鳥インフル 兵庫で初
2020年11月27日

鳥インフルエンザの発生を受け防疫作業に当たる関係者(26日、兵庫県淡路市で=兵庫県提供)
農水省と兵庫県は25日夜、同県淡路市の養鶏場で、鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。今季10例目で、県内の養鶏場で確認したのは初めて。県は、同日中に採卵鶏約14万6000羽の殺処分を開始。移動・搬出制限区域を設定し、消毒ポイントを設置した。
県によると、25日午前10時25分に発生農場から通報があり、同日午後0時36分に簡易検査で陽性と判明。農場では開放鶏舎9棟のうち1棟で、13羽が死んでいた。午後9時に県内の家畜保健衛生所でH5亜型と確認し疑似患畜と判定した。
発生農場の半径3キロ圏内の移動制限区域内には養鶏場がないが、半径3~10キロの搬出制限区域には7戸が約1万羽を飼育する。
県は発生農場周辺の主要道路に7カ所の消毒ポイントを設け、拡大防止対策を始めた。
県内の養鶏場で見つかるのは初めて。発生農場の経営者は感染を疑い迅速に通報したが、「まさか発生するとは」と肩を落とす。県内は渡り鳥が集まりやすいため池の数が全国で最も多いため、関係者は警戒を強めている。
「通報時は半信半疑だったが、まさか発生するとは思わなかった」。発生農場の経営者の男性は26日、日本農業新聞の電話取材に応じ、こう漏らした。
異常が見つかったのは25日午前。男性の農場では複数の鶏舎で14万6000羽を飼養しているが、そのうち1棟で隣り合う籠で集中して死んだ鶏が見つかった。死んだのは13羽で通常と変わらなかったが、近隣の香川で鳥インフルエンザが多発しているため、万が一を考えて家畜保健衛生所に通報したという。
結果的に悪い予感は的中した。正午すぎには、家保の簡易検査で陽性を確認。夜には遺伝子検査で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜と判定され、午後10時半から殺処分が始まった。24時間態勢で作業を進めており、県職員が常時100人態勢で臨む他、知事の災害派遣要請を受けた自衛隊員約300人も作業に当たる。
兵庫県養鶏協会は「今回の事例では通報が早かったため、迅速な対応が可能となった」と指摘する。
同県は渡り鳥が集まりやすいため池が全国最多なだけに、関係者は警戒感を強めている。
JA全農兵庫は26日、高病原性鳥インフルエンザ対策本部(対策本部長=石塚博己全農兵庫県本部長)を立ち上げた。行政などと連携して、情報収集や県内JAへの情報提供に当たる。担当者は「これ以上広がらないようにしたい」と強調する。
「播州百日どり」など肉用鶏の独自ブランドを持つ同県のJAみのりは、防疫対策を強化する。管内に100超ある鶏舎を対象に、金網や防鳥ネットを設置。JA経済部の長谷川貴浩部長は「野生動物対策に万全を期したい」と話す。
県によると、25日午前10時25分に発生農場から通報があり、同日午後0時36分に簡易検査で陽性と判明。農場では開放鶏舎9棟のうち1棟で、13羽が死んでいた。午後9時に県内の家畜保健衛生所でH5亜型と確認し疑似患畜と判定した。
発生農場の半径3キロ圏内の移動制限区域内には養鶏場がないが、半径3~10キロの搬出制限区域には7戸が約1万羽を飼育する。
県は発生農場周辺の主要道路に7カ所の消毒ポイントを設け、拡大防止対策を始めた。
発生農家 「まさか…」肩落とす
県内の養鶏場で見つかるのは初めて。発生農場の経営者は感染を疑い迅速に通報したが、「まさか発生するとは」と肩を落とす。県内は渡り鳥が集まりやすいため池の数が全国で最も多いため、関係者は警戒を強めている。
「通報時は半信半疑だったが、まさか発生するとは思わなかった」。発生農場の経営者の男性は26日、日本農業新聞の電話取材に応じ、こう漏らした。
異常が見つかったのは25日午前。男性の農場では複数の鶏舎で14万6000羽を飼養しているが、そのうち1棟で隣り合う籠で集中して死んだ鶏が見つかった。死んだのは13羽で通常と変わらなかったが、近隣の香川で鳥インフルエンザが多発しているため、万が一を考えて家畜保健衛生所に通報したという。
結果的に悪い予感は的中した。正午すぎには、家保の簡易検査で陽性を確認。夜には遺伝子検査で高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜と判定され、午後10時半から殺処分が始まった。24時間態勢で作業を進めており、県職員が常時100人態勢で臨む他、知事の災害派遣要請を受けた自衛隊員約300人も作業に当たる。
兵庫県養鶏協会は「今回の事例では通報が早かったため、迅速な対応が可能となった」と指摘する。
同県は渡り鳥が集まりやすいため池が全国最多なだけに、関係者は警戒感を強めている。
JA全農兵庫は26日、高病原性鳥インフルエンザ対策本部(対策本部長=石塚博己全農兵庫県本部長)を立ち上げた。行政などと連携して、情報収集や県内JAへの情報提供に当たる。担当者は「これ以上広がらないようにしたい」と強調する。
「播州百日どり」など肉用鶏の独自ブランドを持つ同県のJAみのりは、防疫対策を強化する。管内に100超ある鶏舎を対象に、金網や防鳥ネットを設置。JA経済部の長谷川貴浩部長は「野生動物対策に万全を期したい」と話す。
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20年産米販売 家庭向けもブレーキ 10、11月支出額 過去20年で最低
2020年産米の販売が低迷している。新型コロナウイルス下で業務用需要の苦戦が続き、頼みの家庭用需要も勢いを失っている。10、11月の米の家計支出額は過去20年で最低水準だった。緊急事態宣言の再発令で、販売環境は不透明さが強まる。需給の均衡に向けて、需要に応じた生産だけでなく消費喚起対策が求められる。(玉井理美)
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の米の支出額は10月が前年比10・8%減の2604円、11月が同4・7%減の1847円。ともに過去20年の同じ月と比べて最も少なかった。内食傾向が高まり、9月までは連続で前年を上回っていたが、10月に減少に転じた。
20年産の米価は6年ぶりに下落したが、消費の刺激にはつながらず、購入数量も10、11月ともに過去20年で最低水準に落ち込んだ。主食で競合する麺類は支出額の前年超えが続いており、対照的な動きだ。消費者の米離れが背景にある。
農水省がまとめた主要米卸の11月の販売数量は、同3・5%減と8カ月連続で前年を下回り、家庭用の販売が業務用の低迷を補い切れていない。
消費低迷で、産地の販売も遅れている。農水省によると、産地から卸に引き取られた全国の販売量は、11月末時点で38万5000トン。前年同月より13%少ない。集荷量に占める販売比率は16%で、進捗(しんちょく)は例年よりも遅れている。
業務用需要の低迷で持ち越し在庫の消化が遅れていることに加え、家庭用米販売の鈍化も影響している。北陸地方のJA関係者は「家庭用定番銘柄でも販売に勢いがない。コロナの影響で試食などの販促活動がしづらい」と頭を悩ます。
消費低迷が続けば、今後の取引価格や需給にも影響を及ぼす。20年産の持ち越し在庫が多くなれば、需給を均衡させるために、21年産ではさらに転作の拡大が必要になる。
東北地方のJA関係者は「適正量の生産だけでなく、消費拡大も両輪で取り組む必要がある。事前契約を積極的に進めて販売先を確保しても、実際の販売が遅れれば厳しいことに変わりない」と指摘する。
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2021年01月18日
チバクロバネキノコバエ イチゴで特殊報福島県内初めて
福島県病害虫防除所は14日、いわき市のイチゴ圃場(ほじょう)でチバクロバネキノコバエの被害を県内で初めて確認し、特殊報第3号を発表した。イチゴへの被害は長野、茨城県などに続き7県目。……
2021年01月15日

種子繁殖イチゴ 民間企業で初開発 育苗期間を半減 ミヨシグループ
種苗会社のミヨシグループは15日、日本の民間企業では初となるF1種子イチゴを開発したと発表した。国内向けに2品種を展開する。種子系品種はランナーで増殖する品種と比べて育苗期間が半減でき、省力化や病害虫リスクの軽減、コスト削減などが見込める。農家が果実の品質を見るための試作用苗を今秋に販売する。同日から予約受け付けを始めた。
輸送性も良好 今秋、試作苗販売
同社は高品質なイチゴの安定収穫や作業負荷の軽減を目指し、7年をかけて種子系品種の開発に取り組んだ。……
2021年01月16日
大雪で物流停滞 ジャガイモ6割高に 貨物列車運休
強い寒波による大雪で物流が乱れ、ジャガイモの供給が全国的に不足している。主産地の北海道産が、積雪の影響で鉄道の運行が止まり、道内に荷物が滞留。本格的な運行再開は週末にずれ込む見込みだ。緊急事態宣言を受けて小売りの仕入れが増える中、需給が逼迫(ひっぱく)し、相場は急騰している。
北海道産のジャガイモやタマネギの輸送は、鉄道が約7割を占める。大雪で7日以降、輸送を担うJR貨物は、道内と本州を結ぶ路線の運行が停止。同社北海道支社によると、全面的な運行再開は、15日になる見通しだ。
同社によると「積雪の影響で1週間以上も運行が止まるのは近年ない」異例の状況。低温のコンテナ内で滞留するとジャガイモやタマネギは凍結する恐れがあり、発送した荷物を産地の倉庫に戻す動きもある。ホクレンが輸送で扱う農産物は、12日時点で3000コンテナ(1コンテナ約5トン)滞留しているとみられ、影響が懸念される。
物流の乱れを受け、産地も対策を講じている。道内のJAは、鉄道からフェリー輸送への切り替えを実施。ただ、「フェリーも先週は一時止まっていたし、港まで運ぶトラックの手配も十分ではない。荷物を出しきれず、選別・出荷作業を止めざるを得ない」という。
品薄の影響は、相場に表れてきた。13日の日農平均価格(各地区大手5卸のデータを集計)はジャガイモが1キロ173円と、過去5年平均比の57%高に高騰。卸売会社は「玉付きが少なく不足感がある中で物流も停滞し、逼迫の度合いは増した。日頃取引のないスーパーからも注文が入るほど小売りは荷動きが良く、当面は相場の反発が続く」とみる。タマネギは同11%安の76円だが、今後上昇が見込まれる。
果実は、寒波による供給の影響は限定的だ。青森のJAつがる弘前は、リンゴの出荷先の1割強を占める北海道と九州向けを貨物利用しているが、トラック輸送に切り替えて対応している。
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2021年01月14日

11県合同トマト販促 首都圏100店舗で 鍋料理や機能性宣伝
冬春トマトの主産11県のJAグループが、首都圏のスーパーで合同販促を展開している。11県合同での冬季の店頭販促は初めて。17社と協力し、先週の3連休と今週末に、100を超える店舗で実施する。鍋など体が温まる料理やトマトの機能性を伝えるポスター掲示や推奨販売を通じ、厳寒期の販売を盛り上げる。
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2021年01月15日
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2021年01月18日

通常国会きょう召集 コロナ対策 最重点
第204通常国会が18日、召集される。新型コロナウイルス対策が最大の焦点で、政府・与党は対策を盛り込む2020年度第3次補正予算と21年度当初予算の成立を急ぐ。緊急事態宣言を受けた農業への影響を巡っても論戦が繰り広げられる見通しだ。政府は農水省の4法案の他、企業による農地所有特例の延長を盛り込む国家戦略特区法改正案、地域的な包括的経済連携(RCEP)の承認案などを提出する。
農林関係法案審議 予算成立後に本格化
会期は6月16日までの150日で、18日は菅義偉首相の施政方針演説などを行う。20~22日には衆参両院の本会議で各党が代表質問する。
政府・与党は補正予算の月内成立、当初予算の年度内成立を目指す。補正予算は農林水産関係で1兆519億円を計上。園芸農家向けの「高収益作物次期作支援交付金」や感染防止への投資を支援する「経営継続補助金」など、コロナ対策を盛り込んだ。当初予算の農林水産関係は前年並みの2兆3050億円とした。
農林関係の法案審議は予算成立後に本格化する見通しだ。農水省は畜舎の建築基準の特例措置を盛り込む新法案や、輸出促進に向けた事業者の投資を支援する「農業法人投資円滑化特別措置法」の改正案など4法案を提出、早期成立を目指す。
国家戦略特区法改正案は、特区の兵庫県養父市で認めている一般企業の農地所有特例を2年延長するのが柱だ。同特区諮問会議の民間議員らが求めていた特例の全国展開は見送った。審議では、農地取得の必要性の他、諮問会議の在り方も議論になる可能性がある。
RCEPは昨年、日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)など15カ国で署名。農産物の重要5品目は関税削減・撤廃の対象から除外したが、中韓とは初めての経済連携協定(EPA)となるため、影響の検証が課題になる。
議員立法では、狩猟者の技能講習の免除措置の延長などを盛り込む鳥獣被害防止特措法改正案や、過疎地域を財政支援する過疎地域自立促進特措法が3月末に期限を迎えることを受けた新法案が提出される予定だ。
7月には東京都議会議員の任期満了、7月23日には東京五輪の開幕を迎えるため、会期の延長は難しい見通し。政府・与党は提出法案の会期内成立を目指す。
衆院議員の任期満了が10月に迫る中、衆院解散の時期も焦点になる。4月25日には、吉川貴盛元農相の議員辞職と羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う衆参の補欠選挙が行われる。こうした政治日程も絡むとみられるが、コロナの収束は不透明で、菅首相の解散戦略は依然見通せない。
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2021年01月18日
鳥インフル 移動制限全て解除 厳重警戒続く 香川県三豊市
香川県は16日、三豊市で集中発生した今季12事例の高病原性鳥インフルエンザについて、発生農場から半径3キロ圏内で設けた鶏などの移動制限を全て解除した。通常は防疫措置完了後、最短21日の経過で解除できるが、狭い範囲で続発して埋却などの作業も難航。制限解除は昨年11月5日の初発生から約2カ月ぶりになる。今後は感染防止とともに、養鶏場の経営再建が課題となる。
今季の高病原性鳥インフルエンザは発生が15県に広がり、殺処分の羽数は36事例(48農場)で約600万羽となった。1シーズンの被害としては過去に例がない事態。直近でも全国屈指の養鶏産地、千葉県や鹿児島県で発生している。
香川県内の制限区域の解消により、今季発生した36事例のうち31例目まで(全体の86%)は鶏などの移動制限が全て解除された。現時点で制限区域が残るのは32~36事例の発生農場がある千葉、岐阜、宮崎、鹿児島の4県となる。
三豊市内では、県によると、12事例で約179万羽を殺処分した。鶏などの移動が制限された半径3キロ圏内では今も33農場が、約129万羽を飼養。制限が長期化したことで、県は「一部の農場では、ブロイラーが出荷できる日齢を超えたため処分された」と説明する。
移動制限の解除を受け県養鶏協会の志渡節雄会長は「(感染源とみられる)渡り鳥は、まだ周辺にいる。気を緩めず、感染防止に取り組む」と強調。その上で、「発生農場は、経営再開のめどが全く立っていない。国や県には支援や補償を早く示し、農家の不安を払拭(ふっしょく)してもらいたい」と要望している。
ため池が多い香川県では、渡り鳥が飛来する時季に発生が集中した。今後は春に渡り鳥が北へ移動する時季にウイルスが拡散する可能性がある。
北海道大学大学院獣医学研究院の迫田義博教授は「渡り鳥がシベリアに帰っていく、5月の大型連休ごろまでは厳重な警戒が必要。人、物の消毒や野鳥、野生動物の侵入防止など飼養衛生管理を徹底すべきだ」と話す。
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2021年01月17日

本紙モニター調査 米需給対策=4割「課題あり」 輸出5兆円=「対策次第」3割
日本農業新聞が12月中下旬に行った農政モニター調査で、主食用米の需給均衡に向けた農水省の対策について「課題がある」との回答が39%に達した。米政策の改善には「転作メリットの拡充」が必要との声が最多だった。農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円にする政府目標の達成の成否は「対策次第」とみる回答が33%で最も多かった。
農水省は昨年12月、輸出・加工用米や麦・大豆などへの転換に10アール当たり4万円を助成する「水田リノベーション事業」をはじめ、転作支援の拡充や米の需要喚起に向けた対策を発表。調査では「評価している」は12%にとどまり、「課題があり見直しが必要」が39%、「どちらともいえない」が47%だった。
「米政策を改善するとしたら、どういった視点が必要になるか」との質問には、回答を二つまで選んでもらった。最も多かったのは「転作推進のメリット拡充」で36%、「生産費を補う所得政策の確立」が35%で続いた。「資材価格の引き下げ」と「米の消費喚起」も30%の人が選んだ。
売上高が最も多い品目に「水田農業」を選んだ人に限ると、米対策については「評価」が14%、「課題がある」が44%、「どちらともいえない」が42%だった。米政策の改善については、「所得政策」が42%、「転作メリット」が36%、「資材価格」が35%の順だった。
農水省は21年産の米生産を「正念場」(野上浩太郎農相)とし、需給均衡には過去最大規模となる前年産比6・7万ヘクタールの作付け転換が必要とみる。対策の実効性確保には、こうした農家の意見も踏まえ、理解を求める必要がありそうだ。
輸出5兆円目標の達成については「対策次第」が33%だった一方、「達成できない」が27%、「過大だ」が16%で、「達成できる」の6%を上回った。経営品目別に見ると、「達成できる」と考える割合が最も高かったのは肉用牛肥育で14%、低かったのは畑作物と養鶏でゼロだった。水田農業や花きは5%、施設園芸は3%にとどまった。
政府は昨年11月、輸出目標達成に向けた実行戦略を策定したが、輸出の拡大には同戦略に沿った十分な支援策とともに、農家の意欲喚起も求められそうだ。
調査は、農業者を中心とした本紙の農政モニター1133人を対象に昨年12月中下旬、郵送で実施。756人から回答を得た。
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2021年01月17日
豪州と米国 市民農園ブーム コロナ禍契機に 食材自給 注目集める
新型コロナウイルス禍を契機に、海外で市民農園が注目されている。物流が混乱しても自給自足をすれば食材調達が可能だからだ。政府支援が加わり、今後はさらに拡大しそうだ。オーストラリアと米国の事例を紹介する。
オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州。広さ5000ヘクタールに上る自然保護地区ウエスタンシドニーパークランズで、市民農園が徐々に増えている。州の委託で保護地区を管理するウエスタンシドニーパークランズ財団がコロナ禍対策として推し進めていることが背景にある。
同財団は、2006年に地区内の13・2ヘクタールを農地に転用し始めた。16都市から訪れた市民がキュウリなどを栽培し、同州シドニー市内の直売所などで販売。コロナ禍の拡大以降はスーパーの品ぞろえが悪かったことがあり、近隣の消費者が直売所に殺到。売り上げは通常の20倍に増えた。同財団は今後、さらに52ヘクタール分を拡大する予定だ。
食品システムに詳しい同国メルボルン大学のレイチェル・キャリー教授は「自然災害や供給チェーンの混乱に備え、都市は保険政策として都市農業能力を高めるべきだ」と指摘する。
米国東部のシアトル市では、主に黒人と先住民族の間で都市農業が流行。失業者や生活困窮者にとっての自給自足手段として広がっている。
きっかけは、黒人差別抗議運動(ブラック・ライブズ・マター=BLM)を主導する社会活動家のマーカス・ヘンダーソン氏が、小さな野菜畑を作ったことだ。畑は、20年6月に機動隊とデモ隊の衝突が頻発していたキャピトルヒル自治区(デモ隊が自治を宣言した地域)の公園内にある。同氏はBLM問題を巡り警察や機動隊と激しくぶつかり合う暴力的な日々を問題視し「殴り合いよりも、差別や失業で苦しむ黒人を助けるのが優先だ」と行動を起こした。
同氏に賛同する黒人農家らが「本格的に都市住民のための農業を興そう」と集まり、シアトル市からキング牧師記念センター敷地内の空き地を正式に借り入れた。農機具や資材はインターネットで市民から寄付を募って購入。「自分の食料を自分の手で作ろう」をスローガンに、人種差別やコロナ禍で失業した生活困窮者の参加を呼び掛けた。現在、約1ヘクタールの作業に430人以上が参加しているという。
収穫する農産物は、参加者の家族に加え、市内の生活困窮者にも配る予定だ。同氏は「シアトル市内では9人に1人が生活に困窮している。まず畑の周辺7000戸の困窮家庭のうち約半数の3500戸に提供できる量は収穫できるはずだ」とみている。
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2021年01月17日
農地特区 特例2年延長決定 「全国展開前提でない」 担当相
政府は15日の国家戦略特区諮問会議で、兵庫県養父市で認めている企業による農地取得の特例について、8月末の期限を2年間延長する方針を決めた。2021年度中に特例のニーズや問題点を調査し、全国展開の可否について調整する。坂本哲志地方創生担当相は同日の閣議後記者会見で、調査は「全国展開を前提にしたものではない」と述べた。期限の延長を盛り込んだ同特区法改正案は、18日召集の通常国会に提出する。
書面開催した同特区諮問会議で政府は、同市の特例措置について、「ニーズと問題点の調査を特区区域以外においても来年度中に実施し、その結果に基づいて全国への適用拡大について調整し、早期に必要な法案の提出を行う」との方針を提示した。……
2021年01月16日
農業分野の技能実習生 1~3月2000人予定 人手不足を懸念 入国停止で農相
野上浩太郎農相は15日の閣議後記者会見で、1~3月に来日を予定していた農業分野の外国人技能実習生らが約2000人に上ると明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、技能実習生を含む外国人の新規入国は停止中で、生産現場の人手不足が問題となる可能性がある。野上農相は影響を注視しつつ、代替人材の確保を後押しする考えを示した。
昨年12月末時点で今年1~3月に来日予定だった技能実習生らの数を、都道府県やJAなどに聞き取ってまとめた。……
2021年01月16日

「BUZZ MAFF」 Jリーグとコラボ動画 若者に農業PR 農水省
農水省は15日、公式ユーチューブチャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」で、サッカーJリーグと連携した動画の投稿を始めた。地域の農業への理解や関心を深めてもらうため、Jリーグチームの行う農林水産業の取り組みを同省職員の「ユーチューバー」が発信する。第1弾としてJ2の松本山雅FC(長野県)、J3の福島ユナイテッドFC、ガイナーレ鳥取との動画を投稿した。
「ばずまふ」は、職員の個性や発想を生かした動画を投稿し、農業への関心が薄い若者を含めて広く情報を発信している。 現在、動画の総再生回数は620万回以上。スポーツチームと連携してPRに取り組むのは初めて。
松本山雅FCと連携した動画では、黒ずくめのばずまふユーチューバーが登場。休耕地で地域の住民と連携して1トンの青大豆を生産する取り組みを紹介し、青大豆を使った新しいスイーツの開発に挑戦する。
選手が生産した農産物を販売する「農業部」がある福島ユナイテッドFCとの動画では、選手が自ら作った米をPRする。東北農政局の職員が米を食べ、自作の応援ソングも披露する。ガイナーレ鳥取と連携した動画では、中国四国農政局の職員が、チームの職員と地域の休耕地を利用して芝生を生産・販売する取り組みについて語り合う。
今後も、全国のチームと連携した動画を配信していく。同省は「農業に取り組むクラブは他にもある。地域の農業への理解が深まれば」(広報評価課)と期待を寄せる。
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2021年01月16日
作業安全週間を設定 2月16日から11日間 農水省
農水省は15日、2月16日から26日までを「農林水産業・食品産業 作業安全推進Week」にすると発表した。期間中に安全対策に関するシンポジウムや情報交換の会議などを集中して企画。農業者らに、作業の安全対策は人ごとではなく自分事と捉え、安全・人命が全てに優先することを認識してもらう。同省が短期間に作業安全に関するイベントを集中させて続けるのは初めて。
農林水産業と食品産業の業界全体で安全対策を進めてもらう狙い。……
2021年01月16日
雪被害、20道府県6766件 支援「適切に対応」 農相
野上浩太郎農相は15日の閣議後記者会見で、大雪によって岩手、秋田、新潟など20道府県から、農業用ハウスなどの施設6766件の被害報告を受けていると明らかにした。農相は「引き続き現地との連絡を密にしながら被害状況を把握し、農林水産業への影響を最小限にするよう、適切に対応したい」と述べた。
農水省によると、15日午前7時半現在で、ハウス6359件、農業用倉庫215件、畜産用施設192件の被害報告を受けた。……
2021年01月16日