TPP発効半年 参加国から輸入攻勢 牛肉 カナダ、NZ急増 ブドウ 関税撤廃で最多
2019年07月01日

環太平洋連携協定(TPP)が発効してから6月30日で半年を迎えた。農畜産物の関税は削減が進み、牛肉や豚肉、乳製品、ブドウなど幅広い品目で輸入が増えた。食肉ではカナダ、果実ではオーストラリアなどの新興産地が発効を機にシェアを高め、日本市場への攻勢を強めている。
TPPは昨年12月30日に発効し、4月に発効2年目に突入した。
財務省の貿易統計によると、1~5月の牛肉輸入量は前年同期比5%増の24万5720トン。このうちTPP参加国のカナダ産が82%増の1万3900トン、ニュージーランド(NZ)産が56%増の8506トン。38・5%だった関税が26・6%に削減された。
オーストラリア産は現地相場の高騰で4%減の11万8641トン。TPPから離脱した米国は関税面で不利だが、安定した需要で6%増の9万8014トン。国別シェアはカナダやNZなど新興国が計4ポイント増の12%と拡大した一方、オーストラリアは5ポイント減の48%。米国は前年並みの40%だった。
豚肉も増えた。1~5月は4%増の39万4913トン。TPP参加国のカナダ、メキシコ、チリ、オーストラリアの4カ国産は計13万1621トンで、前年同期を7%上回った。豚肉の関税は、高価格帯にかかる従価税が4・3%から発効1年目に2・2%、2年目の4月からは1・9%に下がった。輸入業者は「コストが下がった」と利点を話す。米国産は2%減の10万5860トンと落ち込んだ。
乳製品はチーズが10%増の13万265トン。オーストラリア産が4%、NZ産は6%増えた。
果実は関税が即時撤廃した品目が増えた。1~5月のブドウ輸入量は2万6728トン。統計がある1988年以降で最多だった18年同期を35%上回った。チリ産が49%増、オーストラリア産が22%増。輸入業者は「輸入物は種がなく皮ごと食べられ、棚持ちが良い」とみる。キウイフルーツは24%増の4万1376トン。9割を占めるNZ産の関税6・4%が撤廃されたことなどで大きく増えた。東京都内の輸入業者「関税削減幅が大きい品目を中心に、スーパーなどが定番商品で扱い始めている」と指摘する。
TPPは昨年12月30日に発効し、4月に発効2年目に突入した。
財務省の貿易統計によると、1~5月の牛肉輸入量は前年同期比5%増の24万5720トン。このうちTPP参加国のカナダ産が82%増の1万3900トン、ニュージーランド(NZ)産が56%増の8506トン。38・5%だった関税が26・6%に削減された。
オーストラリア産は現地相場の高騰で4%減の11万8641トン。TPPから離脱した米国は関税面で不利だが、安定した需要で6%増の9万8014トン。国別シェアはカナダやNZなど新興国が計4ポイント増の12%と拡大した一方、オーストラリアは5ポイント減の48%。米国は前年並みの40%だった。
豚肉も増えた。1~5月は4%増の39万4913トン。TPP参加国のカナダ、メキシコ、チリ、オーストラリアの4カ国産は計13万1621トンで、前年同期を7%上回った。豚肉の関税は、高価格帯にかかる従価税が4・3%から発効1年目に2・2%、2年目の4月からは1・9%に下がった。輸入業者は「コストが下がった」と利点を話す。米国産は2%減の10万5860トンと落ち込んだ。
乳製品はチーズが10%増の13万265トン。オーストラリア産が4%、NZ産は6%増えた。
果実は関税が即時撤廃した品目が増えた。1~5月のブドウ輸入量は2万6728トン。統計がある1988年以降で最多だった18年同期を35%上回った。チリ産が49%増、オーストラリア産が22%増。輸入業者は「輸入物は種がなく皮ごと食べられ、棚持ちが良い」とみる。キウイフルーツは24%増の4万1376トン。9割を占めるNZ産の関税6・4%が撤廃されたことなどで大きく増えた。東京都内の輸入業者「関税削減幅が大きい品目を中心に、スーパーなどが定番商品で扱い始めている」と指摘する。
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輸出3カ月前年割れ 10月農林水産物 目標達成遠く
10月の農林水産物・食品の輸出額は751億円で、前年同月比で5・9%減った。前年同月を下回るのは3カ月連続。2019年の累計(1~10月)は前年同期比0・8%増の7396億円。水産物が落ち込み、緑茶やリンゴなど主要果実も振るわず、伸びが鈍化している。「19年に1兆円」という政府目標の達成は厳しい。
財務省が発表した貿易統計を基に日本農業新聞が調べた。
農林水産物の輸出は例年、収穫期の秋以降、年末にかけて増える傾向にある。しかし、政府目標1兆円達成には残る2カ月で合計2600億円以上の実績が必要。単月で1000億円を超えたことは近年なく、このままのペースでは達成は難しい状況だ。
輸出額の1~10月の累計を品目別に見ると、水産物は、6%減の2313億円と落ち込んだ。輸出先で他国産と競合したり、サバなどで相場が良い国内向けに販売を振り向ける動きがあった。
日本食の人気を背景に、牛肉は25%増の235億円と好調が続いている。日本酒も8%増の192億円、サツマイモは23%増の13億円と伸び幅は大きい。リンゴは8%減の82億円、ブドウは4%減の28億円と落ち込んだ。緑茶も2%減の119億円となった。
輸出額が伸び悩む背景には、最大の輸出先・香港の政情不安定化や、韓国との関係悪化などもあるとみられる。
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2019年12月08日

農水補正予算5849億円 政府・与党 和牛倍増へ奨励金
政府、与党は12日、2019年度農林水産関係補正予算案を固めた。総額は5849億円で、18年度に比べ152億円(2・5%)減。このうち来年1月に発効する日米貿易協定などの国内対策費は3250億円。目玉となる和牛生産の倍増に向けた「増頭奨励金」は、中小規模の農家への支援を手厚くするため、飼養頭数が50頭未満の繁殖農家に1頭当たり24万6000円を交付する方針だ。
増頭奨励金の交付単価は、50頭以上の農家が同17万5000円、都府県の乳用後継牛が同27万5000円とする。
奨励金を含む和牛・乳用牛の増頭・増産対策には243億円を計上。日米協定での牛肉輸出枠の拡大や中国への輸出解禁をにらみ、35年までに和牛生産を30万トンに倍増させる計画だ。
畜産地帯での機械や施設の整備を支援する畜産クラスター事業には409億円を充てる。規模要件を緩和し、中小農家の規模拡大を後押しする。
産地生産基盤パワーアップ事業(旧・産地パワーアップ事業)は348億円。流通拠点やコールドチェーンの整備に加え、中小・家族経営の継承の円滑化や堆肥を使った全国的な土づくりにも支援する。
担い手育成対策などには64億円を計上。40歳前後の就職氷河期世代に就農準備交付金を支給する他、50代の就農研修にも助成する。
棚田地域振興法の制定を受け、棚田・中山間地域対策に282億円を盛り込む。
公共事業費は2991億円。うち農地の大区画化・汎用化に270億円、水田の畑地化などに566億円を計上する。台風19号などの復旧対策は公共、非公共合わせて2144億円。
危害分析重要管理点(HACCP)に対応した輸出施設整備などに108億円、豚コレラ(CSF)やアフリカ豚コレラ(ASF)などの家畜伝染病予防費に57億円、先端技術を活用したスマート農業技術の開発・実証プロジェクトに72億円を計上する。
農林水産関係補正予算案は同日、農水省が自民党農林合同会議に示し、了承された。政府は13日にも補正予算案を閣議決定し、年明けの通常国会に提出する。
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2019年12月13日
問題 次の文はある国会議員の雑誌への寄稿である
問題 次の文はある国会議員の雑誌への寄稿である。Aは誰か。「政府答弁のうちでも、総じてA首相の答弁が不親切で、しかも抽象的である。歴代首相でこれくらい答弁に誠意を欠き~」▼答えは吉田茂。議員は河野一郎である。寄稿では、衆院予算委員会での質問にまともに答えようとしなかった吉田を批判。経緯はこう。1953年7月、河野は、米国への日本の貸金約200億円がいつまでも返済されないことを「(政府の)怠慢」と非難した。お金は、米国が朝鮮に送った物資の代金。日本が立て替えた。吉田は交渉中だと反論し、詳しい説明を避けた。『忘れられない国会論戦』(中公新書)で知った▼「無い無い尽くし」のまま臨時国会が9日、閉幕した。日米貿易協定は、野党が求めた資料は出ず熟議もなしで承認。「桜問題」は名簿がなく、政権に疑惑を晴らす気もなく持ち越した。安倍首相は一問一答の委員会から雲隠れした▼河野は寄稿にこうも記した。「最高審議機関である国会が、茶番的な論議や政府のごまかし答弁ですむようなことは(中略)国政が腐敗するもと」▼河野は当時、鳩山一郎と共に吉田と凄(すさ)まじい権力闘争中だった。とはいえ、農相や副総理を歴任した自民党の大先輩。その言葉を首相はどう受け止めるか。
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2019年12月10日
「月とスッポン」は非常に違いがあることの例えだが、月がスッポンの成長促進剤だとしたらどうだろう
「月とスッポン」は非常に違いがあることの例えだが、月がスッポンの成長促進剤だとしたらどうだろう▼月のリズムで餌を与えると早く育つことを、自動車部品大手トヨタ紡織新領域開拓部の田畑和文グループ長に教わった。卵からかえって3カ月後のスッポンに、24時間ごとと24・8時間ごとに餌を与え3カ月間育てた。すると前者では体重が3倍に、後者では4・1倍に▼24・8時間は月が次の日に同じ方角に見えるまでの時間。地球の周りを月は地球の自転と同じ方向に回っている。なので1日よりも長く時間がかかる。月が潮の満ち引きを起こす力「起潮力」が影響しているのではないかという▼月のリズムとは起潮力の変化の周期。植物工場でのレタスの実験でも月のリズムに合わせて光を調節すると収量が増えた。起潮力の影響は車のドアの材料となる植物の生育を早める研究で発見した。名古屋大学と共同研究も行う。持続的な食料増産など「社会貢献」(田畑さん)を目的にしている▼内閣府は、農作業の完全自動化など挑戦的な技術を「ムーンショット(月を撃つ)」と名付け研究開発を後押しする。温室効果ガスの排出削減策を話し合うCOP25がスペインで開催中だ。“月を生かす”といった、地球にやさしい技術を目指す研究にも期待したい。
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2019年12月07日

みんな二度見!? オート三輪 走る広告塔 茨城県常陸太田市の椎名理さん
茨城県常陸太田市で「てるちゃんぶどう園」を営む椎名理さん(59)の愛車は、昔懐かしいマツダのオート三輪。手直ししてピカピカに磨き上げ、現役で農作業に使っている。車体にはぶどう園のPRロゴを入れ、走る広告塔としても役立てている。
椎名さんは1・3ヘクタールの園で「巨峰」や「常陸青龍」「シャインマスカット」を栽培するブドウ農家。若い時から車好きで20代前半にMG・ミジェットを手に入れて古い車の面白さに目覚め、今では倉庫にオールドカー10台ほどを所有する。
オート三輪を手に入れたのは10年ほど前。県内の倉庫に眠るオート三輪があると知人に紹介され見に行くと、珍しいマツダのT1500だった。1971年製で比較的状態も良く、トラックなので農業に使えると思い、譲ってもらった。
手を入れて乗り始めたが、古い車両のため故障はつきもの。部品もなく親しい修理工場に頼んで直してもらっている。維持費は掛かるが苦にはならない。運転していると、対向車から注目され、工事の人が手を休めて見入ることも度々。駐車していると、懐かしがって話しかけてくる中高年も多いという。
そこで、「てるちゃんぶどう園」のロゴを入れた。それからはさらに目立つようになり、ブドウ園の名も知られるようになったという。今は「おいしいよ常陸太田のぶどう」や「だいすき常陸太田」のロゴも入れ、地域のPRにも一役買う。
椎名さんは「道の駅にわざと寄ったりして楽しんでいる。大切に乗り続けていきたい」と話している。
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2019年12月10日
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花の水揚げ正確に 絵文字17種配送ラベルに印字 オークネット・アグリビジネスが開発
インターネットによる花き取引事業を展開するオークネット・アグリビジネスは、切り花の特性に適した水揚げ方法を示すピクトグラム(絵文字)を開発した。同社によると、花き業界では初の試み。商品の配送ラベルに印字し、ひと目で理解できるようにする。知識や経験を問わず、小売店の従業員が誰でも正しい水揚げができるようにし、消費者への長持ちする花の提供につなげる。
切り花に水を吸わせる水揚げは、品質維持に欠かせない工程。水や湯を使う、茎を割る・たたく・焼くなど、さまざまな方法がある。品目や品種、スプレイ咲きかスタンダード咲きかなど、商品ごとに方法も異なる。
同社は、衣服の洗濯表示マークに着想を得て、絵文字開発に着手。尾崎進社長は「正しい方法を分かりやすく伝えれば、誤った方法による商品ロスや、店員の教育負担も減る」と、ニーズを語る。
ひと目で方法を連想できる絵文字を、17種類作った。同社が扱う約140商品を対象とし、商品配送ラベルに印字する。同じく印字した2次元コード(QRコード)を読み取れば、湯揚げにかける時間、水揚げ後の水管理など、より詳しい情報を得られる。
千葉県の生花店「U・BIG花倶楽部(くらぶ)」は、絵文字を参考にブバルディアで水揚げを実験。従来は空切りしていたが、茎を焼いた上で湯に漬ける方法に変えた。「水の含み具合に差が出たためか、葉に張りが出た」と効果を実感する。
開発に当たり、札幌市で生花店「フルーロン花佳」を経営し、各地で品質管理の講習を開く薄木建友氏が監修を務めた。薄木氏は「農家も小売り側の水揚げの仕方が分かれば、出荷時の管理の参考になる」と、産地にも有益な情報となることを期待する。
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2019年12月13日

無洗米「SAKURA RICE」世界に 業務向けで高評価 全農子会社
農畜産物を輸出するJA全農の子会社、JA全農インターナショナルは、業務需要に開発したブレンドの無洗米「SAKURA RICE」(サクラライス)の輸出に乗り出した。世界で日本食の注目が高まる中、業務用を開拓、輸出拡大を狙う。日本産や無洗米による調理作業の効率化が売り。日本食店が多くあるシンガポールで今年から、複数のチェーン店が同ブランドの扱いを始め、手応えを得ている。
これまで同社の輸出米は家庭用主体だったが、業務需要に応えるブランドとして「サクラライス」を企画した。同社によると①国産のブランド価値②品質③無洗米による作業性の効率化──を売りに営業している。品質が一定化し、多くの用途に使えるようにブレンド米とした。東南アジア数カ国で販売している。
シンガポールの海鮮丼チェーン店「哲平食堂」では、現地法人の全農インターナショナルアジアの提案を受け、全7店舗で10月からサクラライスを使う。量は毎月約1トン。山下哲平オーナーシェフは「粒がしっかりして時間がたっても冷えてもおいしい」と強調する。山下シェフが展開するうなぎの専門店など、他店舗でも今後使っていく予定だ。
哲平食堂のフランチャイズを手掛けるYCPダイニングシンガポールのショーン・タン代表は「在住日本人も当地の客も満足している。無洗米は店員の作業が楽で、現地で手に入れにくいので助かる」と評価する。
シンガポールでは哲平食堂の他、日本式の焼き肉レストラン「牛角」9店舗でも、サクラライスの使用が始まった。
全農インターナショナルは「米の輸出を増やすには業務需要を取り込むことが有効。全農のルートを生かし、青果など他品目とセットで販売拡大も期待できる」とサクラライスを起爆剤に、輸出拡大につなげる考えだ。
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2019年12月12日

[活写] こんがりきつね色
北海道滝上町の農家6戸がつくる「滝上町七面鳥生産組合」で、クリスマス向けの薫製作りが最盛期を迎えている。
各農家が7カ月ほど育てた七面鳥の半身を、ハーブや塩などが入った調味液に約2週間漬けて、蒸した後に桜のチップで約3時間いぶす。作業場には、きつね色に仕上がった七面鳥が並ぶ。
同組合の農家は畑作や酪農が経営の中心で、約30年前に冬の仕事として七面鳥の薫製を作り始めた。今では町の名物になり、全国から注文が入る。今年は今月6日に作り始め、18日までに約1800個を仕上げる予定。
組合長の畑作農家、佐々木渉さん(54)は「脂がのっておいしく仕上がった。クリスマスに家族で楽しんで」と勧める。値段は1キロ3000円。(富永健太郎)
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2019年12月12日

新米販売が苦戦 10月支出額前年割れ 消費増税影響か
新米の販売が苦戦している。消費動向が分かる総務省の10月の家計調査で、米の1世帯当たりの支出額が3年ぶりに前年を下回った。米離れに加えて、消費税増税による節約志向が影響したためとみられる。現状の小売価格は前年並みだが、米卸やスーパーは売れ行きの動向を見極めながら、価格の居所を探っている。
小売 動向探る
10月の家計調査では1世帯(2人以上)当たりの米の支出額は2944円と、前年同月を3・9%(実質)下回った。米の支出が年間で最も多くなる時期に販売が鈍化した。
消費税増税前の駆け込み需要の反動によって、消費支出全体が同5・1%減と11カ月ぶりに前年割れする中、軽減税率が適用される米でも減少が見られ、増税による節約志向が影響したもようだ。
米穀機構の11月調査でも、前年と比べた現状の販売数量の指数は、小売りや中食・外食業者が42で基準点の50を下回った。「減った」と回答する業者が多かった。
現在、スーパーなどの小売価格は前年からほぼ横ばいの展開となっている。全国のスーパー約1000店の販売データに基づく農水省公表の精米5キロの小売平均価格(10月)は、前年同月比0・5%安の2031円。秋田「あきたこまち」は1・8%安の1987円、新潟・一般「コシヒカリ」は1・4%高の2202円など小幅な上げ下げはあるが、前年並みの水準が中心だ。
米卸やスーパーの対応はまちまちだ。「購入数が増えにくいので、単価を上げて売り上げ増を目指す」(東京都内の中堅スーパー)との声がある一方「これ以上の価格上昇は消費を低迷させる」と特売で集客を狙う動きがある。「安くしても、大幅には販売が伸びない」(大手卸)との見方もある。
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2019年12月11日

機能性食品 有機JAS… 日本規格を世界へ新たに推進プラン GFVC官民協
農水省やJA全農、食品関連企業で構成するグローバル・フードバリューチェーン(GFVC)推進官民協議会は、食品産業の海外展開を加速させる新たな推進プランを策定した。2020年度から5年間の計画で、機能性食品や有機JASなど日本独自の食品認証の仕組みを海外に普及させることが柱。日本の食品企業が現地で販売しやすくし、日本産の食品や農林水産物の輸出拡大につなげる。
14~19年度の推進プランでは、海外市場の調査などを盛り込んでいた。今回の新プランでは、9の国・地域別に実践する具体的な取り組みを示した。協議会に参画する企業の海外進出数を現状の1・6倍(200社)に拡大する目標も掲げた。
新プランによると、企業進出数が多いタイやフィリピンなどでは、現地で高まる消費者の健康志向への対応を強める。現地に進出した日本企業が、日本と同基準の機能性食品を流通しやすくするため、輸出先国へ、日本に準ずる基準の整備などを働き掛ける。ベトナムなどでは、農業生産工程管理(GAP)や有機JASなど日本型の規格や制度を普及して、日本食品の高付加価値化を進める。
オーストラリアでは、日本と季節が逆転する地理的条件を生かし、日本で栽培されているアスパラガスやメロンなど青果物の生産を拡大。アジア圏など第三国への農産物の通年供給を推進する。
このほか、①複数企業が連携した海外進出計画の策定②日本食材の現地での加工や料理として提供③スマート農業技術の海外展開──で取り組みを支援する。
同省は「日本企業の海外進出支援は、農産物自体の輸出拡大にとって重要」(国際部)と説明。同省では来年4月、政府の農林水産物輸出の司令塔組織となる輸出部が設置されるなど、農産物輸出拡大に向けた動きが加速化している。
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2019年12月11日

機能性に魅力 実需が国産要望 もち麦1年で3・5倍
もち性大麦の2019年産生産量が8000トンを超え、前年産に比べ3・5倍と急増した。健康食品としての認知度が高く、国産志向もあり市場が拡大。機能性成分が多く、各地の気候に適した新品種の導入が進み、実需の要望で産地が形成されつつある。急増してもなお需要が供給を上回っている状況で、国産の増産への期待が高まっている。
19年8000トン超 需要伸び品種充実 産地追い風
農水省がまとめた大麦の農産物検査結果(10月末時点)によると、もち麦の検査数量は8581トン、18年産実績を6000トン上回った。
県別で最も多いのは福井県の2357トン。機能性成分が多い新品種「はねうまもち」を導入し、約800ヘクタールを作付けた。4JAが取り組み、大手精麦メーカーに仕向ける。「メーカーの強い要望に応じ、従来の大麦品種を転換した」とJA福井県経済連。交雑や異品種の混入を防ぐため、産地を限定する。
次いで増やしたのが福岡県。九州が栽培適地の「くすもち二条」を前年の4倍、1243トン生産する。うち、JA全農ふくれんは県内の精麦メーカーの求めで試験的に約70ヘクタール栽培した。20年産はこれを上回る注文があるが、「他の麦類の要望もあり、そうは広げられない」(全農ふくれん)と悩ましい現実もある。
宮城県はもち麦「ホワイトファイバー」を前年の11トンから764トンに拡大。実需の関心が高く、県は種子の生産体制を整え一般栽培に踏み切った。今後も増やす計画だ。
もち麦の普及は、県が奨励品種にして、産地品種銘柄として流通させることが欠かせない。産地品種銘柄の採用は、この3年間で6県から18道県に拡大した。大半が、健康機能性が多い品種への転換だ。ビール麦産地の栃木県は、ビール麦から県育成品種「もち絹香」に替えた。「健康志向で今後の需要が見込まれるため」(生産振興課)だ。
もち麦品種は、3年前の5品種から8品種に増えた。国内最大面積となった「はねうまもち」は農研機構が開発、17年に品種登録を出願した。寒冷地向きで、新潟県、北海道でも展開中。暖地向けは「くすもち二条」「ダイシモチ」がある。各地の気候に適した品種開発も、産地化を後押ししている。
農林水産政策研究所企画広報室の吉田行郷室長は「需要に対応するには産地がまとまって品種を統一したり、十分な生産量を確保したりする必要がある」と指摘する。
もち麦は食物繊維の一種、βグルカンを豊富に含む。腸内環境改善や血中コレステロール低減に効果があるとされる。国内流通量に占める国産の割合は1割に満たない。
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2019年12月08日
輸出3カ月前年割れ 10月農林水産物 目標達成遠く
10月の農林水産物・食品の輸出額は751億円で、前年同月比で5・9%減った。前年同月を下回るのは3カ月連続。2019年の累計(1~10月)は前年同期比0・8%増の7396億円。水産物が落ち込み、緑茶やリンゴなど主要果実も振るわず、伸びが鈍化している。「19年に1兆円」という政府目標の達成は厳しい。
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農林水産物の輸出は例年、収穫期の秋以降、年末にかけて増える傾向にある。しかし、政府目標1兆円達成には残る2カ月で合計2600億円以上の実績が必要。単月で1000億円を超えたことは近年なく、このままのペースでは達成は難しい状況だ。
輸出額の1~10月の累計を品目別に見ると、水産物は、6%減の2313億円と落ち込んだ。輸出先で他国産と競合したり、サバなどで相場が良い国内向けに販売を振り向ける動きがあった。
日本食の人気を背景に、牛肉は25%増の235億円と好調が続いている。日本酒も8%増の192億円、サツマイモは23%増の13億円と伸び幅は大きい。リンゴは8%減の82億円、ブドウは4%減の28億円と落ち込んだ。緑茶も2%減の119億円となった。
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2019年12月08日
担い手サミット開幕 きょうまで静岡
第22回全国農業担い手サミットinしずおかが5日、静岡市で始まった。認定農業者ら2000人が参加し、先端技術の導入や、食料自給率の向上、農業の持続的発展などに取り組むとしたサミット宣言を採択した。6日まで。
県、JA静岡中央会などで組織する実行委員会と全国農業会議所が主催。寛仁親王妃信子さまが「農業に携われる方々が絆を深め、活力ある農業の実現に向けて力強く発展することを願います」とあいさつされた。
大会会長を務める静岡県の川勝平太知事は「農業を担う人材不足は全国的な課題になっている」と述べ、スマート農業の開発や普及を進めていくことを伝えた。
県内の担い手4人がメッセージを発表。直接販売に取り組み、経営改善したり、豚の人工授精液生産を続けたりする今後の経営や農業振興への思いを訴えた。事例発表では担い手らが、6次産業化や農産物の海外輸出について議論を交わした。
全国優良経営体の表彰があり、加藤寛治農水副大臣が農林水産大臣賞を受賞した12経営体に賞状を贈った。
6日は、県内7地域の38会場で現地視察と情報交換会を開く。次回の開催は茨城県。
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2019年12月06日

豚肉在庫が最多水準 9月時点3割増に 輸入多く国産苦戦
豚肉の在庫量(輸入含む)が過去5年の最多水準に積み上がり、国産相場の不安材料になっている。中国でまん延するアフリカ豚コレラ(ASF)の影響で国際相場に不透明感が増していることや、大型貿易協定で関税が下がったことで、食肉メーカーや商社が輸入品の調達を強めているためだ。国産は加工向けの下位等級を中心に需要を奪われ、苦戦を強いられている。
農畜産業振興機構のまとめによると、9月時点の推定期末在庫量は、前年同期比3割増の21万8205トン(国産品が同13%増の2万351トン、輸入品は同32%増の19万7854トン)。近年の在庫量は約17万トン前後で推移しており、過去5年で最多水準だ。
豚肉の国際相場は、世界最大の豚肉消費国である中国でのアフリカ豚コレラの拡大で、引き合いが強まった欧州産を中心に高値基調が続いている。大手食肉メーカーは「これからもう一段上げる可能性があり、高騰する前に調達を強めている」と明かす。
在庫過多の輸入品に押され、国産品にも影響が出ている。「国産、輸入ともに、裾物の在庫が多く、国産は加工筋などで需要を奪われている」(大手メーカー)という。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入品の関税が下がったことも、国産品の価格面での競争力に影を落とす。
国内生産量(と畜頭数)は、今年度上半期の累計が約788万頭で前年同期比ほぼ横ばい。しかし消費は鈍く、在庫が積み上がる状況だ。
全国指標となる東京食肉市場の29日の豚枝肉価格は1キロ459円(上物平均)で前年並み。一方、格付けで最も低い「等外」は300円台半ばで6月以降、前年を下回る取引が目立つ。
「10月以降、出荷量が例年以上に多くなっている」(市場関係者)など、この先は不安材料が多い。豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通も始まった。現状、目立った混乱は見られないが、取引動向には注視が必要だ。
大手食肉メーカーは「安価な輸入品に押され国産が苦戦する状況は長期的に続くだろう」と見通す。
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2019年12月02日

特産エダマメビールに加工 秋田・大館市 観光地域づくり法人発案
秋田県大館市特産のエダマメを副原料に使ったクラフトビール「秋田枝豆ビール」が登場した。地元の日本版観光地域づくり法人(DMO)秋田犬ツーリズムが発案し、同市産のエダマメを原料に供給。委託醸造を経て、酒類販売業のルーチェ(東京都大田区)が地元スーパーや首都圏のデパートなどで11月から販売している。同法人は同市産エダマメの知名度のアップと消費拡大を狙う。
同法人は市内の農家が朝に収穫したエダマメを仕入れ、ペースト状に加工し「田沢湖ビール」(秋田県仙北市)に供給し、ビールに醸造してもらう。後味にエダマメの風味が残るのが特徴だ。ラベルには、秋田犬がエダマメを食べているイラストを採用した。
同法人の大須賀信事務局長は「大館のエダマメは知名度がまだ低く、取引価格が伸び悩んでいる。ビールを通してブランド力を高めたい」と期待する。イベントで先行発売した際には、用意した500杯が完売するなど関心を集めた。
1瓶(330ミリリットル)700円(税別)。大館駅前の観光施設「秋田犬の里」や市内のスーパーで販売している他、東京・新宿のデパートでも扱う。今年度は5700本を販売する予定。飲食店向けに、たる詰めでの出荷も検討している。
秋田県では近年、転作作物としてエダマメの生産が盛ん。8~10月には、東京都中央卸売市場で1位の取扱量を誇る。
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2019年12月01日