犬は人類のパートナー 鳥獣被害の救世主に 木之内農園会長 木之内均

木之内均 氏

 先日、JA共済連宮崎から講演依頼を受け、イベントに参加した。JA共済が「介助犬」の育成・普及をサポートしていることを知り、さらに、社会福祉法人日本介助犬協会と、実際に介助を受けられている方の話を聞くことや、デモンストレーションを見ることができた。盲導犬や聴導犬はよく聞くが、介助犬を見るのは私も初めてだった。

 介助犬は身体障害者の社会参加と自立を目的に、日常の手伝いをしてくれる。デモンストレーションで見せる犬たちの動きや指示に対する的確な判断と反応は、まさしく人にとってのパートナーだと感じた。テレビでは病院勤務のファシリティードッグ(セラピードッグ)の紹介もしていた。
 

本来の役割は…


 的確な動きを見せる犬たちを見ながらふと思った。犬は今や人にとって心を癒やしてくれるペットとしての役割が大半となっている。だが、人類のパートナーとして進化してきた本来の役割はなんだったのか。犬たちは以前「番犬」と呼ばれていたのではないか。今もその役割を果たす犬がいないわけではないが、日本ではごく一部になってしまったように感じる。

 そこで思うのである。こんなに頭が良く、人に従順で、昔から人類のパートナーであった犬たちを鳥獣害対策用に調教できないものだろうかと。

 私は昔、南米の牧場でカウボーイをしていた。カウボーイにとって馬と犬は仲間であり同志だ。原野の中で群れている牛の中から目的の一頭を追い出すのは、まさしく犬の役割。次に阿吽(あうん)の呼吸で手綱を引くわけでもなく目標の牛に対して投げ縄を掛けやすい距離まで追い掛ける馬。ここぞでカウボーイは縄を放つ。2チームが一体となった動きで一人が牛の首に縄を掛けると、もう一人が後ろ足に掛ける。馬はくらに縛り付けたロープを2方向から引き続け、牛が動かないようにする。カウボーイは馬から飛び降りて牛を押さえつけながら直接治療をしたり焼き印を押したりする。その間、犬は群れの他の牛が人や馬に近づかないように追い続ける。こんな経験を思い出しながら、介助犬の素晴らしい動きに見入っていた。
 

強い縄張り意識


 この人を補助する犬たちは、電車にもバスにも乗る。劇場にも買い物にも人と一緒に行く。だが、決して人に危害は加えない。犬は元々縄張り意識が強い。途上国に行くと、犬も鶏も豚も放し飼いだが、犬は決して自分の家の家畜は襲わない。それどころか外敵からわが家の家畜を守るのだ。

 日本で犬は法律上放し飼いができない。だが、きちんと調教した上で放せば、膨大な予算と手間をかけても増えるばかりの鳥獣害の救世主になるはずだ。農産物の番犬として、「鳥獣害防止犬」を作り出せないものだろうかと感じている。

 きのうち・ひとし 1961年神奈川県生まれ。九州東海大学農学部卒業後、熊本・阿蘇で新規参入。(有)木之内農園、(株)花の海の経営の傍ら、東海大学教授、熊本県教育委員を務め若手育成に力を入れる。著書に『大地への夢』。 
 

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