豚肉持ち込み調査 対策強化 必要性明らか

 少なくとも年間17万人の訪日中国人が豚肉製品を違法に持ち込んでいる恐れがあることが、日本農業新聞と東京大学大学院、宮崎大学の共同調査で明らかになった。違法持ち込みはアフリカ豚熱の主要な侵入源となり得るため、許してはならない。持ち込み禁止の啓発や水際対策の強化が必要だ。

 豚肉製品の違法持ち込みに関する共同調査は、訪日中国人248人を対象に行った。その結果、2・8%が250グラム~2キロの豚肉製品を持ち込んでいた。この結果と、年間訪日中国旅行者数を基に推定すると、毎年約17万人が豚肉製品を中国から違法に持ち込んでいることになる。調査の回答者には観光客が多い。日本に住んでいる人や親戚に会いに来た人は持ち込んでいる可能性がさらに高く、実際の持ち込み者はもっと多いとみられる。

 国は、持ち込み禁止の啓発や水際対策を強化しているとはいえ、この結果を踏まえると侵入防止対策はまだまだ足りていない。国が把握する違法な持ち込み数は「氷山の一角」であることが、調査した研究者の共通した見解だ。

 共同調査した東京大学大学院の杉浦勝明教授は「アフリカ豚熱に汚染された豚肉が既に国内に侵入していることを前提にした対策が必要だ」と警鐘を鳴らす。アフリカ豚熱発生国からの全渡航者の荷物を検査することが現実的ではない中、国の水際対策と並行し、地域や農家はバイオセキュリティー(防疫対策)の強化にできることから着手することが大切だ。

 共同調査した宮崎大学獣医学科の関口敏准教授も「防疫への投資は長期的に見ると受胎率の向上などにもつながり、経営的なメリットは大きい」と指摘し、農家に防疫対策を一歩ずつ進める大切さを呼び掛ける。

 ただ、高度化する農水省の衛生管理基準に対し、農家から「畜舎を新しく建設するしか対応できない」「離農するしかない」といった声も出ている。防疫に向けた補助金の充実も欠かせないが、養豚農家個々の経営実態や規模に合わせて段階的に防疫を強化できるよう助言するといった支援も必要になる。

 政府は、アフリカ豚熱に感染した豚を予防的殺処分の対象に加えることを柱とした改正家畜伝染病予防法を、2月に施行した。アフリカ豚熱はワクチンがなく、経済的なダメージは深刻だからだ。世界の発生国各地が封じ込めに苦慮している。

 豚熱では発生農家や地方行政と同省とのコミュニケーションが、うまくいかない場面が多く見られた。同省からのさざまざな要請や指示に「地方は国の下請け機関ではない」(豚熱発生県の家畜保健衛生所の担当者)といった憤りの声も上がった。アフリカ豚熱対策では、こうした齟齬(そご)をなくし、連携・協働して対策を積み重ねよう。それが養豚業界全体の糧となる。

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