新年度が始まった

 新年度が始まった。この時期はあいさつの機会も増え、どんなことをしゃべればいいのか思い悩むことも多い▼参考になるのが落語。はなしは導入の枕、本題、オチの3部構成が多い。前文と結びがいいと締まった文章になるように、枕とオチがうまくいけばまとまって聞こえる。語りの上手な人に共通するのは始めと終わりのうまさである▼立川談志の「芝浜」に学ぶ。大金入りの財布を拾って酒が飲めると有頂天ななまけ者の魚屋が、眠りから覚めて女房に「あれは夢だ」とだまされ働き者に改心する。生活に余裕ができた大みそか。真相を打ち明ける女房が謝りながら酒を勧めても、固辞する。そのオチがいい。「また夢になるといけねえ」▼元首相の吉田茂は機転が利いた。選挙運動中にコートを着たまま演説をして「外套(がいとう)をとれ!」とやじられた。その返しが心憎い。「外套を着てやるから、街頭演説です」。晩年に「お顔の色が大変いいようですが、何を召し上がっていらっしゃるのですか」と問われ、「人を食ってます」。立川談慶さんの近著『教養としての落語』(サンマーク出版)にある▼新型コロナパニックで寄席に行こうとすると家人がたしなめる。「よせ!」。こんなオチでは人前でしゃべるのはまだまだ。おあとがよろしいようで。
 

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