先日、半年ぶりに酒を飲んだ

 先日、半年ぶりに酒を飲んだ。体調を崩して医者に止められていたが、解けた。晩酌を欠かさなかった筆者に、ほどほどにとの条件付きで▼宮城の銘酒「浦霞」を選んだ。20年ほど前、子の誕生祝いに妻の勤め先の上司に頂いた酒である。その夜は子の寝顔を見ながらコップで一升瓶を半分ほど空けた。今回は詩人の堀口大学に倣い昼から飲み食いをやめた。随筆「酒」にある。「(日本酒を)うまく飲むには、きびしい摂生が必要だ(略)午後からは、お茶ものまなければ、菓子も食わない。すべて晡時(ひぐれどき)の空腹を完全なものにするためだ」▼夜が来た。ぐい飲みを用意した。病気がちだった子の薬を、飲みやすいようにシロップに溶かすのに使った代物である。それでもスポイトで口に注ぐと度々吐き出された。浦霞を口に含むと米の香りが鼻の奥に広がった。それを飲み込む。冷やなのに、熱いものが喉から食道を通って胃に入っていくのが分かった▼作家の高橋和巳は病床での思いをこうつづった。一升瓶が近くにありながら「それを飲むことが禁止されているという悲哀のかたちがあることに気づかねばならなかった」(随筆「酒と雪と病」)▼味わうのは酒でいい。悲哀はもうご免である。家族に心配を掛けるのも。そう思い2合にとどめた。
 

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