夏目漱石が小説『三四郎』で〈燈火(とうか)親しむべし〉の表現を用いたように、涼しく夜が長い時季は読書に適している

 夏目漱石が小説『三四郎』で〈燈火(とうか)親しむべし〉の表現を用いたように、涼しく夜が長い時季は読書に適している▼最近2冊の新刊本に心を洗われた。俳人神野紗希さんの『もう泣かない電気毛布は裏切らない』(日本経済新聞出版社)は、自身の俳句を織り交ぜた初のエッセイ集である。故郷松山を思い起こしながら、子育てや季節の移ろいをつづった。「恋の代わりに一句を得たあのとき、私は俳句という蔦(つた)に絡めとられた」。俳人として目覚めた瞬間のみずみずしさが心を潤す▼もうひとつが『ふたりの桃源郷』(文藝春秋)。山口放送ディレクター佐々木聰さんが、山奥に住み続ける老夫婦を追い続けたドキュメント。TVや映画撮影時の裏舞台やエピソードを交え、老夫婦とその家族の葛藤を描いた。生きることの原点に触れ不思議な癒やしに包まれる▼日本では年間7万冊もの本が出版される。その中から「好書」を探し出すのは一苦労だが、出会った時は胸がときめく。読み進むに従って心が満たされる。本好きで元中国大使の丹羽宇一郎さんの言葉は至言である。「読書はその人の知的好奇心、そして『生きていく力』を培ってくれます」(『死ぬほど読書』幻冬舎新書)▼〈スマホ親しむべし〉では、秋の夜長がもったいない。
 

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