OIEアジア事務所 法人格取得へ 家畜防疫貢献に期待

 日本政府と国際獣疫事務局(OIE)との間で、OIEアジア太平洋地域代表事務所の特権・免除を認める協定が近く正式に締結され、発効する見通しだ。先の通常国会で協定が承認されたことを受けた。同事務所は1990年のOIE総会で設置が決まり東京都内に置かれたもので、初めて法人格を取得し、契約や文書の不可侵などの特権が与えられる。

 外務省によると、近く日本政府とOIEの間で正式に締結文書を交換するという。その後30日で協定は発効。同事務所は日本に駐在する他の国際機関事務所と、ほぼ同様の地位を得ることになる。

 OIEは口蹄疫(こうていえき)、アフリカ豚熱、狂犬病など主要な動物衛生対策を主導する。地域事務所はアジア太平洋の他、米州、中東、アフリカ、欧州の5地域にある。疾病は国境を越えて広がるため、日本などの先進国と協力し、開発途上国への技術支援を強化している。

 外務省は「協定発効によってOIEの活動を通じアジアの動物衛生の向上、わが国への疾病侵入リスク低減、世界の食料安全保障に貢献することを期待する」としている。
 

OIEアジア太平洋地域代表 釘田氏に聞く


 世界各地で家畜疾病が猛威を振るっている。設立から100年近い歴史を持つOIEは、各国政府と協力し、衛生対策の一角を担う。なぜ、家畜疾病が増えているのか、国際社会の課題は何かを、OIEアジア太平洋地域代表の釘田博文氏に聞いた。(聞き手=特別編集委員・山田優)
 
釘田氏
 
 

各国連携しリスク抑制


 ──口蹄疫、豚熱、アフリカ豚熱、鳥インフルエンザなどの家畜疾病が目白押しです。

 世界中でモノやヒトの移動が拡大し、地球温暖化や急激な森林開発による環境破壊が進んだ。今世紀に入る頃からこうした疾病の脅威が深刻になってきた印象だ。野生動物由来の病原体が家畜や人間に感染し、拡大している。新型コロナウイルスの感染拡大も同じ構造だ。

 ──豚の大敵であるアフリカ豚熱がアジア各地でまん延しています。

 アジアでは2018年の8月に中国で発生が確認され、韓国、フィリピン、ベトナムなど13の国・地域に広がった。中でも世界最大の養豚国である中国で猛威を振るった。裏庭養豚と呼ばれる零細な経営を中心に大きな被害を受け、発生前に比べ4割も飼養頭数を減らしたといわれている。

 発生国では完全に感染を抑え切れているわけではないが、最近の報告を見る限り、以前に比べ新規の発生頭数が大きく減少している。ある程度病気のコントロールはできていると見ている。日本を含めた未発生国の侵入リスクを抑え込んでいくことが重要だ。

 ──口蹄疫対策では国境措置と同時に、海外との連携に努めていますね。

 感染力が強く被害が大きい口蹄疫はアジアで過去30年以上、最優先して清浄化に取り組んできた疾病だ。南米の国々は近年、大きく改善してきたが、アジアでは十分ではない。口蹄疫侵入のリスクを下げるためには、地域全体で対策を底上げする必要がある

 日本はオーストラリアやニュージーランドと協力し、東南アジアや南アジアなどで、現地の獣医の研修など清浄化に向けた支援をしてきた。最近は中国もOIEへの財政支援を始めている。国際協力が大切だ。
 

抗菌剤使用規律が課題


 ──OIEは、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)と人獣共通のリスク対策であるワンヘルス(一つの健康)に取り組んでいます。

 人間、動物、環境が相互に関係する衛生問題に連携して取り組むことを、2010年に3国際機関の事務局長が合意した。インフルエンザ、薬剤耐性、狂犬病を優先課題に指定している。

 薬剤耐性分野では、畜産の抗菌剤使用の規律をどう強めていくのかが大きな課題となる。「慎重かつ責任ある」抗菌剤使用をアジア全体の現場に浸透させたい。
 

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