キャベツ平年5割安 暖冬で低迷長期化も

 キャベツの価格低迷が深刻だ。2月上旬(6日まで)の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は1キロ47円と平年(過去5年平均)比5割安。暖冬で各産地とも大幅に出荷を前倒しし、潤沢な出回りになっていることが要因だ。小売りは特売の頻度を増やすなど消費喚起に力を入れるが、「果菜類以外の野菜全般が潤沢で、早期の相場回復は難しい」(卸売会社)ため、低迷は長期化しそうだ。

 キャベツの相場は、昨秋から年末にかけて平年比1、2割安だったが、年明け以降、下げ幅が広がった。1月上旬が3割安、1月中・下旬が4割安。例年は寒さが厳しさを増す1月下旬以降に相場は上向くが、今年は回復の気配はない。

 卸売会社は「この時期にしては巻きが良いため大玉比率が高く、歩留まりも良い」と説明する。主産地が潤沢なことに加え「雪が少ないため寒冷地の残量が多く、首都圏の市場に出回っている」と厳しい販売環境を指摘する。

 主力産地のJAあいち経済連によると、現在の出荷ペースは日量で約10万ケース(1ケース10キロ)。平年の1・5~2倍の量が出る日もあるという。県内では例年、春先に出荷ピークを迎えるが、「肥大が進み収穫せざるを得ない。3週間以上生育が前進し、春先の分が出ている産地がある」(同)という。

 農水省がまとめた全国小売店の価格動向調査(1月27~29日時点)では、キャベツは1キロ124円と平年比42%安。前週比では5%安だった。レタスが平年の4割安、ダイコンが同3割安と、他の野菜も軒並み低迷している。

 小売りも販促を仕掛ける。関東で展開するスーパーは1月中旬から、1玉を89円(税別)や98円(同)と、100円を切る価格で販売するケースが目立つ。

 あるスーパーの仕入れ担当者は「野菜は通常、日替わりで広告に特売情報を載せるが、キャベツは1月に3日間通して広告を出した」と売り込みに懸命だ。しかし、単身世帯や核家族化の増加で 1家族当たりの消費量には限りがあり、特売をしているにもかかわらず、販売点数や販売金額は 伸び悩んでいるという。

 今後の見通しについて卸売会社は「寒波で入荷ペースは若干落ち着く可能性もあるが、相場浮上は難しい」と厳しくみる。

 
キャベツの相場が厳しい状況だが「品質は下げられない」と畑に向かう赤佐さん(左)とJA職員(愛知県田原市で)
 
 

「30年間で収入最悪」野菜安売り続けば──農家は淘汰 品質良いのに…現場苦境 キャベツ産地 愛知県田原市


 キャベツの価格低迷が長期化している。記録的な暖冬で生育が前倒しとなり、市場には各産地から出荷が集中。安い野菜を喜ぶ消費者がいる一方で、農家は採算割れの苦境に立たされている。キャベツの相場低迷に苦しむ愛知県の産地は今──。

 愛知県渥美半島。田原市は、冬のキャベツ作付面積が3800ヘクタールと、全国の筆頭産地だ。10月~翌年6月に全国に売り出す。暖冬の今シーズンは一時的に寒気が下りる日はあっても、年明けから春のような日が続く。

 5ヘクタールで作る赤佐敏生さん(56)は悲しそうな顔でキャベツを手に取る。栽培歴30年で最悪の収入になる見通し。消費税増税や機械などへの投資で支出は増え、収支は採算割れだ。手作業での収穫は中腰の状態が続き、この時期は休む暇もない。

 天候や畑によって施肥の量やタイミングを変え、より良い品質を追究してきた。「良いものを作る、農家はそれだけ。ブランド産地を守ることは、その地道な積み重ねの先にある。厳しい時も良い時もやることは同じ」と、赤佐さんは言う。だが昨秋から続く価格低迷に、心が折れそうになる。これほど長く低迷が続くことは異例だ。

 広がるキャベツ畑。同じように見えても畑ごとに農家の労苦やその家族の歴史がある。

 5・5ヘクタールで作る本田義晴さん(38)は高校卒業後、父の背中を見て就農した。父と同様、自分も3人の子どもはキャベツで稼いだお金で育てる決意だ。だが収入が激減する見通しの中、今後の展望が見いだせないでいる。「価格の乱高下は慣れているが今年は最悪。このままでは農業を続けられない人も相当出てくる」と険しい表情だ。

 トラクターやトラックに大規模に投資している。箱代などの資材費、さらに暖冬のため病害虫対策も必要で、支出がかさむ。「スーパーで1玉100円を切ると農家は食べていけない」と、本田さんは漏らす。

 糖度や大きさの違いが出にくく、産地で味が変わらないと思われがちなキャベツ。しかし海に面して霜の影響が少なく、若手農家が多く技術研さんを重ねてきたJA愛知みなみ産のキャベツは特別なのだという。

 JAの内田孝司青果担当は「何より甘い。品質も定評がある」と太鼓判を押す。高品質でも安値が続き苦悩する農家を見て、何かできないかと気をもむ日々だ。

 暖冬で各産地から荷が集中する。市場原理では、需要を供給が上回れば単価が安くなるのは当たり前だ。ただ、それで持続可能な食の提供がこの先も続けられるだろうか。赤佐さんは「安売り合戦が続けば農家は皆、淘汰(とうた)される」と危機感を募らす。

 一部だが、業務用の契約栽培やインターネットでの直売などで利益を上げる農家はいる。ただ、「農家全員が直売や契約栽培に向かえるわけではなく、契約は全体の2割が限界」(JA)だ。

 市内では多くの農家が消防など地域での役割を担う。国土を荒廃させず維持し景観や自然環境を保つのも農業の役割だ。一度失えば、取り戻すことは容易ではない。「野菜は工場でできるわけではない。自分たちの努力や思いを、少しでも消費者に知ってほしい。多くの若者が未来を描ける農業にしたい」。キャベツ畑から、赤佐さんが問い掛ける。
 

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは