阿部祐二さん(レポーター・俳優) 米こそが最高のごちそう

阿部祐二さん

 おやじが、山形県酒田の出身なんですよ。庄内と呼ばれる地域ですよね。小さい頃は、夏になるたびおやじと一緒に行きました。

 夏の酒田では、おいしい岩ガキが捕れるんです。おやじの友達の船で沖合に出て、その方が潜ってカキを捕ってくれました。船の上でトンカチを使って割って、海水の塩味だけで食べるんです。本当においしかった。

 これが僕のカキについての原体験。最高においしい食べ方をしたわけです。以後、半世紀以上にわたってカキを食べ続けていることになります。
 

必ず食べるカキ


 仕事や旅行で産地に行くと、必ず食べるようにしています。カキは生息地による味の違いを楽しむのも面白いですね。

 2001年のアメリカ同時多発テロの時に、ニューヨークに取材に行きました。もちろんしっかりと仕事をしましたが、どんな仕事先であっても、その土地の料理を楽しむ。それが僕の考え。

 ニューヨーク市内はもちろんテロで大変な混乱でしたが、北部の方では通常通りレストランがやっていたので、オイスターバーに入ってカキをいただきました。そんな大変な時でも食べたんです。

 各地で食べましたが、僕はミルキーでないあっさりとした味のものが好きですね。これはおそらく、子どもの時に食べた酒田のカキの影響なんだと思います。

 同じことは、米についてもいえます。出張先、旅行先では、その土地の「自慢の米」をいただきます。おいしいご飯って、見ただけで分かりますよ。一粒一粒の躍動感が違いますから。

 ご飯さえおいしければ、おかずはなんでもいい。米こそが最高のごちそうですから。納豆とみそ汁があれば十分です。僕はたまたま庄内米で育ったので、一番好きなのは庄内米。カキと同じで、譲れないところです。これに納豆さえあれば、最高の朝食です。
 

素材を生かして


 納豆はね、大粒の方が好きです。大豆を食べている実感が湧きますから。そういえば、納豆にネギとか卵とかを入れてかき混ぜる人がいるでしょう。邪道です。余計なものは一切入れず、しょうゆだけでいい。本当においしい納豆なら、それが一番。余計なものを入れると、納豆の味がぶれてしまいます。

 カキでもそうです。せいぜいが鍋に入れるかフライにする程度。それ以上に凝った料理を作るのは、邪道! カキの本質的なうま味を台無しにします。

 この時期においしい焼き芋にしても、バターを付けて食べる人がいるじゃないですか。これにも賛成できません。サツマイモが持っている自然の甘味を、台無しにする気がします。

 僕は普段、お昼は麺類を食べることが多いけど、ラーメン屋にしてもそば屋にしても、小細工をする店は大嫌い。酒田のラーメンってご存じですか? 魚介系のしょうゆ味なんです。余計なことは何もせず、麺とスープを生かしている。これがいいんです。そば屋に行ったら、かけそばと盛りそば。両方食べます。具材なんか要りません。そばそのものと、だしやつけ汁のうまさで勝負する店。それこそが最高のそば屋だと思います。

 日本にはとてもおいしい食材がたくさんあります。そのうまさを生かさずに、変にいじる傾向を憂いています。何度もいいますが、そんなものは邪道。せっかくおいしい食材を作ってくれた方々にも、失礼だと思います。(聞き手・菊地武顕)

 あべ・ゆうじ 1958年、東京都生まれ。早稲田大学在学中からモデル、俳優業をしていた。94年の「ビッグモーニング」からリポーターの仕事を手掛ける。堪能な英語力を生かして、海外での取材も多い。ドラマで本人役を務めることもしばしば。現在は「スッキリ」レギュラー。京都美術工芸大学客員教授も務める。
 

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