コロナ禍の運営…集まれば3密 子ども食堂 だんらん困難

車に詰め込んだ野菜を生活が困窮している人に届けようとする井上さん(岡山県倉敷市で)

 地域住民や自治体などが無料や低価格で子どもたちに食事を提供してきた「子ども食堂」が、新型コロナウイルスの影響で岐路に立たされている。憩いやだんらんの場としての意義があるが、感染防止対策が求められる中で、「3密」になりやすく食堂は開きにくいためだ。農家やJAとの連携も進み各地に広がるが、コロナ禍による孤立化や貧困家庭の発生など需要が高まっているものの、運営者らは再開できず苦悩の中にいる。
 

感染リスク 再開 まだ怖い


 東京都大田区のNPO法人「一期JAM(いちごジャム)」が運営する「いちご食堂」。レストランなどを拠点に、月に一度、食事とだんらんの場を提供してきたが、緊急事態宣言解除後も再開していない。赤ちゃんからお年寄りまで多世代が参加し、多いときは60人に上る同食堂では、感染者が増え始めた2月末から開催を中止。3月下旬から4月上旬までは弁当に切り替え延べ230人に1食500円以下で提供した。

 緊急事態宣言が発令された4月半ば以降は弁当の提供もやめた。理事長の山崎剛司さん(43)は「続けたい思いと感染の恐怖のはざまで悩んだ」と明かす。

 地元の町工場で働く山崎さんらスタッフ20人は、それぞれ本職を持ちながら食堂の運営に携わる。「地元の商店街を発展させるという意味でも、重要な役割がある。ただ、それぞれの本職を元に戻さないといけないし、都内の感染者が今も減らない状況で、再開には、慎重になっている」と山崎さんは悩み続ける。

 食堂はJAや地域の支えで開催してきた。野菜などを提供し続けてきたJA東京中央田園調布支店の浜田俊宏支店長は「できることがあれば協力したい気持ちは変わらない。再開したら野菜をまた提供したい」と見守っている。
 

高まる必要性 社会で仕組みを


 岡山県倉敷市。子ども食堂を運営してきた井上正貴さん(38)が農家から寄付されたタマネギやナスを車から取り出した。コロナ禍で仕事が減り困窮する世帯に食料を送り届けるためだ。

 2週間カップラーメンしか食べていない夫妻や、自分は食べずに家族の食事をやりくりする母親──。井上さんは「懸命に生きてもうまく回らない人たちがコロナ禍で増えた」と、SOSがあれば車で駆け付ける「フードシェアカー」に取り組む。

 3年前からボランティアのスタッフ有志らと「水島こども食堂ミソラ♪」を運営してきた井上さん。毎月、子どもだけでなく地域の高齢者らも招き、50人で手作りの料理を囲みながら交流を重ねた。空腹を満たすためだけではなく、大勢でわいわい話しながら食事を取るだんらんにこそ、意義を感じてきた。

 しかし3月以降、コロナの影響で、フードシェアカーなどに切り替えた。仕切りの設置や屋外での開催なども考えるが、「顔を合わせて話すことをためらいながら開くことが本当に良いのか」と悩む。

 一方で、コロナ禍で支援が行き届かない人がいることから、子ども食堂の必要性は高まっているとも感じる。普段はカウンセラーなどで生計を立てる井上さん。活動は全て手弁当だ。これからは「寄付する人」「支援する人」「助けてもらう人」という関係だけでなく、地域社会全体で支え合う仕組みを作りたいが、答えは出ていない。

 「食べ物を配るだけでは根本的な解決にならない。心の触れ合いが大切だと思う。子ども食堂を開いて良いか、どうするべきかまだ分からない」と模索している。
 

休止4割、運営1割


 NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえなどによると、こども食堂の全国の設置数は2019年は3718カ所。都会だけでなく農山村など各地に広がっている。4月に同センターがこども食堂を運営する35道府県の231団体に調査したところ、4割が休止し、従来通りの運営が1割、5割が弁当や食材配布など形態を変えて運営していた。

 同センターの湯浅誠理事長は「運営者が子ども食堂を再開したいと思ったときに後押しする支援が必要だ」と指摘する。

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