「秋に襲われるような寒い気分」

 「秋に襲われるような寒い気分」。文豪夏目漱石にかかると歯痛でさえ詩的な表現になる▼小説『門』の一節だ。急に歯が痛みだした主人公。触るとぐらぐらし、息をしても風が染みる。歯医者に行くと、根元が腐っていると言われ、「この宣告を淋(さび)しい秋の光のように感じた」。歯の神経を抜いて急場をしのぐのだが、いま同じ境遇にある身としては、切実な思いで読んだ▼私事で恐縮だが、ここひと月余り、歯痛に悩まされている。歯周病。歯の根元が腫れ、満足にかめない。歯の手入れを怠ってきた報いだろう。医者からもらったちらしには「命を守るための口腔(こうくう)ケア」とある。歯周病は、肺炎リスク、免疫力の低下を招く。糖尿病など持病のある人は要注意。特に新型コロナウイルスに感染すれば重症化しやすいと警告する▼認知症との関係も分かってきた。報道によると、九州大などの研究チームが、認知症の原因物質が歯周病菌で蓄積される仕組みを解明したという。口の中を健康に保つことは、認知症予防にもつながる。週刊誌が「命を削る歯周病」と過激な見出しをつけるが、あながち誇張でもない▼「病は口より入り、禍いは口より出ず」という。食べ物の入り口を大事にするのが健康の入り口。自戒を込めて歯医者通いを続ける。

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