「ここだけの話」、と前置きして打ち明けられる話は、たいがい面白い

 「ここだけの話」、と前置きして打ち明けられる話は、たいがい面白い▼胸にしまっておけず、別の仲間に「お前だけだぞ」と、明かしてしまう。約束は次から次に破られ、誰もが知るところとなる。外山滋比古さんの『日本語の作法』によれば、「他言をはばかることを、ついしゃべってしまうのは、人間の業のようなもの」らしい▼ギリシャ神話にも、王がロバの耳であることを知った床屋が、言いたくてたまらなくなる話が出てくる。土に深い穴を掘って「秘密」を吐き出してすぐに土をかぶせるが、そこにアシが生えて、「王様の耳はロバの耳」と声が聞こえ始める。王は犯人を探すこともできず、秘密は広まってしまう▼「ここだけ」の思いがあったかなかったか。日本学術会議が推薦した会員候補6人を除外したことに菅義偉首相は、内閣記者会のインタビューで、会議側が作成した105人の推薦リストを「見ていない」と、言ってしまった。法律で首相が決めることになっている案件である。「詳しくは見ていなかったことを指しているのだろう」と、加藤勝信官房長官が取り繕ったが、責任逃れとも受け止められ、火に油を注ぐ羽目に▼誰が減らしたかは闇の中だが、いずれ「ここだけの話」として、伝わってくるのだろうか。

おすすめ記事

四季の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは