20年産米で全中試算 生産見通し最大716万トン 作付け転換へ施策要求
2019年11月14日

JA全中は13日、2020年産主食用米生産量見通しを707万~716万トンとする試算を明らかにした。21年6月末の民間在庫の適正水準などから算出した。19年産の生産量に比べ11万~20万トン減る。19年産の作況指数が100だった場合と比べると、17万~26万トン減らす必要がある。全中はこうした試算も背景に、飼料用米や麦・大豆などへの確実な転換につながる施策を求める。
同日、自民党の農業基本政策検討委員会で示した。10月15日現在の作況指数99に基づくと、19年産の生産量は727万トン。これを基に計算すると、20年6月末民間在庫量は189万トンとなる。
20年産生産量見通し707万~716万トンのうち、707万トンは、21年6月末民間在庫量が適正水準とされる180万トンになるよう設定。716万トンは年間10万トンの需要が減るトレンドから推定し、同年産需要量の見通しと同水準とした。
19年産が10月15日現在の作況指数99のままであれば、19年産に比べ11万~20万トンを減らすことでこの生産量を達成できる。ただ、作付面積を意識し今年よりどれだけ減らす必要があるか理解を広めるため、作況指数100の場合との比較も試算した。作況指数100の場合、19年産の生産量は733万トンで、20年産は17万~26万トン減らす必要がある。
翌年産の主食用米生産量の見通しは、11月下旬に農水省が決めている。その年の適正生産量として、各都道府県などが「生産の目安」を設定する際などに参考にする。
全中は同日、水田政策について同党に要請した。水田農業対策委員会の高橋正委員長が「一番重要なのは、主食用米の需要が年々減少する中、来年産に向けていかに戦略作物などへ作付転換を図るかだ」と指摘。水田活用の直接支払交付金の予算確保や、麦・大豆の生産振興などを求めた。
同日、自民党の農業基本政策検討委員会で示した。10月15日現在の作況指数99に基づくと、19年産の生産量は727万トン。これを基に計算すると、20年6月末民間在庫量は189万トンとなる。
20年産生産量見通し707万~716万トンのうち、707万トンは、21年6月末民間在庫量が適正水準とされる180万トンになるよう設定。716万トンは年間10万トンの需要が減るトレンドから推定し、同年産需要量の見通しと同水準とした。
19年産が10月15日現在の作況指数99のままであれば、19年産に比べ11万~20万トンを減らすことでこの生産量を達成できる。ただ、作付面積を意識し今年よりどれだけ減らす必要があるか理解を広めるため、作況指数100の場合との比較も試算した。作況指数100の場合、19年産の生産量は733万トンで、20年産は17万~26万トン減らす必要がある。
翌年産の主食用米生産量の見通しは、11月下旬に農水省が決めている。その年の適正生産量として、各都道府県などが「生産の目安」を設定する際などに参考にする。
全中は同日、水田政策について同党に要請した。水田農業対策委員会の高橋正委員長が「一番重要なのは、主食用米の需要が年々減少する中、来年産に向けていかに戦略作物などへ作付転換を図るかだ」と指摘。水田活用の直接支払交付金の予算確保や、麦・大豆の生産振興などを求めた。
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農水補正予算5849億円 政府・与党 和牛倍増へ奨励金
政府、与党は12日、2019年度農林水産関係補正予算案を固めた。総額は5849億円で、18年度に比べ152億円(2・5%)減。このうち来年1月に発効する日米貿易協定などの国内対策費は3250億円。目玉となる和牛生産の倍増に向けた「増頭奨励金」は、中小規模の農家への支援を手厚くするため、飼養頭数が50頭未満の繁殖農家に1頭当たり24万6000円を交付する方針だ。
増頭奨励金の交付単価は、50頭以上の農家が同17万5000円、都府県の乳用後継牛が同27万5000円とする。
奨励金を含む和牛・乳用牛の増頭・増産対策には243億円を計上。日米協定での牛肉輸出枠の拡大や中国への輸出解禁をにらみ、35年までに和牛生産を30万トンに倍増させる計画だ。
畜産地帯での機械や施設の整備を支援する畜産クラスター事業には409億円を充てる。規模要件を緩和し、中小農家の規模拡大を後押しする。
産地生産基盤パワーアップ事業(旧・産地パワーアップ事業)は348億円。流通拠点やコールドチェーンの整備に加え、中小・家族経営の継承の円滑化や堆肥を使った全国的な土づくりにも支援する。
担い手育成対策などには64億円を計上。40歳前後の就職氷河期世代に就農準備交付金を支給する他、50代の就農研修にも助成する。
棚田地域振興法の制定を受け、棚田・中山間地域対策に282億円を盛り込む。
公共事業費は2991億円。うち農地の大区画化・汎用化に270億円、水田の畑地化などに566億円を計上する。台風19号などの復旧対策は公共、非公共合わせて2144億円。
危害分析重要管理点(HACCP)に対応した輸出施設整備などに108億円、豚コレラ(CSF)やアフリカ豚コレラ(ASF)などの家畜伝染病予防費に57億円、先端技術を活用したスマート農業技術の開発・実証プロジェクトに72億円を計上する。
農林水産関係補正予算案は同日、農水省が自民党農林合同会議に示し、了承された。政府は13日にも補正予算案を閣議決定し、年明けの通常国会に提出する。
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2019年12月13日

新米販売が苦戦 10月支出額前年割れ 消費増税影響か
新米の販売が苦戦している。消費動向が分かる総務省の10月の家計調査で、米の1世帯当たりの支出額が3年ぶりに前年を下回った。米離れに加えて、消費税増税による節約志向が影響したためとみられる。現状の小売価格は前年並みだが、米卸やスーパーは売れ行きの動向を見極めながら、価格の居所を探っている。
小売 動向探る
10月の家計調査では1世帯(2人以上)当たりの米の支出額は2944円と、前年同月を3・9%(実質)下回った。米の支出が年間で最も多くなる時期に販売が鈍化した。
消費税増税前の駆け込み需要の反動によって、消費支出全体が同5・1%減と11カ月ぶりに前年割れする中、軽減税率が適用される米でも減少が見られ、増税による節約志向が影響したもようだ。
米穀機構の11月調査でも、前年と比べた現状の販売数量の指数は、小売りや中食・外食業者が42で基準点の50を下回った。「減った」と回答する業者が多かった。
現在、スーパーなどの小売価格は前年からほぼ横ばいの展開となっている。全国のスーパー約1000店の販売データに基づく農水省公表の精米5キロの小売平均価格(10月)は、前年同月比0・5%安の2031円。秋田「あきたこまち」は1・8%安の1987円、新潟・一般「コシヒカリ」は1・4%高の2202円など小幅な上げ下げはあるが、前年並みの水準が中心だ。
米卸やスーパーの対応はまちまちだ。「購入数が増えにくいので、単価を上げて売り上げ増を目指す」(東京都内の中堅スーパー)との声がある一方「これ以上の価格上昇は消費を低迷させる」と特売で集客を狙う動きがある。「安くしても、大幅には販売が伸びない」(大手卸)との見方もある。
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2019年12月11日

「森林サービス」創出 健康需要で産業化へ 林野庁
林野庁は、森林空間を活用した「森林サービス産業」の創出に乗り出した。森林空間そのものを活用し、これまでの木材生産・供給だけでなく、健康需要などを見据えて森林体験や商品開発で新たなビジネスを生み出し、山村地域に新たな雇用と収入を生み出すのが狙い。どれだけ多くの民間団体・企業の参入を促し、定着させることができるかが鍵となりそうだ。
同庁は、健康志向の高まりに加えて、企業が従業員の健康管理を考える「健康経営」の考え方が広まっていることや、インバウンド(訪日外国人)需要が伸びていることに着目。「健康」「観光」「教育」の観点で森林を活用して、新たな需要を取り込むのが「森林サービス産業」の狙いだ。子育て層を対象にした森林体験、企業の研修・保養利用などを想定する。
具体策を検討するため、同庁は有識者らでつくる森林サービス産業検討委員会(委員長=宮林茂幸東京農業大学教授)を設置。①エビデンス(効果)②情報共有③香イノベーション──の専門部会で議論に着手。19年度中に報告書を取りまとめ、20年度以降、モデル育成を本格化させる。
香イノベーション部会では、スギやヒノキなどを精油の原料として有望視。新たな市場形成を見据え、精油の効用やアロマテラピーでの使用状況などを調査する。
エビデンス部会は、森林浴などが健康に与える効果のデータを集積し、事業化を後押しする。今年度は研究成果などの情報を集める。
情報共有部会では、森林サービス産業に関心を持つ企業や団体、自治体などを引き合わせるプラットフォームの創設を構想。同庁は「Forest Styleネットワーク」を発足した。12月3日時点で63の企業や団体、地方公共団体などが加入。今後、新たな事業が生まれるきっかけを生み出す交流の場としたい考えだ。
同庁は「民間や自治体と協力し、モデル地域の育成を進めていく」(森林利用課)としている。
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2019年12月15日

青パパイア スピード収穫 露地で4カ月越冬不要 メーカーが品種提案
健康食材として農家が直売所で販売する他、JAが産地化を進めている青パパイア。本州を中心に、果実ではなく野菜のように食べる栽培が広がる中、種苗メーカーが冬越ししない1年完結の栽培モデルの普及に乗り出した。成長の早い多収品種を育てて冬が来る前に収穫し終えるもので、露地栽培が難しかった本州でも産地化に向けた動きが活発化しそうだ。(北坂公紀)
本州産地化に期待
パパイアは中南米原産で、複数年にわたり実を付ける多年生植物。黄色く熟した実は果実として食べられる他、熟す前に収穫した青パパイアはサラダなどで食べられる。特に青パパイアは、ビタミンやポリフェノールといった栄養成分、ダイエット効果があるとされる酵素を豊富に含み、健康食材として注目されている。
一般的に、パパイアの収穫は定植の翌年以降に本格化する。ただ熱帯原産で凍害に弱く、気温が0度を下回ると枯死するため、国内では越冬が栽培上の大きな課題だ。そこで、種苗メーカーの丸種(京都市)は、パパイアを1年完結で栽培するモデルを示した。
この栽培で鍵を握るのが品種だ。同社では成長が早く多収の6品種を提案。苗木の定植1年目で1本当たり約30個の収量を実現し、単年での栽培を可能にした。
栽培モデルでは5月ごろに30センチ程度の苗木を定植。4カ月後には樹高が最大2メートルに達し、1個1キロ前後の実が収穫できる。実は秋にかけて断続的になり、本州では完熟しないため青パパイアとして利用する。収穫後、冬場になると木は低温で枯死し、さらに春先まで放置すれば腐敗が進み、土にすきこむことができる。
同社は「越冬が不要だと、従来は九州南部に限られていた露地栽培が、関東以西で可能になる」と説明。「越冬するための設備投資や燃料費が必要なハウス栽培に比べ、生産コストを大幅に抑えられる。手軽にパパイア栽培ができる」と強調する。
販売初年の2019年の苗木の販売量は約5000本。20年には大きい果実が収穫できる品種「フルーツタワー」を発売して品ぞろえを充実させ、販売を強化する。
機能性注目 生産が拡大
農水省によると、データがある直近の16年の国内生産量は487トンで、前年から倍増。過去10年で最多となった。県別では果実の生産が中心とみられる鹿児島県が364トンと最大で、全体の7割強を占めている。
果実の産地振興や消費拡大に取り組む中央果実協会の朝倉利員審議役は「パパイアは獣害や病害が少なく、生産に取り組みやすい。近年は機能性成分に注目が集まっており、消費は増加傾向にある。葉を茶に加工するなど、利用の幅も広がっている」と期待する。
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2019年12月13日
生誕180年を迎えた近代絵画の祖、セザンヌの秀作がすごい
生誕180年を迎えた近代絵画の祖、セザンヌの秀作がすごい。今、フランス印象派の名品が来日中である▼英国が世界に誇る印象派の殿堂、コートールド美術館。あすまで東京都美術館で特別展を開いている。めったに国外に出ない傑作が多い。特にセザンヌの作品は故郷・南仏題材の物を中心に充実している。最晩年の未完の作「曲がり角」に驚く。画家の一徹さと執念が漂う▼来年、没後130年のゴッホ。オランダからパリに来て印象派に出会い、光と色彩の画風に変わる。死の前年の作「花咲く桃の木々」は穏やかで優しい。うろこ雲の空は点描画家スーラの影響か。農民の日々の営みを温かさを込め描く。浮世絵に刺激を受けたゴッホは、この作品にまだ見ぬ日本への憧憬(しょうけい)も重ねた▼印象派と言えば、モネと共に有名な〈幸せの画家〉ルノワール。今年で没後100年となり各地で特別展が相次ぐ。「靴紐(ひも)を結ぶ女」は、独特のふっくらとした女性が印象的で全体が赤みがかった色彩に。最後の情熱が絵に反映したのだろう。今回の特別展の目玉は印象派の父・マネの最晩年の傑作「フォリー・ベルジェールのバー」。絵には幾多の仕掛けや大胆な試み。印象派が花開く“起爆剤”となる▼圧巻の作品群に〈眼福〉の字が浮かぶ。そして感動が募る。
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2019年12月14日
農政の新着記事
飼料米複数年に助成 10アール1・2万円、転作促す 農水省
農水省は2020年産米から、飼料用米や米粉用米の複数年契約に10アール当たり1万2000円の助成措置を新設する方針を固めた。取り組みに応じて、都道府県に対し、産地交付金を追加配分する。主食用米の需給安定に向け、転作拡大の柱となる飼料用米の作付けを促す。一方、19年産まであった多収品種への追加配分(同1万2000円)は廃止を含めて見直す方針だ。……
2019年12月15日

「森林サービス」創出 健康需要で産業化へ 林野庁
林野庁は、森林空間を活用した「森林サービス産業」の創出に乗り出した。森林空間そのものを活用し、これまでの木材生産・供給だけでなく、健康需要などを見据えて森林体験や商品開発で新たなビジネスを生み出し、山村地域に新たな雇用と収入を生み出すのが狙い。どれだけ多くの民間団体・企業の参入を促し、定着させることができるかが鍵となりそうだ。
同庁は、健康志向の高まりに加えて、企業が従業員の健康管理を考える「健康経営」の考え方が広まっていることや、インバウンド(訪日外国人)需要が伸びていることに着目。「健康」「観光」「教育」の観点で森林を活用して、新たな需要を取り込むのが「森林サービス産業」の狙いだ。子育て層を対象にした森林体験、企業の研修・保養利用などを想定する。
具体策を検討するため、同庁は有識者らでつくる森林サービス産業検討委員会(委員長=宮林茂幸東京農業大学教授)を設置。①エビデンス(効果)②情報共有③香イノベーション──の専門部会で議論に着手。19年度中に報告書を取りまとめ、20年度以降、モデル育成を本格化させる。
香イノベーション部会では、スギやヒノキなどを精油の原料として有望視。新たな市場形成を見据え、精油の効用やアロマテラピーでの使用状況などを調査する。
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情報共有部会では、森林サービス産業に関心を持つ企業や団体、自治体などを引き合わせるプラットフォームの創設を構想。同庁は「Forest Styleネットワーク」を発足した。12月3日時点で63の企業や団体、地方公共団体などが加入。今後、新たな事業が生まれるきっかけを生み出す交流の場としたい考えだ。
同庁は「民間や自治体と協力し、モデル地域の育成を進めていく」(森林利用課)としている。
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2019年12月15日

農地減少 政府想定上回る 荒廃、転用2倍ペース 対策見直し必須
耕作放棄や農地の転用による農地面積の減少が農水省の想定を上回って進んでいる。2015~19年の5年間に発生した荒廃農地は7万7000ヘクタール、農地転用は7万5000ヘクタールに上った。それぞれ同省が想定した2・5倍、1・5倍のペースで増えた。農地の再生が一定程度進んだものの、新たな荒廃農地の発生や転用に追い付かない状況だ。
農地は1961年をピークに一貫して減少し、2019年は439万7000ヘクタールまで落ち込んだ。政府が15年に策定した食料・農業・農村基本計画に掲げる25年の確保目標440万ヘクタールを既に下回った。
19年までの5年間の減少面積は12万1000ヘクタールに及ぶ。同省が変動要因を分析したところ、5年間で新たに発生した荒廃農地と農地以外に転用された面積は、合計で15万2000ヘクタールに上る。一方、再生された農地面積は3万2000ヘクタールにとどまり、減少要因が増加要因を大きく上回った。
基本計画では、荒廃農地と農地転用を合計で8万1000ヘクタールにとどめつつ、2万7000ヘクタールの農地を再生することで、農地の減少を5万4000ヘクタールに抑える想定だった。
同省は、中山間地域等直接支払制度や多面的機能支払制度を使って農地保全に取り組んだ地域は耕作放棄が抑制され、農地の再生も想定以上に進み、政策が効果を発揮したとみる。一方、「高齢化の進展や担い手不足などで新たな荒廃農地の発生が大きく見通しを上回った」(農村振興局)と認める。
現行の対策だけでは、農地減少が十分に食い止められていないことが明らかになった格好。将来にわたり農地を確保するため、より踏み込んだ対応が求められそうだ。
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2019年12月14日
台風19、21号 農林水被害3180億円 営農再開に全力 農相
10月に東日本を中心に猛威を振るった台風19号の被害から2カ月がたつ中、農林水産関係被害額が3180億8000万円に上ることが農水省の調べで分かった。被災地では依然、営農再開のめどが立たない農家も少なくない。江藤拓農相は13日の閣議後会見で、現場の不安に向き合い、復旧に全力を尽くす考えを改めて示した。
江藤農相は「雪のシーズンが近づいてきていることもあり、来年のことについて、現場には大変な不安がある」との認識を示した。その上で「さまざまな手を使って、自治体との連絡を密にして農地の復旧に全力を尽くしていきたい」と強調した。
被害額3180億8000万円は12日現在で、台風21号に伴う大雨などの被害も含む。内訳は、農作物が149億2000万円、農業用ハウスが28億5000万円、農業・畜産用機械が71億4000万円、農地が771億1000万円、用水路などの農業用施設が1219億9000万円、林野関係が789億9000万円、水産関係が130億1000万円などとなっている。
一方、9月に関東地方などを襲った台風15号の被害額は5日現在で814億8000万円。これに19号などの被害額を合わせると3995億6000万円に達し、西日本豪雨の3409億1000万円を超える。
台風19号では、各地で河川の決壊が相次ぎ、水田や果樹園に土砂が堆積するなどの被害が広範囲に発生。政府は11月に復旧支援策を取りまとめた。
特に被害の大きいリンゴには、大規模な改植を余儀なくされる農家に対し、最大で10アール当たり150万円を助成する対策を打ち出した。ただ、被災地では業者の人手不足などで復旧作業が思うように進んでいないところもあるという。
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2019年12月14日

農水補正予算5849億円 政府・与党 和牛倍増へ奨励金
政府、与党は12日、2019年度農林水産関係補正予算案を固めた。総額は5849億円で、18年度に比べ152億円(2・5%)減。このうち来年1月に発効する日米貿易協定などの国内対策費は3250億円。目玉となる和牛生産の倍増に向けた「増頭奨励金」は、中小規模の農家への支援を手厚くするため、飼養頭数が50頭未満の繁殖農家に1頭当たり24万6000円を交付する方針だ。
増頭奨励金の交付単価は、50頭以上の農家が同17万5000円、都府県の乳用後継牛が同27万5000円とする。
奨励金を含む和牛・乳用牛の増頭・増産対策には243億円を計上。日米協定での牛肉輸出枠の拡大や中国への輸出解禁をにらみ、35年までに和牛生産を30万トンに倍増させる計画だ。
畜産地帯での機械や施設の整備を支援する畜産クラスター事業には409億円を充てる。規模要件を緩和し、中小農家の規模拡大を後押しする。
産地生産基盤パワーアップ事業(旧・産地パワーアップ事業)は348億円。流通拠点やコールドチェーンの整備に加え、中小・家族経営の継承の円滑化や堆肥を使った全国的な土づくりにも支援する。
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2019年12月13日

「スマート」上積みへ 20年度予算 17日にも大臣折衝
政府・与党は12日、2020年度農林水産関係当初予算の詰めの調整に入った。転作助成や農地集積など重要施策の財源規模が固まる中、当初予算総額の前年度超えを目指し、「スマート農業実現」「輸出力強化の体制整備」の関連予算額を17日に予定する大臣折衝事項に設定した。予算の上積みに向けて、江藤拓農相の手腕が問われる。
農水省は同日、自民党農林合同会議で、20年度予算について、財務省との折衝状況を報告。転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金は当初予算比で165億円減の3050億円、人・農地プラン実質化や農地中間管理機構(農地集積バンク)による農地集積・集約の執行見込み額は212億円とした。
大臣折衝は、17日に江藤農相が麻生太郎財務相と面会する。会合に出席した江藤農相は「災害もあり、一連の経済連携協定も出そろう中、(農家に)希望を持ってもらえるよう先頭に立って頑張る」と決意表明した。
党農林・食料戦略調査会の塩谷立会長は当初予算案の内報額を「枝ぶりのいい内容」とした上で、大臣折衝事項について江藤農相に「しっかり交渉していただきたい。激励を申し上げたい」とエールを送った。JA全中の中家徹会長は「現場実態に合ったスマート農業、輸出拡大の加速化を実現してほしい」と期待を寄せた。
大臣折衝事項のうち、「スマート農業実現」については、中山間地域など条件不利地の担い手、労働力不足解消に向けて、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの先端技術を現場で導入・実証するための予算獲得を重視する。
輸出力強化に向けて同省は、農林水産物・食品輸出促進法に基づき、今後設置される政府の司令塔組織による輸出証明書の申請・交付システムの構築などを進めたい考え。欧米への牛肉輸出には危害分析重要管理点(HACCP)の認定が必要なことを踏まえ、HACCPに対応した施設など輸出拠点の整備も課題に挙げ、予算の確保を目指す。
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2019年12月13日

イノシシ捕獲に手引 環境、農水省 ウイルス拡散を防止
環境省と農水省は、豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)対策として野生イノシシの捕獲に関する防疫措置の手引を作成した。国がイノシシ捕獲の手引を作成するのは初めて。野生イノシシの捕獲を強化する必要がある一方で、捕獲でウイルス拡散の恐れがあることから、狩猟者に防疫の手法を徹底する。
手引では、これまで農水省がイノシシ捕獲に関して通知していた文言や特定家畜伝染病防疫指針などを踏まえ、捕獲作業の事前準備から帰宅後の対応までを写真と共に掲載した。
現地に到着し、わなの設置や見回りをする前に手袋や長靴を装着するなど、作業ごとのポイントを解説。手袋は二重に装着し、内側のゴム手袋は洋服の袖口を覆うように着用するなど詳細に注意を呼び掛けた。
防護服や靴底の泥落としに使うブラシなどの持ち物チェックリストも併記している。環境省は「イノシシを捕獲する中で、豚コレラが拡大してしまうことを防ぐため、あらゆる捕獲に関する防疫手法をまとめた。手引を参考に、各地域で必要な防疫対策をしっかり行ってほしい」(野生生物課)と呼び掛ける。
手引は、アフリカ豚コレラが発生した際にも活用できる。
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2019年12月13日
来年度予算 農水2・3兆円台で調整 閣僚折衝で上積みへ
政府は11日、2020年度の農林水産関係予算を、19年度と同水準の2兆3000億円台とする方向で調整に入った。農水省は閣僚折衝で上積みし、総額の前年度超えを目指す。転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金は、当初予算比で165億円減の3050億円の方向。一方、19年度農林水産関係補正予算の総額は5849億円とする方針が固まった。……
2019年12月12日

集送乳調整金5銭上げ 畜酪対策 増頭へ関連事業拡充
政府・自民党は11日、2020年度畜産・酪農対策を決めた。焦点の加工原料乳生産者補給金は、1キロ当たり8円31銭で19年度と同額に据え置き、輸送コストの上昇を受け、集送乳調整金は同5銭上げの2円54銭とした。合計も同5銭増の10円85銭で決着。増頭といった生産基盤の強化などに向け、農畜産業振興機構(ALIC)事業の関連対策も同25億円増の320億6000万円に拡充した。
主に北海道向けの補給金は、加工に仕向けた量に応じて支払う。……
2019年12月12日

基盤強化プログラム 生産拡大へ数値目標
政府は10日、安倍晋三首相をトップとする農林水産業・地域の活力創造本部の会合を開き、輸出向けの産地形成や担い手不足などに対応する「農業生産基盤強化プログラム」を決定した。輸出拡大をにらんだ和牛生産の倍増や水田農業の高収益作物産地500カ所創設などの新たな数値目標を設定。2019年度補正予算や20年度予算に達成に向けた経費を計上するが、万全の財源が確保できるかが問われる。
和牛倍増 加工野菜の需要奪還
安倍首相は会合で「安心で安全な日本の農林水産物が世界に羽ばたくチャンスは今後ますます広がっていく」と強調。輸出拡大や先端技術を活用したスマート農業の推進には「しっかりとした生産基盤が欠かせない」との認識を示した。
江藤拓農相は、同日の閣議後会見で「最重要課題の生産基盤強化を目的に取りまとめた」と説明。現在検討している補正予算を含め「切れ目のない対策を講じていく」との考えを示した。
プログラムは11本の柱で構成。日米貿易協定による牛肉輸出枠の拡大などを念頭に「さらなる輸出拡大」を真っ先に掲げた。来年4月に農水省に輸出の司令塔組織を設置し、輸出拡大に向けた新戦略を定める。
和牛生産は、米国や中国への輸出拡大を見込み18年の14万9000トンから35年に30万トンまで増やす目標を設定。具体策として繁殖雌牛の増頭奨励金や和牛受精卵の利用促進などを打ち出した。
水田農業対策では、輸入品が多い加工・業務用野菜の国産化や輸出向けの果樹栽培を念頭に、主食用米から高収益作物への転換を促し、25年度までに500産地の創出を目指す。高収益作物を導入する産地に水田の基盤整備や機械・施設の導入、販路開拓などを一体的に支援する方針だ。
「中山間地域や中小・家族経営も含め、幅広く生産基盤の強化を図る」とも明記。24年度までに地域資源を活用して中山間地域の所得向上などに取り組む250地区を創出することも盛り込んだ。
他に、加工・業務用野菜の出荷量(直接取引分、18年度は98万トン)を30年度までに145万トンに拡大することや、25年までに担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することなども目標に据えた。
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2019年12月11日