米検査の改革方向 規制会議は考え改めよ

 政府の規制改革推進会議が、米を巡って農産物検査制度の抜本改革を検討している。既に日本農林規格(JAS)制度への一本化などの方向を提起。だが、生産・流通に混乱を招き、生産者の負担増につながる恐れもある。現場の実態や声を踏まえたとは言えない唐突で拙速な論議だ。考え直すべきだ。

 同制度は、第三者機関が全国共通の規格に基づいて等級を格付けすることで、現物を確認しなくても大量・広域に流通できるようにする仕組み。米では、検査を受けたものだけが消費者向け米袋に「産地・品種・産年」の3点を表示できる。

 同会議が同制度を巡る議論に着手したのは1月。3月10日の農林水産ワーキンググループ(WG)で、佐久間総一郎座長(日本製鉄常任顧問)が抜本的に見直したいとの意向を表明した。検討の方向として、①JAS制度への一本化も含めた抜本的な改革②農産物検査を受けない未検査米も3点表示を可能にすること──などを示した。

 理由として、検査手数料が生産者の負担になっていることや、米取引の変化などを挙げている。外食や食品メーカーなど実需者への直接販売が拡大する中、実需者の要望を満たせばよく、必ずしも農産物検査を受ける必要がないと説明する。

 制度を改善することに異論はない。農水省は、産地や流通、実需の関係者でつくる懇談会を設け昨年3月に論点を整理。検査の効率化などに向けて具体策の検討と見直しを進めている。

 だが同会議の検討方向には問題がある。JASは、食品と農産物の品質などを一定の範囲・水準にそろえたり差別化したりする規格で、民間事業者から認証を受けた生産者が認証マークを表示できる仕組みだ。農産物検査制度とは目的が異なる。生産者の負担が増える懸念もある。認証費用は既存の有機JASなどの場合で約20万~30万円。毎年更新し年間10万円ほどを支払う。一方、農産物検査の手数料は60キロ50~100円だ。

 未検査米の3点表示にも課題がある。偽装表示のリスクが高まり、買い手から生産者は品種などを証明するDNA検査を求められる可能性がある。農産物検査制度に基づく全国共通規格が廃止になれば、買い手ごとに異なる規格が乱立し、生産者は対応を迫られる恐れもある。

 WGの委員にも「あらゆる農業者が利用できる農産物検査制度は今後も必要」(山形県の庄内こめ工房の齋藤一志氏=議事録)など慎重論がある。農水省の懇談会も、現行制度の基本は堅持すべきとの判断を示した。

 同会議は検討結果を、6月以降にまとめる規制改革の答申に盛り込み、閣議決定に持ち込む意向とみられる。だが、現在の検討方向で結論を急ぐことは許されない。生産・流通実態をよく見て、幅広く声を聞き、農水省での検討の積み重ねも踏まえ、現場が望む改善に向けて足が地に着いた論議をすべきだ。
 

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