コロナ禍で困難あらわ…訴訟も発生 介護事業人手は限界 現場奮闘も疲労ピーク

デイサービス利用者の検温を徹底する介護施設。できる限りの感染予防策を講じている(広島県三次市で)

 広島県内の介護施設で4月、新型コロナウイルスに感染した80代女性が死亡し、遺族が施設側の責任を問う訴訟を起こした。訴訟は既に和解に至っているが、コロナ禍での介護の難しさが浮き彫りになった。人手不足が恒常化する中での感染対策の徹底で、介護従事者の疲労はピークに達している。関係者からは、事業を継続するためにも、人手不足を解消するよう求める声が上がる。

 「自分の身は自分で守ろう」。広島県三次市の介護施設コージーガーデンで10月中旬、集まったデイサービス利用者に、介護福祉士が手洗いやうがいを呼び掛けた。

 送迎車に乗る前には必ず検温し、利用者の健康観察も欠かさない。施設を経営する社会福祉法人優輝福祉会の熊原保理事長は「100点満点とは言えないかもしれないが感染対策をしっかりしている。これ以上どうしたらいいのか」とこぼす。

 介護業界は人手が足りず、ぎりぎりの状態だ。訴訟問題を報道で知った熊原理事長は「人ごとではない」と不安を募らせる。コロナ禍で「県北部では、知っているだけで二つの事業所がデイサービスの中止を検討している」と明かす。

 今回の訴訟問題に限らず、介護中の事故などを巡り訴訟は全国で起きている。同法人も経験した。遺族の気持ちに寄り添った上で熊原理事長は「介護・福祉現場の本当の実情を広く知ってほしい」と切実に訴える。

 訪問や通所による介護サービスに従事する介護福祉士は、地域の高齢者が安心して暮らすためには必要な存在だ。だが、各地の介護関係者は「担い手がいなくなる恐れがある」と口をそろえる。

 県内の別の施設関係者は「介護ヘルパーは、(感染の恐れがあり)危ないという目で見られる」という。今月も、介護福祉士の制服を着ていてスーパーに入り、周りの人から避けられる経験をした。このような問題が頻繁に起きれば「訪問介護は難しくなる」と不安を抱える。

 サービス停止は利用者家族にも影響が大きい。県内に住む87歳の父母が介護施設を利用する東京都在住の50代男性は「薬の服用など訪問介護で助けてもらっている。サービスが途絶えてしまうと生活が成り立たない」と指摘する。

 両親は認知症が進み、体の不自由もある。コロナ禍の緊急事態宣言以降、男性は帰省できていないが、継続した施設側の支援に救われている。「両親のことをよく理解し、手厚いサービスで、安心して任せられる」と話す。施設側との信頼関係も大事にする。
 

報酬改定は「切実」 全国老施協


 新型コロナ禍の介護事業について、全国1万1000の養護老人ホームなどでつくる全国老人福祉施設協議会は「各事業所は緊張感を持ち、万全の対策を取っている。利用者家族や事業者の協力があってこそだ」と指摘する。ただ、「コロナの影響にかかわらず人手不足の介護業界では、経営が厳しく、事業から撤退する所もある」という。

 2021年度は3年に1度の介護報酬改定の年に当たる。感染症対策にかかる緊張状態も長期化する中、「事業継続と、サービス水準の底上げを両立できるプラス改定を実現いただきたい」と国に呼び掛ける。
 

<メモ>


 広島県三次市の介護施設で4月、82歳の女性が新型コロナウイルスが原因の肺炎で亡くなった。遺族は、訪問介護で女性と接していたヘルパーから感染したとして、9月3日付で施設側に4400万円の損害賠償を求めて訴訟を起こした。10月12日に両者は和解した。
 

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