酪農規模拡大に壁 増頭でふん尿処理負担 北海道

十勝清水バイオマスエネルギーが新設したバイオガスプラントの発酵槽(北海道清水町で)

バイオガス発電利用は限定的 対策充実求める声


 酪農の大規模化が進む北海道で、ふん尿処理が課題となっている。飼養頭数の増加に伴い、処理費用が高まるなど農家負担が増している。対策として、ふん尿を処理し売電するバイオガスプラントがあるが、利用は限定的だ。生産拡大に水を差しかねない問題だけに、産地は対策の充実を求めている。

 「頭数が増えるにつれ、ふん尿処理の負担が大きくなっている」。酪農が盛んな釧路市の酪農家、河内利明さん(68)は強調する。昨年、80頭の乳牛数を120頭に増やした。ふん尿は堆肥処理をしているが、増頭で経費が増した。堆肥は牧草地などに還元するが、「空港に近い立地で臭いの苦情がある」と頭を悩ます。

 道内の酪農家1戸当たりの乳牛の飼養頭数は、2019年に134頭と10年に比べ25%増えた。道は「道内全域で、(ふん尿処理の経費や労力など)農家の負担は増えている」。JA北海道中央会は「ふん尿処理がネックで投資を断念する生産者もいる」と指摘する。

 規模拡大で普及が進むフリーストール牛舎が処理を難しくしている。経産牛100頭以上を育てる場合に適するが、牛が自由に動き回り排せつするため、ふんと尿を分離する装置の設置が難しく、液状化しやすい。液状になると堆肥化しにくい。

 ふん尿と混ぜて固形化する敷料のおがくずなどの価格高騰も課題だ。液状のふん尿は牧草地などに還元するが、北海道は散布時期が限られ散布し過ぎると牧草やサイレージの品質に影響する。

 対策としてJAグループ北海道は、酪農肉用牛近代化方針と同時に見直しが進む「家畜排せつ物の利用の促進を図るための基本方針」に対策の反映を求めている。同方針に、ふん尿の性状ごとの処理を盛り込むなど対策の充実を訴える。

 産地は、対策としてバイオガスプラントの建設に乗り出している。同プラントは、ふん尿を発酵させて発電でき、大量処理できる。

 釧路市では2月、JA阿寒がプラントを建設した。18戸の酪農家から発生するふん尿を処理する。電気は堆肥センターの電源の他、地元農家の畜舎やバナナ栽培の暖房などに使う。

 清水町の酪農家やJA十勝清水町が出資する十勝清水バイオマスエネルギーは19年8月、国内最大級のプラントを建設した。北海道電力に売電する。2000頭規模のふん尿に対応。発生する固形物は牛舎などの再生敷料、液体は牧草地などに液肥として散布する。

 注目が集まるバイオガスプラントだが、課題もある。同プラントで収入を得るには、固定価格買い取り制度(FIT)の売電が重要。ただ、導入しようとしても北海道電力への送電網の容量不足で活用できない事例もある。JA阿寒のプラントもFITを検討したが、送電容量の問題で断念した。プラントの普及には、さまざまな課題解決が求められる。
 

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