100年前の教訓 感染「第2波」に備えよ

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言は全面解除されたが、「第2波」への一層の警戒が必要だ。「スペイン風邪」で世界を恐怖に陥れた100年前のパンデミック(世界的大流行)の教訓をいま一度再考し、臨戦態勢を強めるべきだ。

 日本はひとまず、感染爆発を避けることができた。確認された日本の死者数は約900人で、米国の10万人強を筆頭に数万人の欧米各国に比べ大幅に少ない。安倍晋三首相は、先日の全面解除の会見で「日本モデルの力を示した」と胸を張った。

 日本の対応に関連し、英ガーディアン紙は「大惨事目前の状況から成功物語へ」との見出しで、マスク着用、手洗い励行など日本人の生活習慣が感染拡大を防いだとの見方を伝えた。

 だが、今は「第1波」を何とか乗り切ったというのが実態ではないか。ここで気を緩めては元も子もない。警戒を怠れば、あっという間に感染拡大を引き起こす懸念がある。既に北九州市で憂慮すべき事態が起きている。5月28日に21人、29日に26人の新規感染が確認され、北橋健治市長は「第2波の真っただ中にいる」と危機感を表明。厚生労働省のクラスター(感染者集団)対策班が感染経路の調査をしている。こうした事例は全国どこでも起こり得る。

 医療体制が不十分なブラジルなど南米やアフリカ諸国で新型コロナの感染拡大が止まらない。抑え込みにいったん成功した韓国は、感染者が再び増加ペースを高める可能性はあるとして、5月29日からソウルを含む首都圏で外出自粛を要請した。日本でも感染者が相次ぐ東京都は、感染の再拡大で「東京アラート」を発し警戒態勢を強化。政府も大きな流行にしないよう全力を挙げる。

 100年前のパンデミックを振り返り、今後の対策に生かすことは有益だ。1918年から20年にかけて猛威を振るった「スペイン風邪」は、世界人口の3分の1の約6億人が感染し、数千万人が亡くなったとされる。第1次世界大戦時と重なり、感染源の米国から欧州への兵隊の大量輸送で一挙に広がった。

 日本での第1波のピークとなった18年11月には、約4万4000人が死亡した。その後収束に向かったが、1年後の冬に「第2波」が到来。100年前の最大の教訓は、油断の恐ろしさと「第2波」以降の致死率の高さだ。経済活動再開は必要だが、むしろ脅威はこれからと警戒を解かない覚悟が必要だ。致死率は「第1波」の時の10倍だったとの見方もある。さらに「第3波」と続き、日本国内で40万人以上が亡くなったとされる。

 世界では経済のグローバル化が進展し、人、モノの動きが当時より桁違いに多い。それが新型コロナの地球規模の感染拡大に結び付いた。国内の人、モノの動きも同様で、都市への人口集中も進んだ。100年前の教訓を糧に、「第2波」への備えを万全にしなければならない。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは