消えた仲間どこに 捜索阻む荒天 「一刻も早く」 熊本県津奈木町

土砂崩れ現場で行方不明の農家、丸橋貴孝さんと母のミチ子さんを捜索する警察官ら(9日、熊本県津奈木町で=富永健太郎写す)

 4日に猛烈な雨が降った熊本県津奈木町。大規模な土砂崩れがあった福浜地区では9日、警察や自衛隊が行方不明者の捜索に当たった。中晩かんの「デコポン」を作る農家の丸橋貴孝さん(58)と母のミチ子さん(83)が安否不明のまま。父の勇さん(85)は既に遺体で見つかった。親族は一刻も早い発見を祈り、現場の捜索を見守った。(金子祥也)

 

 

 丸橋さん一家の自宅があった場所に、警察官ら数十人が集まった。土砂につぶされ、家の屋根や外壁などの痕跡は全く残っていない。スコップですくった土砂をバケツリレーで運び、少しずつ慎重に土砂を撤去していく。

 断続的に降る雨で作業は思うように進まない。9日も午後から雨が降り始め、中断を余儀なくされた。捜索で汚れた服をまとった消防団の男性は「早く捜索を再開してあげたい」とこぼす。

 「そっちに丸橋さんは来ていないか」。前が見えないほどの豪雨が降り続いた4日朝、かんきつ農家の村上恭一さん(55)の携帯電話に着信があった。かけてきたのは地元の消防団員。電話口で出た名前は、同じ地区で「デコポン」を作る3歳年上の貴孝さんだった。

 土砂崩れで安否不明と聞き、村上さんは自宅を出て外を見た。貴孝さんの家も園地も、土砂につぶされて消えていた。

 村上さんによると、丸橋さん一家は阪神大震災をきっかけに、ミチ子さんの実家がある津奈木町に移り住んだ。「災害を避けて引っ越してきたのに、ここでも被災するなんて。やり切れない」。村上さんが小さな声で言った。

 丸橋さんは、真面目で曲がったことが嫌いな人柄。樹園地を緻密に管理することで知られていた。地元のJAあしきた果樹部会では支部長を務め、地域の農家の先頭に立っていた。農家の集まりで酒を酌み交わすこともあったという村上さんは「いまだに信じられない。早く見つかってほしい」と願う。

 もんぺ姿の女性が、離れた場所で捜索の様子を見守っていた。ミチ子さんの妹で、近所に住む松本チエ子さん(76)。自身も甘夏を作っていたので、おいの丸橋さんをかわいがっていた。「『両親が心配だから』と奥さんも持たず、デコポン一筋で頑張っていたのに……かわいそうで……」と涙をにじませた。

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