植物性の肉代替食 本物の良さアピールを

 植物原料の「食肉代替食品」が増えてきた。健康志向でカロリー摂取を抑えたいと考える消費者が増えていることが背景にある。加工技術が向上し、食感や風味が肉に近づいたことも要因だ。だが、そうした食品が身近になると肉食離れにつながりかねない。栄養価をはじめ肉食の意義をアピールすべきだ。

 大手食肉メーカーが今春、大豆を主原料とする代替食品をスーパーなどで売り出した。日本ハムは、ハムタイプやこんにゃくを使ったソーセージタイプなど5品を発売。伊藤ハムも大豆タンパク原料の唐揚げやメンチカツなど8品の販売を始めた。

 これまでも家庭、業務向けの製品はあったが、本格的に大手が参入したのは消費の伸びを見込んだからだ。スーパー側も「健康志向などのニーズが見込める」(マルエツ)と期待する。スーパーでは、ひき肉代わりに調理に使える大豆タンパク製品も売られている。

 代替食品がファストフード店でも食べられる時代だ。モスフードは大豆原料の「ソイパティ」のハンバーガーを各種そろえる。ロッテリアも昨年からソイパティのハンバーガーを朝食メニューに定着させた。

 世界ではベジタリアンが多い欧米を中心に代替食品が浸透した。日本能率協会総合研究所は2017年度に約800億円だった世界の市場規模が、23年度にはほぼ倍増すると予測する。

 懸念されるのは食肉消費への影響だ。先行して市販するメーカーは「健康管理のために時々購入するケースが多い。従来の肉製品と競合しない新たなカテゴリー」という。多くのスーパーでは豆腐売り場か食肉売り場で販売している。だが、専用売り場がある店舗ほど売り上げが好調で、肉や豆腐と異なる新しい食品分野として認知されているとみるわけだ。

 肉製品を敬遠していた消費者が手に取るか、「時々は肉製品から離れた食生活を」と考える消費者が購入する商品であれば“すみ分け”は可能だ。だが胃袋は一つ。片方の消費が増えれば、もう片方の消費が減ることはあり得る。畜産業界は、肉が人に不可欠な必須アミノ酸を豊富に含むなど栄養価が高いことや、食生活を豊かにする肉食文化の大切さを訴えるべきだ。

 また代替食品の主原料・大豆タンパクの原料である大豆は大半が輸入品で、コスト高になる国産を使うケースがまれなことも課題だ。消費増に伴い、豆腐のように差別化商品としての国産利用の拡大に期待したい。

 世界では将来の食料不足が懸念されている。国連は19年に77億人だった人口が50年には97億人になると予測。飼料も必要な食肉の生産効率は、大豆などを大幅に下回る。牛が出すメタンガスなどが地球温暖化の一因であることも確かだ。牛などの細胞を人工的に育てる「培養肉」の食利用や昆虫食などと共に代替食品の動向を注視し、多角的に対応を検討する必要がある。
 

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