが目立った。
同日の採決では、自民、公明両党と日本維新の会などが賛成。立憲民主党、国民民主党などの共同会派や共産党は反対した。
政府は今後、関連する政令改正などの国内手続きを終え、米国に通知する。米国側は国内法の特例に基づき議会審議を省く方針。両国の合意で発効日を決められ、米国の要望に応じて1月1日の発効となる見通しだ。
発効後、日米は追加交渉に向けた予備協議に入り、4カ月以内に交渉分野を決める。政府は関税交渉について「自動車・自動車部品を想定しており、農産品を含めてそれ以外は想定していない」(茂木敏充外相)としているが、具体的な交渉範囲は協議次第だ。
協定では、牛肉は関税率を最終的に9%まで削減する。セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)を設定した一方、発動した場合、発動基準をさらに高くする協議に入る。TPPのSGと併存し、低関税で輸入できる量がTPPを超えるため、政府は加盟国との修正協議に乗り出す。
今後、追加交渉での農産品の扱いやSGの発動基準数量の引き上げの動向などが焦点になる。
日本の攻めの分野の自動車・同部品の関税撤廃は継続協議となった。
政府の影響試算では、農林水産物の生産額は、米国抜きのTPP11の影響も踏まえると最大2000億円減る。国会審議で野党は、日欧EPAなど発効済みの他の貿易協定も含めたより精緻な試算を求めたが、政府・与党は応じなかった。
政府・与党は現在、中長期的な農政の指針となる食料・農業・農村基本計画の見直しの議論を進めている。一連の大型協定による農産品の自由化にどう対応するか具体策が問われている。
国内対策 農家規模問わず
政府は4日、日米貿易協定に伴い、国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」改定案を自民、公明両党に示し、了承された。農業分野では、中山間地を含めた生産基盤強化の必要性を強調し、「規模の大小を問わず、意欲的な農林漁業者」を支援する方針を明記。新たに肉用牛や酪農の増頭・増産対策などを盛り込んだ。政府は5日に正式決定し、2019年度補正予算に農林水産業の対策費として3250億円程度を計上する。
改定案では、国内外の需要に応え、国内生産を拡充するため農林水産業の生産基盤を強化する必要性を指摘。畜産クラスター事業による中小・家族経営支援の拡充や、条件不利地域も含めたスマート農業の活用も盛り込んだ。規模要件の緩和や優先採択枠の設置で対応する。
自民党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(本部長=森山裕国対委員長)などの会合で、西村康稔経済再生担当相は「(農業の)国内生産を確実に拡大するため、中山間地域も含めた生産基盤を強化していく」と述べた。森山本部長は会合後、「(家族経営を)政策の横に置くのではなく、中心に据えてやっていくことが大事だ」と記者団に語った。
改定案には輸出向けの施設整備、堆肥活用による全国的な土づくりの展開、家畜排せつ物の処理円滑化対策、日本で開発した農産物の新品種や和牛遺伝資源の海外流出対策なども盛り込んだ。
農林水産分野の対策の財源について、既存の農林水産予算に支障のないよう「政府全体で責任を持って」確保する方針は改定案でも維持した。
TPPの牛肉SGの発動基準見直しを巡っては、「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況などを見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行っていく」との記述にとどめた。
日米協定国会承認 期限ありき審議不足 再協議規定 農業扱い不透明
日米貿易協定は、踏み込んだ議論には至らないまま、国会審議が終結した。来年1月1日発効を目指す政府・与党は、野党側の資料請求にも応じず、議論がかみ合わないまま審議が進展。野党も最終的には4日の参院本会議での採決に応じたため、農産品の再協議の可能性をはじめとした懸念を掘り下げることなく、協定は承認された。衆参両院の委員会審議は22時間余り。過去の経済連携協定を大きく下回る。
参院本会議では、これまでの委員会審議と同様に、農産品について、米国が「特恵的な待遇を追求する」と明記した再協議規定への懸念が続出。採決の最終盤となっても不明瞭な部分が残っている実態が改めて浮き彫りになった。
国民民主党の羽田雄一郎氏が再協議規定について「米国の強い意志を感じる」と指摘。大統領再選を目指すトランプ氏の強硬姿勢を警戒した。
協定に賛成した日本維新の会の浅田均氏も「米国がさらに強気の姿勢で交渉に臨んでくるのは不可避。積み残しになった自動車・同部品の関税撤廃の確定も含め、交渉は一筋縄ではいかない」と警鐘を鳴らした。
ただ、野党側は採決を容認。会議場内では「反対」などの声が出たが、賛否の投票作業は淡々と進んだ。
衆参両院を通じて、審議不足は否めない結果となった。衆院では、自動車の追加関税の回避の根拠となる議事録など示さない政府・与党に対し、主要野党が反発して退席。与党側が審議時間の消化を優先。質問者不在のまま割当時間を消化する「空回し」を含めても、審議時間は22時間余りにとどまる。
一方、環太平洋連携協定(TPP)は2016年、衆参両院に特別委員会を設けて計130時間以上審議。日米協定の審議時間は短さが際立つ。
さらに衆院では、協定の審議が「桜を見る会」の説明責任を巡る与野党の駆け引き材料になった部分も多い。野党内からも「政争の具にせず、審議の充実を追求していくべきだった」(幹部)と審議運営を批判する声が出ている。
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2019年12月05日
畜酪対策で重点要請 家族経営支援を 全中
JA全中は4日、2020年度の畜産・酪農対策に関する重点要請事項を決めた。中小規模の家族経営を含む、多様な生産者の生産基盤の強化などが柱。ICT(情報通信技術)による労働負担の軽減などに支援を求める。……
2019年12月05日

所得向上に重点を 年内に論点まとめる 自民基本政策委
自民党の農業基本政策検討委員会(小野寺五典委員長)は4日、来年3月に改定を予定する政府の食料・農業・農村基本計画について、年内に一定の論点をまとめる方針を確認した。同委員会の顧問を務める宮腰光寛・前沖縄北方相は、農業の経営継承や農家の所得向上に重点を置くべきとする考えを示した。食料自給率目標だけにこだわらず、深刻化する農業の担い手不足などの課題に直結した内容に見直す狙いとみられる。
小野寺委員長は「年内に一定の論点をまとめ、具体的な内容について踏み込んだ政策を図っていきたい」と述べた。
宮腰氏は「今回は農家の高齢化や若い農業経営者の不足などを考えると農地を含めた経営継承が大きなテーマだ」と強調。その上で「農家の農業所得や農村での所得をどう上げていくかが基本計画の目玉になるべきではないか」と提起した。
現行計画ではカロリーベースの食料自給率目標を45%に掲げるが、直近の18年は37%と過去最低に落ち込んだ。45%達成に向けた品目別の生産努力目標も大半の品目で実現が難しい状況だ。
党内には自給率を目標にすることを疑問視する声は少なくない。米中心だった食生活が変化していることへの対応に加えて、自給率低下を招いたとの批判をかわしたい思惑も見え隠れする。
一方、農業就業者は2015年で196万人と、政府の見通しを7万人程度下回る。担い手不足を背景に農地面積も減り続け、直近の19年で439万7000ヘクタールとなり、政府の25年の確保目標440万ヘクタールを早くも下回る。
会合では「規模の大小を問わず、経営を継承している農家にはしっかり支援しないといけない」(進藤金日子氏)、「水田地域を維持するには兼業農家を含む関連人口が多くないと大規模農家が(過重負担で)苦しくなっていく」(鈴木憲和氏)などの意見が挙がった。
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2019年12月05日

日米協定 熟議程遠く 参院委可決 政府、要求応じず
参院外交防衛委員会は3日、日米貿易協定の承認案を与党などの賛成多数で可決した。4日の参院本会議で承認される見通しだ。参院の審議は計11時間余りで、より精緻な農林水産品への影響試算や、追加交渉で農業分野が対象になる可能性など、重要な論点の政府と野党のやり取りは平行線のままだった。野党の資料請求に政府・与党は引き続き応じず、議論は深まらなかった。
自民、公明両与党と日本維新の会が賛成。立憲民主、国民民主両党などの共同会派と共産党、参院会派「沖縄の風」は反対した。
日米両政府は、来年1月1日の発効を目指す。日本政府は承認後、関係政令の閣議決定など国内手続きを終え、米国に通知する。発効すれば牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税が削減される。米は除外した。
参院では、有識者らを招いた参考人質疑も実施したが、質疑時間は11時間15分にとどまった。衆参両院合計でも22時間余りで、特別委員会で130時間以上審議したTPPや、米国抜きのTPP11の際の審議時間を大きく下回る。
衆参両院の審議を通じ、野党側は、時期が未定となった自動車・同部品の関税撤廃を除いた経済効果や、TPPと、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効済みの現状を踏まえた農林水産品の影響試算などを要求した。追加関税の回避の前提となる首脳会談の議事録なども求めたものの、政府・与党は提出要求には応じなかった。
採決前の討論で、野党は「再三の提出要求にも一切応じず、国会への説明責任を放棄した」(野党共同会派の小西洋之氏)などと政府を強く批判した。
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2019年12月04日
基盤・競争力強化 輸出拡大 経済対策は13兆円 政府案あす閣議決定
政府が近くまとめる経済対策の案が3日分かった。農業関係では、日米貿易協定の国内対策として生産基盤と国際競争力の強化、輸出拡大などを柱に据える。5日に閣議決定する。財政措置は財政投融資を含め13兆円程度とする方向。2019年度補正予算案と20年度当初予算案に必要経費を計上する。日米協定の農業対策費は、19年度補正予算で3250億円程度で調整している。
政府が同日、自民党の会合で対策案を示した。農業の生産基盤強化の具体策として、産地生産基盤パワーアップ事業や和牛・酪農の増頭、スマート農業技術の開発・実証プロジェクトなどを挙げた。大規模経営への支援だけでなく「中山間地域等の条件不利地域も含め、規模の大小を問わず意欲ある農林漁業者が安心して経営に取り組めるようにする」と記した。
輸出拡大では、司令塔となる「農林水産物・食品輸出本部」を農水省に設置し、輸出に対応できる食品加工・食肉処理施設などの整備を進める。
農業の担い手不足を受け、現在40歳前後の就職氷河期世代の就農支援を打ち出す。相次ぐ自然災害で被害を受けた農林漁業者の再建、災害に強い農業水利施設やため池、農業用ハウスの整備も盛り込む。
財政措置13兆円のうち、国の一般会計からの支出分は補正予算案で4兆円超、当初予算案で1兆円台後半をそれぞれ手当てし、計6兆円程度となる見通し。さらに特別会計を活用し1兆円台半ば程度を確保する。補正予算の農林水産関係総額は、日米協定対策費を含め6000億円超を目指す。
経済対策に伴う地方負担は1兆円台半ばを超えそうだ。財政投融資は3兆円台後半とし、交通網整備などに振り向ける。民間企業の支出分などを加えた事業費の合計は25兆円を超える見通しだ。
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2019年12月04日

台風19号被災長野市を視察 参院農水委
参院農林水産委員会は3日、台風19号の浸水被害を受けた長野市の果樹園地やJAの選果施設を視察し、農家らと意見交換した。被災農家は営農再開に向け、早急な泥の除去や資金対策などの支援を求めた。
与野党議員8人が長野市穂保地区の園地やJAながの長野平フルーツセンターなどを視察した。
地元の若手農家グループが要望を伝えた。浸水被害を受けた農地は、災害復旧事業の支援対象となるが、現状では泥の撤去作業が十分進んでいない実態を説明。リンゴ農家の小滝和宏さん(36)は防除のためのスピードスプレヤー(SS)も入れないことから、「来年3月下旬の薬剤散布時期がリミット。間に合わなければ木を切ることも考えなければいけない」と危機感を示した。
県庁では阿部守一知事が、果樹園に堆積した土砂の処分場確保が難しいことから、公共工事の盛土などに活用することを要望した。
同委員長の自民党の江島潔議員は「想像以上に広範囲で大きな被害に衝撃を受けた。現場の意見や要望は、委員会でしっかり検討して、政府に返していきたい」と述べた。
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2019年12月04日

ディスカバー農山漁村の宝 個人賞に上乗さん(石川)
政府は3日、地域の資源を活用し、活性化につなげている地区を表彰する第6回「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」のグランプリに、天然ワカメ商品などを手掛ける島根県大田市の魚の屋を選んだ。今回から選定方法を一新。地域で活躍する人材を表彰するために新設した「個人賞」には、子どもが里山の自然を体験できる環境づくりなどに携わる石川県能登町の上乗(じょうのり)秀雄さん(75)を選んだ。
団体・法人向けの表彰では、所得向上や雇用創出につなげている「ビジネス」、地域活性化に貢献する「コミュニティ」の2部門を新設。両部門からグランプリを選出した。
個人賞に選ばれた上乗さんは、故郷の里山を再開発し、子ども向けの自然体験村「ケロンの小さな村」を創設。さらに耕作放棄地を活用して生産した米を米粉にしてパンやピザに加工、販売し、大人の来場にも結び付けた。年間5000人が訪れる施設を作り上げ、地域のにぎわいづくりに貢献した点が評価された。
同日、首相官邸に選定地区を招き、グランプリなどを発表した。安倍晋三首相は「人の努力や活躍があって地域や日本が元気になる。地域だけでなく人の魅力にもスポットを当てて発信したい」、江藤拓農相は「今の農政は産業政策よりも地域政策が大事という議論が盛んにされるようになってきた。一緒に頑張っていきたい」と話した。
コミュニティ、ビジネス両部門では、準グランプリも選出した。受賞者は次の通り。
コミュニティ=北海道立遠別農業高校(北海道遠別町)▽上山市温泉クアオルト協議会(山形県上山市)
ビジネス=山上木工(北海道津別町)▽杉本製茶(静岡県島田市)
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2019年12月04日
日米協定参院委可決 牛肉SG、追加交渉分野 懸念拭えぬまま
日米貿易協定の承認案を巡る参院外交防衛委員会の審議が3日、終了したが牛肉セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の発動基準数量の引き上げや、追加交渉での農産品の扱いなど、同協定が抱える多くの懸念事項は払拭(ふっしょく)されなかった。野党側が追及するも政府側は従来の答弁に終始。国会での議論は消化不良のまま、協定の発効へ最終局面に入る。
農産品で議論になったのは、SGの発動基準の見直しだ。協定の補足文書では、発動した場合、基準を一層高いものに調整する協議に入ることを明記。初年度の基準が2018年度の輸入実績よりも低くSGが発動しやすい半面、協議による基準引き上げの動向が焦点になっている。
立憲民主、国民民主など野党でつくる共同会派の舟山康江氏は「(日本側が)相当不利な書きぶりだ」、共産党の井上哲士氏も「極めて特例的な規定だ」と批判。協定発効後はSGが発動しても税率は発効前の38・5%にしか上がらないことを踏まえ、輸入抑制効果を疑問視した。
茂木敏充外相は、SGの発動について、輸入業者が発動基準をにらんで年度末に輸入量を調整すると見通し、「毎年そういう(発動する)ことが起きるとは想定していない」との認識を示した。内閣官房の渋谷和久政策調整統括官は「協議することは同意したが、先は予断していない」と従来の答弁を繰り返した。
日米が発効後4カ月以内に予備協議し、追加交渉の分野を決めるという規定も論点になった。政府は交渉でまとまらなかった自動車・同部品の関税撤廃期間を追加交渉で扱うと説明してきた。
舟山氏は「自動車の関税撤廃を獲得する時は、何も譲らないと約束すべきだ」とし、農産品などの一層の市場開放をしないよう強く求めた。
渋谷氏は「協定を誠実に履行することが米国にとって望ましい」と協定の基本的な在り方を述べるにとどまり、具体的な対象分野への言及は避けた。
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2019年12月04日