佐賀県豪雨で油流出被害農家 営農再開も 経済負担大

営農再開を前に福田さんは経済的負担が課題になっている(佐賀県大町町で)

 2019年8月28日の豪雨で、鉄工所からの油の流出被害を受けた佐賀県大町町では、JAや行政の支援を受け、被災農家の多くが6月の田植えから営農再開を予定する。担い手は、離農・規模縮小する農家の農地も引き受ける意向だが、壊れた農機の買い替え費用が重荷となる。例年なら作れたはずの裏作麦の収入も無い。地域農業の復興に、経済的な負担がのしかかっている。(木村隼人)
 

農機買い替え 裏作の収入無し


 何も植わっていない、大町町の7ヘクタールの農地。本来なら裏作の麦が育っているはずだった。農家の福田英則さん(66)は昨年11月に麦の種をまく予定だったが、油の処理が間に合わず見送るしかなかった。小麦約19トン、大麦約17トン分(前年実績)の収入が消えた。種まき前だったため農業共済の対象にならず、減収を埋める補償は無い。

 油や水に漬かって壊れた農機を、もう一度そろえる費用も重荷になっている。国や県、町が金額の6割を、油の流出元である鉄工所が一部を負担する。それでも福田さんの自己負担額は約1500万円近くに及ぶ。「補償や交付金が無かったら離農しようと思っていた」と福田さん。周辺の農家には、被災前に買った農機のローンもあるため、二重負担が発生している人もいるという。

 JAさが杵島支所によると、油流出で被災した農家は18戸。2戸が規模を縮小する意向だ。福田さんのように麦を計画していた農家は9戸。このうち1戸が麦の減収の影響で離農する。

 逆境をはねのけ、営農継続の覚悟を決めた被災農家は、5月の大型連休明けからの田植えを目指して動き始めている。スムーズに復興するため、農地を利用しやすい区画に整備した。福田さんは、離農する農家から農地2ヘクタールを引き継ぎ、規模を広げる。6月の田植えを予定し、2月上旬に石灰をまいた。流れ出た油の分解を進める作用がある。

 JAも支援に乗り出す。自衛隊やボランティアによる油撤去の作業であぜ道が崩れた場所がある。効率的に直すため、JAはトラクターを貸し出す体制を整えた。

 営農を再開する上で気がかりになっているのが、風評被害だ。県は昨年9月下旬~10月に油被害のあった約43ヘクタールの土壌を調査。11月中旬に被災農地の9割以上に当たる42・5ヘクタールは「作物の生育に問題はない」との見解を示した。生育に影響があるとされる土壌1キロ当たり230ミリグラムの基準値を下回っていた。

 基準値を超えた33アールも年末から1月にかけて 再調査を実施。「結果を基に町主導で土壌入れ替えを進める方針」(県農産課)となっている。JAの担当者は 「県の土壌分析で安全を証明している。通常通りの出荷体制を進めていく」と話す。

 県のまとめによると、19年8月27日から発生した豪雨の県内被害額は2月25日時点で、農畜産物が13億5139万円、農業施設・機械が19億5396万円(1002件)、農地は35億4699万円(1381カ所)だった。

 油流出の被害を受けた農家は収入保険に未加入だった。

 杵島地区農業共済組合は「今回のケースでも、収入保険に加入していれば、作付けできなかった減収分も補償の対象になる」と話す。

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