水稲直播 経験共有し課題解決を

 水田経営の大規模化に伴い、省力に役立つ水稲直播(ちょくは)で新たな技術が増えている。「苗半作」というほど重視されてきた育苗・田植えを省くため気軽な導入は難しかった。しかし今では40ヘクタールの種まきを1日半で済ませ、収量も移植並みという経営がある。年1作だけに経験を共有し参考にしたい。

 水稲での直播栽培の全国の利用面積は3万3000ヘクタールと2・3%(2017年度、農水省調べ)にとどまる。背景の一つには、多様な技術のうち、自らの経営に合う手法を比較して選択することの難しさがある。

 農研機構・東北農業研究センターはその課題を解決しようと、質問に回答することで条件に適した直播の手法を提案するウェブサイト「直播選択ドットネット」を公開した。

 同サイトで扱う手法は「プラウ耕グレーンドリル乾田直播」「V溝乾田直播」「カルパーコーティングたん水直播」「鉄コーティングたん水直播」「べんモリたん水直播」「無コーティングたん水直播」の6種類。水田の水持ちや、出芽率と倒伏のどちらを優先するかなどによって、どの手法が良いかは変わってくる。

 また、育苗の代わりに種もみをコーティングする手間も、手法によって大きく異なる。従来からある「鉄」は被覆後に鉄が発熱し、冷ますための時間や広げるスペースが必要で、大規模経営では大きな手間が発生する。

 その点、「無コーティングたん水直播」(通称・かん湛=たん=!)は文字通りコーティングが不要で、2年前には代かきハローに取り付ける専用の種まき機が市販されたことから、19年には13県まで導入が広がった。催芽種子を酸素が多い表層にまくため、鳥害対策の鉄や酸素不足を解消するカルパーの被覆が不要で、1ヘクタールを1人でまくことができる。収量も秋田県の農事組合法人では「めんこいな」で10アール当たり650キロと移植栽培の700キロには及ばないものの、省力化とのバランスに満足しているという。

 愛知県では、発熱しない酸化鉄を利用する「鉄黒コート」で被覆した種子をブロードキャスターでまく手法により、1ヘクタールをわずか10分で済ませる。1トンの被覆は3時間程度。40ヘクタールの種まきは1日半で終わり、収量は「あきだわら」で10アール560キロと移植並みを確保した。

 乾田直播が急拡大したのは宮城県だ。土を機械で均平化した後、鎮圧して種まきをする「プラウ耕鎮圧体系乾田直播」が普及した。石巻地域では、09年に5ヘクタールだった主食用米の乾田直播は、19年に573ヘクタールまで増えた。鎮圧で漏水を防ぐため代かきが不要で、水田に水が来る前に作業できるため、田植えと作業期を分散できるのが特徴だ。

 安定した成果が出るには、どんな技術でも数年はかかる。効果的な他産地の工夫を参考にすることで、課題解決につなげたい。
 

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