学乳休止の深刻度 生乳需給の混乱を防げ

 新型コロナウイルス対策に伴う学校給食用牛乳休止で、酪農・乳業界全体に深刻な影響が出かねない。学乳供給網の寸断や乳製品の在庫拡大にもつながる。生乳需給の混乱を、官民挙げて最小限にとどめるべきだ。

 生産者団体や乳業などで構成するJミルクの川村和夫会長は、臨時総会で学乳休止などを踏まえ「予想を超えた事業リスクが生じる可能性がある」と指摘し、国に十分な政策的配慮を求めた。学乳休止は、行き場を失った生乳の処理以外にも課題を浮き彫りにした。生産、処理、販売という業界のミルク・サプライチェーン(供給網)全体の構図に支障が出かねない深刻な事態だ。

 学乳休止で当面、3月分の2万3000トンの新たな仕向け先を確保する必要がある。3月上旬の牛乳販売は前年対比を6%以上上回っている。家庭内需要が高まったためだ。中央酪農会議など官民挙げた酪農家応援の動きも牛乳消費を押し上げた。

 一方で、全国の6割近い生乳シェアを持つ北海道の動向が今後の需給全体の大きな鍵を握る。北海道の2月受託乳量は前年同期比6・8%増と高い伸び。こうした中で、学乳休止で道外移出分のキャンセルが発生し、道内乳業工場で相当量を加工向けに処理せざるを得ない状況だ。酪農家の生乳廃棄防止へ綱渡りの対応が続く。加工増加は酪農家の所得減となり、価格差補填(ほてん)が欠かせない。

 問題は、道内工場でバター、脱脂粉乳に処理した際の乳製品需給への影響だ。農水省は、2020年度輸入枠を製品換算でバター2万トン、脱粉4000トンと設定した。バターの需要は堅調だが、脱粉はヨーグルト消費が伸び悩み在庫が積み上がる。輸入枠公表の同省の1月の会見では「脱粉過剰で4000トンもの輸入を見直すべきではないか」との指摘が出た。Jミルク総会でも生産者団体から「乳製品の在庫積み増しで、生乳生産に水を差さないか」など懸念する声もあった。同省は5月に輸入枠を再検討するが、脱粉輸入を抜本的に見直すべきだ。

 学乳供給体制維持にも黄信号がともる。中心的に担う地方の中小乳業の損失額が、3月2日以降の2週間で約50億円に達する見込みだ。行き場を失った学乳分をスーパーなどに販売できるのは中小では限定的で、このままでは経営難に陥る可能性が高い。牛乳全体の消費底上げとは別問題である。新型コロナウイルス対策では、こうした実態も直視しなければならない。

 国産牛乳・乳製品の安定供給を担保するミルク・サプライチェーンは、生産、処理、販売の3層構造で成り立つ。逆に、このうちの一つにでも支障が出れば、生乳需給は混乱を招きかねない。1970年代以降の国内酪農の発展は、学乳導入が大きな契機となった歴史を持つ。学乳休止問題の深刻度を踏まえ、需給安定化への対策を拡充すべきだ。

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