大豆作付け3年連続減 米価と連動か 所得安定が不可欠
2020年11月22日
政府が増産目標を掲げる大豆の作付面積が伸び悩んでいる。2020年産は前年産比1%減の14万1700ヘクタールと、3年連続で前年産を下回った。主食用米の転作作物として作付けする割合が多いため、ここ数年の米価の回復に伴う減少があるとみられる。増産には、基盤整備や転作補助などを通じ、安定した収量や所得の実現が不可欠となる。……
次ページに大豆作付面積の推移(表)があります。
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家庭用牛乳の販売拡大 生乳需給 逼迫基調に
昨年末から家庭用牛乳類の販売が拡大している。Jミルクによると、牛乳類(900ミリリットル~1リットル)の販売個数は12月28日の週から前年比5~10%増で推移。政府の外出自粛要請や、それに続く緊急事態宣言の再発令に伴い、巣ごもり需要が拡大した。生乳需給は緩和が懸念されていたが、現状はタイト感が出ている。
Jミルクの発表する牛乳類の販売速報(インテージSRI+データによる推計値)では、最新の4日からの1週間は、牛乳類全体で前年比9・2%増の4150万本。うち牛乳は10・8%増の3150万本と、この時期としては異例の多さとなった。それまで前年割れが続いていた加工乳(同2・4%増)は半年ぶりに、乳飲料(同3・6%増)も4カ月ぶりに前年超えに転じた。
クリスマスが終わり、生クリームなど乳製品需要が一段落する年末年始は、毎年生乳需給が大きく緩和し、都府県でも加工処理が進む。しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府から外出自粛の要請が出たことで、スーパーから乳業への牛乳類の発注が増加。関東生乳販連の迫田孝常務は「年末年始の余乳処理がここまで少なかったのは覚えがない」と報告する。飲用需要の高さを受け、大消費地の関東や関西の生乳需給は逼迫(ひっぱく)気味に。北海道からの生乳移送が悪天候で滞りがちなことも影響する。直近では6、10、18日に日本海ルートが、7日と19日に太平洋ルートが低気圧のため欠航となった。
一方、業務用の牛乳・乳製品の需要は緊急事態宣言再発令以後、一層落ち込む。広域の需給調整を担うJA全農酪農部は「直近は家庭用と業務用合わせて緩和ではないが、生産がさらに増える2月以降は分からない。今後も新型コロナ禍による消費動向を注視していく」と警戒を緩めない。
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2021年01月20日

きょうJA全国女性大会 全中・中家会長に聞く 主体的に運営参画を
JA全国女性組織協議会は20日、第66回JA全国女性大会を開く。JA全中の中家徹会長に、新型コロナウイルス下での活動へのエールやJAの運営参画への期待を聞いた。
──コロナが活動に影響をもたらしています。
今はさまざまな組織活動に支障を来している。女性組織も思うように活動ができていないと思うが、ウィズコロナ時代の活動指針を昨年9月に示し、できることからやろうと積極的な取り組みをしている。インターネット交流サイト(SNS)を使った話し合いなど、対策を講じて活動してほしい。
組織の基盤である部員の減少に歯止めがかからない。コロナ下でも萎縮せず、女性組織が頑張っていることを外に発信し、対外的なイメージ向上につなげてほしい。
──第5次男女共同参画基本計画が2021年度から始まります。JA運営に女性参画を進める意義は何ですか。
私は女性に見捨てられたJAに未来はないと、言い続けてきている。JAグループは正組合員、総代、理事などで女性割合の目標を掲げているが、目的はいかに女性の声をJA運営に反映させていくかだ。女性ならではの視点、感性、考え方を取り入れていくことで、JAの活性化につながっていく。
──どのように女性参画を進めますか。
大きいのはトップの意識だ。女性組織は、工夫し活動していることをメディアや、JAの広報誌を活用しPRしてほしい。女性組織の活躍を知れば、トップの認識もおのずと変わっていく。
役員も最初は女性枠を設ければいい。全く何もないところから、組織代表に出るのは難しい。女性役員の活躍が浸透すれば、自然と女性参画が進む好循環が生まれるはずだ。
──女性に求めることは何ですか。
地元JAで女性参画を進め、和歌山県でも相当進んできた。トップの意識が変わり、環境もできてきた。次に大事なのは女性の意識変革だ。役を断る人がいるが、経験者に感想を聞くと、100人のうち99人はやってよかったと言う。人脈ができ、いろいろな経験ができるからだ。
女性組織には絶大なる期待をしている。女性が元気なところは、JAも地域も元気。ぜひ頑張ってほしいし、遠慮せず主体的に参画してほしい。(聞き手・柳沼志帆)
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2021年01月20日

あす阪神・淡路大震災26年 記憶風化させない
未曽有の被害をもたらした阪神・淡路大震災の発生から、17日で26年を迎える。月日の経過に伴い震災の記憶が風化する中、本紙が当時報じた現場を改めて訪れた。関係者は「当時の様子を知る人はもうほとんどいない」と口をそろえる。震災の記憶をいかに次代へ継承するか。改めて問われている。(北坂公紀)
助かった命「奇跡」 兵庫県西宮市・卸売市場
地震発生から3日後の1995年1月20日付の1面。激しく倒壊した木造建築物を捉えた写真が、地震の規模の大きさを物語る。撮影されたのは兵庫県西宮市の西宮地方卸売市場だ。
「スーパーのバイヤーと取引していたら、不意に強い衝撃が走り、天井が落っこちてきた」。当時、同市場で青果卸・中善を営んでいた前田裕司さん(65)は振り返る。
震災当日は午前4時ごろから市場で働いていた。地震発生時は、地面から突き上げられるような縦揺れの衝撃が大きく「店にトラックでも突っ込んだのかと思った。はじめは何が起こったのか分からなかった」。
木造瓦屋根で2階建てだった建物は倒壊。ただ、山積みだった荷物の上に屋根がかぶさる形で、地面との間にわずかな空間が生まれた。「命が助かったのは本当に偶然だった」。奇跡的に犠牲者は出なかったという。
当初は再建を目指したものの、膨大な建設費などを前に話はまとまらず、2001年に閉場となった。
跡地にはスーパーなどが立ち並び、当時の面影はほとんど残っていない。前田さんは「当時の様子を知る人はもうほとんどいないと思う」と指摘する。
神戸市・農林中金事務所
「農林中央金庫神戸事務所も無残な姿に」。発生1週間となる1995年1月24日付の近畿・北陸面。3階部分が押しつぶされ、大きな被害を受けたビルの写真が説明文と共に掲載された。
神戸市内にある神栄(株)の本社ビルで、当時は1、2階に農林中金の事務所が入っていた。入社7年目だった同社執行役員の中西徹さん(56)は「当時、3階が職場だったが、出勤前だった。地震が3時間後だったら、おそらくつぶされていた」と話す。ビルは掲載4日後の28日から解体が始まり、1998年には跡地に新たにビルが建てられた。
農林中金の事務所は、95年2月からは仮設店舗で、同年7月からは仮店舗に移転して営業を再開。建て替え後のビルにも戻ったが、2002年に大阪支店に統合された。農林中金は「大阪支店でも当時を知る人は少なくなり、現在では3人しかいない」と話す。
近年、大規模な災害が頻発し、過去の災害の「記憶」と「教訓」から学ぶことは多い。今後起こる災害で被害を少しでも抑えるために、薄れつつある震災をどう次代に継承するかが問われている。
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2021年01月16日

そばの実パスタソース 北海道・JA新得町
全国有数のソバ産地である北海道のJA新得町が作ったトマト味のソース。ソバの実を使って初めて加工品開発に挑戦したJA自慢の商品で、ソバのうま味を凝縮している。
電子レンジで3分以内に手軽に調理できる。ドリアやスープなどさまざまな料理に利用でき、パンに付けてもおいしい。10種類の豆、雑穀、野菜などを加えた栄養の豊富さも特徴だ。JAでは「消費者に新得町がソバの産地であることや、加工の取り組みを知ってほしい」としている。
3個(1個180グラム)入り1500円(税・送料別)。十勝管内の土産店などで購入できる。問い合わせは「相馬商店」、(電)0156(64)5055。
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2021年01月15日
介護報酬改定 ほぼ全て引き上げ 訪問系で認知症対応拡充
厚生労働省は18日、2021年度の介護報酬改定に向け、各サービスの増減内容を明らかにした。ほぼ全てのサービスの基本報酬を引き上げた。訪問サービスの認知症やみとり対応を拡充。高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるように支援する体制「地域包括ケアシステム」を推進する。
同省が同日開いた社会保障審議会介護給付費分科会で改定案を示した。……
2021年01月19日
農政の新着記事

鳥インフル 飼養管理不備1割 改善へ指導継続 農水省
農水省が全国の養鶏場などを対象に行った飼養衛生管理基準の自主点検で、報告があった約1万4000件の農場などのうち、1割ほどに不備があることが19日、分かった。都道府県ごとの結果は22日に公表する予定。同省は高病原性鳥インフルエンザが過去最大に広がる中、全農場で管理基準が順守されるよう、指導を続ける。
19日に開かれた鳥インフルエンザ関係閣僚会議で報告された。飼養衛生管理基準のうち、今シーズンの発生農場で不十分なケースが多かった7項目について、前回点検で約1割ほどの農場に不備があったため追加調査をした。
今回は1月18日までの約1カ月間で聞き取り、報告数は前回報告数の2倍近くとなる1万3543。小規模農場にも働き掛けた上、愛玩動物として鳥を飼う個人や、動物園、研究施設などにも報告を求めた。
今回の点検では、「衛生管理区域専用の衣服、靴の設置と使用」「家禽(かきん)舎ごとの専用の靴の設置と使用」がともに順守率89%で低かった。一方、「野生動物の侵入防止ネットなどの設置、点検、修繕」など同95%で高かった。
前回点検から順守率が下がった項目は「ネズミ、害虫の駆除」で、前回点検より3ポイント減の93%だった。
同省によると、前回の点検で不備があった農場の多くは改善しているという。今回不備があった農場についても防鳥ネットや消毒機器の整備などへの支援の活用を促し、順守率100%を目指す。同省動物衛生課は「全ての項目を順守する必要がある。引き続き、指導や助言などを続けていく」と強調した。
野上浩太郎農相も19日の閣議後会見で、「今シーズンは発生数、殺処分数とも過去最大となっている状況。関係府省と連携し緊張感を持って対応していきたい」と述べた。
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2021年01月20日
全国展開前提でない 企業農地取得 特例調査で農相
野上浩太郎農相は19日の閣議後記者会見で、国家戦略特区の兵庫県養父市で認めている企業による農地取得の特例を巡り、2021年度中に全国で実施する特例のニーズや問題点に関する調査は「全国展開を前提にするものではない」との認識を示した。養父市での期限延長については「今後も複数の企業が活用する可能性がある」として、容認する考えを示した。……
2021年01月20日
介護報酬改定 ほぼ全て引き上げ 訪問系で認知症対応拡充
厚生労働省は18日、2021年度の介護報酬改定に向け、各サービスの増減内容を明らかにした。ほぼ全てのサービスの基本報酬を引き上げた。訪問サービスの認知症やみとり対応を拡充。高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるように支援する体制「地域包括ケアシステム」を推進する。
同省が同日開いた社会保障審議会介護給付費分科会で改定案を示した。……
2021年01月19日
首相、輸出拡大に意欲 初の施政方針 産地支援を強調 通常国会召集
第204通常国会が18日、召集された。就任後初の施政方針演説に臨んだ菅義偉首相は、農業政策の柱に農林水産物・食品の輸出を改めて提起し、「27の重点品目を選定し、国別に目標金額を定めて、産地を支援する」と強調。2030年に輸出額を5兆円とする政府目標に向けた実行戦略の着実な推進に意欲を示した。
昨年9月に就任した菅首相にとって、初の通常国会。新型コロナウイルスの感染拡大防止や、農業を含めコロナで影響を受けた経済への対策が論戦の最大の焦点となる。
首相は演説で、地方活性化に向けた政策の柱に農林水産業の成長産業化を提起した。「地域をリードする成長産業とすべく、改革を進める」と強調。輸出拡大策の他、主食用米から高収益作物への転換などを挙げた。農業分野の規制改革については言及しなかった。
農産物輸出については20年の輸出額が「新型コロナの影響にもかかわらず、過去最高となった19年に迫る水準」と述べ、今後の拡大に向けた自信を示した。実行戦略の推進に加え、「農業に対する資金供給の仕組みも変えていく」とも語った。政府は通常国会で輸出への投資が進むよう、「農業法人投資円滑化特別措置法」を改正し、同法の対象を現行の農業法人以外にも広げる方針だ。
外交を巡っては、通常国会に承認案を提出する地域的な包括的経済連携(RCEP)や、今年1月に発効した日英経済連携協定(EPA)を成果として強調。21年は日本が環太平洋連携協定(TPP)議長国であることを踏まえ「着実な実施と拡大に向けた議論を主導していく」と述べた。20日に就任する米国のバイデン次期大統領については「早い時期に会い、日米の結束をさらに強固にする」と語った。
通常国会の会期は6月16日までの150日間。施政方針演説など政府4演説に対する代表質問は、20日の衆院本会議から始まる。
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2021年01月19日

日本酒・焼酎 無形文化遺産めざす 輸出や消費拡大期待 施政方針で首相 登録は24年以降
菅義偉首相が18日の施政方針演説で、日本酒や焼酎について国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録を目指すと表明した。新型コロナウイルス禍で酒類や原料の酒造好適米などの需要が落ち込む中、登録されれば輸出や国内消費の拡大が期待される。政府は申請に向けた準備を既に進めているが、登録は早くても2024年以降となる見通しだ。
無形文化遺産は、地域の歴史や風習などと深く結び付いた芸能や工芸技術などの形のない文化を保護し、重要性への意識を高めることを目的とする。……
日本では歌舞伎や能楽などが登録されている他、13年には「和食」が日本人の伝統的な食文化として登録され、日本食や日本産食材の人気にもつながったとされる。
政府は日本酒や焼酎について、こうじを使った伝統的な醸造技術として申請する方向で検討。技術の保護措置なども検討し、22年2月にも申請したい考えだ。ただ、ユネスコは同遺産の登録が無い国の審査を優先している。登録件数が多い日本の申請は、実質2年に1回の頻度で審査しており、登録は早くても24年になる。
政府は、日本酒や焼酎を輸出の有望品目とみており、昨年策定した農林水産物・食品の輸出拡大に向けた実行戦略で、どちらも「重点品目」に設定している。同戦略でも、無形文化遺産への登録に向けた検討を加速すると明記していた。輸出量が増えれば、原料の酒造好適米などの需要拡大にもつながる。
19年の輸出額は、日本酒が234億円、焼酎が16億円。同戦略では25年の目標額をそれぞれ600億円と40億円に設定した。政府は同遺産の登録を通じて「現場のモチベーションを高めると同時に、日本酒と焼酎の海外での認知度が向上し、国内の需要創出や輸出拡大につながってほしい」(国税庁)と期待する。
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2021年01月19日

農業の特定技能「派遣」 広がる 短期雇用も柔軟 手続き負担減
外国人の新在留資格「特定技能」の農業分野で認められた「派遣」が広がっている。農家は直接雇用に比べ事務手続きなどの負担が少なく、雇用期間を柔軟に調整できる。農繁期が異なる北海道と沖縄など地域間で連携した受け入れも進む。派遣に参入する事業者も増え、専門家は「これまで外国人を入れてこなかった家族経営でも受け入れが広がる」と指摘する。(望月悠希)
外国人材 大きな力
畑作が盛んな北海道浦幌町の選果施設。次々とコンベヤーで流れてくるジャガイモを段ボール箱に手際よく詰めるのは、カンボジア人のレム・チャントーンさん(26)だ。「将来は帰国してビジネスを立ち上げたい。分からないことも周りに聞くと、よく説明してくれる」と笑顔で話す。
チャントーンさんらは特定技能の資格を得た外国人。道内各地で農業生産・販売の他、作業受託をする「北海道グリーンパートナー」が、人材派遣会社の「YUIME(ゆいめ)」から受け入れた。
8~10月の農繁期には150人もの人手が必要な北海道グリーンパートナーは、YUIMEからの提案で、技能実習生だった特定技能の派遣を2019年に11人、20年に23人受け入れた。
YUIMEの派遣は、夏は北海道、冬は本州や沖縄で働くのが基本だ。ジャガイモの選果など冬場でも仕事がある場合は、道内で通年で働くこともある。
直接雇用では通年で仕事を用意しないと外国人の受け入れは難しいが、派遣なら必要な時期を決めて契約を結べる。北海道グリーンパートナー代表の高田清俊さん(59)は「外国人にとっても、さまざまな農家で働くことで、より豊かな経験を積むことができる」と評価する。
受け入れ側は面接や入国手続きなど事務負担が少ないのもメリットだ。北海道グリーンパートナーに組合員の農作業を委託するJAうらほろの林常行組合長は「人手不足を解消し、付加価値の高い販売に力を入れたい」と期待する。
各地で参入の動き
一定の技能を持ち、即戦力としての労働が認められている特定技能の仕組みは、19年に始まった。農業分野では、農業者が雇用契約を結び直接雇用する方法と、雇用契約を結んだ派遣業者が受け入れ機関となり農家に派遣する方法の、2種類がある。派遣では、繁忙期の違う地域に季節ごとに人材を送り出せる。
農業分野の特定技能は、制度発足から1年半の20年9月末時点で1306人。農業分野の受け入れ事業者が加入する「農業特定技能協議会」のうち、10社ほどが派遣事業者だ。
YUIMEは、農業分野の技能実習生だった外国人を採用。給料や待遇は日本人と同等の扱いで、現場のリーダーになる人材を育てている。住まいは、受け入れ農家に住宅の敷地内にある持ち家などを用意してもらい、YUIMEが借り入れる。
北海道以外でも派遣は進む。アルプス技研は、2019年4月から特定技能の派遣事業に参入。現在は子会社の「アグリ&ケア」が9道県に49人を派遣する。
JA北海道中央会も、特定技能のあっせん・派遣をする新組織の立ち上げを目指す。北海道稚内市の酪農家・石垣一郎さん(39)が経営する「アグリリクルート」は、21年から派遣事業に乗り出す。
家族経営も 活用しやすい 北海学園大学の宮入隆教授の話
入国手続きや労務管理の一部を派遣事業者に任せられるため、家族経営が外国人を受け入れるハードルが下がった。季節雇用、通年雇用問わず、広がっていくことは間違いない。一方で事業者は、各地に移動する特定技能の外国人の心理的な負担を考慮すべきだ。
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2021年01月19日

20年産米販売 家庭向けもブレーキ 10、11月支出額 過去20年で最低
2020年産米の販売が低迷している。新型コロナウイルス下で業務用需要の苦戦が続き、頼みの家庭用需要も勢いを失っている。10、11月の米の家計支出額は過去20年で最低水準だった。緊急事態宣言の再発令で、販売環境は不透明さが強まる。需給の均衡に向けて、需要に応じた生産だけでなく消費喚起対策が求められる。(玉井理美)
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の米の支出額は10月が前年比10・8%減の2604円、11月が同4・7%減の1847円。ともに過去20年の同じ月と比べて最も少なかった。内食傾向が高まり、9月までは連続で前年を上回っていたが、10月に減少に転じた。
20年産の米価は6年ぶりに下落したが、消費の刺激にはつながらず、購入数量も10、11月ともに過去20年で最低水準に落ち込んだ。主食で競合する麺類は支出額の前年超えが続いており、対照的な動きだ。消費者の米離れが背景にある。
農水省がまとめた主要米卸の11月の販売数量は、同3・5%減と8カ月連続で前年を下回り、家庭用の販売が業務用の低迷を補い切れていない。
消費低迷で、産地の販売も遅れている。農水省によると、産地から卸に引き取られた全国の販売量は、11月末時点で38万5000トン。前年同月より13%少ない。集荷量に占める販売比率は16%で、進捗(しんちょく)は例年よりも遅れている。
業務用需要の低迷で持ち越し在庫の消化が遅れていることに加え、家庭用米販売の鈍化も影響している。北陸地方のJA関係者は「家庭用定番銘柄でも販売に勢いがない。コロナの影響で試食などの販促活動がしづらい」と頭を悩ます。
消費低迷が続けば、今後の取引価格や需給にも影響を及ぼす。20年産の持ち越し在庫が多くなれば、需給を均衡させるために、21年産ではさらに転作の拡大が必要になる。
東北地方のJA関係者は「適正量の生産だけでなく、消費拡大も両輪で取り組む必要がある。事前契約を積極的に進めて販売先を確保しても、実際の販売が遅れれば厳しいことに変わりない」と指摘する。
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2021年01月18日

通常国会きょう召集 コロナ対策 最重点
第204通常国会が18日、召集される。新型コロナウイルス対策が最大の焦点で、政府・与党は対策を盛り込む2020年度第3次補正予算と21年度当初予算の成立を急ぐ。緊急事態宣言を受けた農業への影響を巡っても論戦が繰り広げられる見通しだ。政府は農水省の4法案の他、企業による農地所有特例の延長を盛り込む国家戦略特区法改正案、地域的な包括的経済連携(RCEP)の承認案などを提出する。
農林関係法案審議 予算成立後に本格化
会期は6月16日までの150日で、18日は菅義偉首相の施政方針演説などを行う。20~22日には衆参両院の本会議で各党が代表質問する。
政府・与党は補正予算の月内成立、当初予算の年度内成立を目指す。補正予算は農林水産関係で1兆519億円を計上。園芸農家向けの「高収益作物次期作支援交付金」や感染防止への投資を支援する「経営継続補助金」など、コロナ対策を盛り込んだ。当初予算の農林水産関係は前年並みの2兆3050億円とした。
農林関係の法案審議は予算成立後に本格化する見通しだ。農水省は畜舎の建築基準の特例措置を盛り込む新法案や、輸出促進に向けた事業者の投資を支援する「農業法人投資円滑化特別措置法」の改正案など4法案を提出、早期成立を目指す。
国家戦略特区法改正案は、特区の兵庫県養父市で認めている一般企業の農地所有特例を2年延長するのが柱だ。同特区諮問会議の民間議員らが求めていた特例の全国展開は見送った。審議では、農地取得の必要性の他、諮問会議の在り方も議論になる可能性がある。
RCEPは昨年、日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)など15カ国で署名。農産物の重要5品目は関税削減・撤廃の対象から除外したが、中韓とは初めての経済連携協定(EPA)となるため、影響の検証が課題になる。
議員立法では、狩猟者の技能講習の免除措置の延長などを盛り込む鳥獣被害防止特措法改正案や、過疎地域を財政支援する過疎地域自立促進特措法が3月末に期限を迎えることを受けた新法案が提出される予定だ。
7月には東京都議会議員の任期満了、7月23日には東京五輪の開幕を迎えるため、会期の延長は難しい見通し。政府・与党は提出法案の会期内成立を目指す。
衆院議員の任期満了が10月に迫る中、衆院解散の時期も焦点になる。4月25日には、吉川貴盛元農相の議員辞職と羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う衆参の補欠選挙が行われる。こうした政治日程も絡むとみられるが、コロナの収束は不透明で、菅首相の解散戦略は依然見通せない。
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2021年01月18日
鳥インフル 移動制限全て解除 厳重警戒続く 香川県三豊市
香川県は16日、三豊市で集中発生した今季12事例の高病原性鳥インフルエンザについて、発生農場から半径3キロ圏内で設けた鶏などの移動制限を全て解除した。通常は防疫措置完了後、最短21日の経過で解除できるが、狭い範囲で続発して埋却などの作業も難航。制限解除は昨年11月5日の初発生から約2カ月ぶりになる。今後は感染防止とともに、養鶏場の経営再建が課題となる。
今季の高病原性鳥インフルエンザは発生が15県に広がり、殺処分の羽数は36事例(48農場)で約600万羽となった。1シーズンの被害としては過去に例がない事態。直近でも全国屈指の養鶏産地、千葉県や鹿児島県で発生している。
香川県内の制限区域の解消により、今季発生した36事例のうち31例目まで(全体の86%)は鶏などの移動制限が全て解除された。現時点で制限区域が残るのは32~36事例の発生農場がある千葉、岐阜、宮崎、鹿児島の4県となる。
三豊市内では、県によると、12事例で約179万羽を殺処分した。鶏などの移動が制限された半径3キロ圏内では今も33農場が、約129万羽を飼養。制限が長期化したことで、県は「一部の農場では、ブロイラーが出荷できる日齢を超えたため処分された」と説明する。
移動制限の解除を受け県養鶏協会の志渡節雄会長は「(感染源とみられる)渡り鳥は、まだ周辺にいる。気を緩めず、感染防止に取り組む」と強調。その上で、「発生農場は、経営再開のめどが全く立っていない。国や県には支援や補償を早く示し、農家の不安を払拭(ふっしょく)してもらいたい」と要望している。
ため池が多い香川県では、渡り鳥が飛来する時季に発生が集中した。今後は春に渡り鳥が北へ移動する時季にウイルスが拡散する可能性がある。
北海道大学大学院獣医学研究院の迫田義博教授は「渡り鳥がシベリアに帰っていく、5月の大型連休ごろまでは厳重な警戒が必要。人、物の消毒や野鳥、野生動物の侵入防止など飼養衛生管理を徹底すべきだ」と話す。
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2021年01月17日

本紙モニター調査 米需給対策=4割「課題あり」 輸出5兆円=「対策次第」3割
日本農業新聞が12月中下旬に行った農政モニター調査で、主食用米の需給均衡に向けた農水省の対策について「課題がある」との回答が39%に達した。米政策の改善には「転作メリットの拡充」が必要との声が最多だった。農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円にする政府目標の達成の成否は「対策次第」とみる回答が33%で最も多かった。
農水省は昨年12月、輸出・加工用米や麦・大豆などへの転換に10アール当たり4万円を助成する「水田リノベーション事業」をはじめ、転作支援の拡充や米の需要喚起に向けた対策を発表。調査では「評価している」は12%にとどまり、「課題があり見直しが必要」が39%、「どちらともいえない」が47%だった。
「米政策を改善するとしたら、どういった視点が必要になるか」との質問には、回答を二つまで選んでもらった。最も多かったのは「転作推進のメリット拡充」で36%、「生産費を補う所得政策の確立」が35%で続いた。「資材価格の引き下げ」と「米の消費喚起」も30%の人が選んだ。
売上高が最も多い品目に「水田農業」を選んだ人に限ると、米対策については「評価」が14%、「課題がある」が44%、「どちらともいえない」が42%だった。米政策の改善については、「所得政策」が42%、「転作メリット」が36%、「資材価格」が35%の順だった。
農水省は21年産の米生産を「正念場」(野上浩太郎農相)とし、需給均衡には過去最大規模となる前年産比6・7万ヘクタールの作付け転換が必要とみる。対策の実効性確保には、こうした農家の意見も踏まえ、理解を求める必要がありそうだ。
輸出5兆円目標の達成については「対策次第」が33%だった一方、「達成できない」が27%、「過大だ」が16%で、「達成できる」の6%を上回った。経営品目別に見ると、「達成できる」と考える割合が最も高かったのは肉用牛肥育で14%、低かったのは畑作物と養鶏でゼロだった。水田農業や花きは5%、施設園芸は3%にとどまった。
政府は昨年11月、輸出目標達成に向けた実行戦略を策定したが、輸出の拡大には同戦略に沿った十分な支援策とともに、農家の意欲喚起も求められそうだ。
調査は、農業者を中心とした本紙の農政モニター1133人を対象に昨年12月中下旬、郵送で実施。756人から回答を得た。
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2021年01月17日