「食育菜園」で農に親しむ 自然敬い生産に感謝 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 「食育菜園」という言葉をご存じでしょうか。小中学校の子どもたちが野菜作りを通して心と体を育み、食や命、環境への理解を深める授業で、1994年、米国で地産地消(Farm to Table)運動を提唱したアリス・ウォーター氏により全米に広まりました。

 カリフォルニア州バークレー市にある荒廃した中学校で、食育菜園(エディブルスクールヤード)活動を始めたところ、教師や生徒から地域の大人たちまでが一致団結し、校内外の治安が改善したというのです。

 この食育菜園を日本で進めているのが、一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン(以下ESYJ)代表の堀口博子さん。2014年から東京都多摩市立愛和小学校の全学年で菜園授業を実践しています。

 先日、3年生のエダマメ収穫授業にお邪魔しました。子どもたちは校庭の一角にある菜園で、エダマメの根元を丁寧に掘り返し、根の張り具合や根粒菌、さやに生える産毛まで観察し、思い思いの発見をグループごとに発表していました。

 食育菜園の特徴は、5教科と連携していることで、授業は各教科の担任とESYJで訓練を受けた講師(ガーデンティーチャー)の合同で行われていますが、子どもたちはこの新しい授業を初めから受け入れたわけではありません。「なぜ草むしりをしなければいけないのか。土は汚いもの」と言って嫌がる子までいたそうです。しかし、水をやり、花を観察し、膨らんでいくエダマメの世話をするうちに、目の輝きが変わっていきました。

 また、地域の生産者を訪ねる授業もあります。袋詰めした野菜に値段を付けるところでは、丹精した野菜でお金もうけができることに歓声が上がったそうです。

 新型コロナウイルスの影響で食や農への関心が高まったことは、国内農業を理解してもらうまたとないチャンスです。

 生産者が直接関わる「食育」としては、「酪農教育ファーム」や、農泊における農体験など手法はいくつかありますが、子どもたちが日々命の成長と生産する喜びを知る場として、野菜栽培は最も身近です。

 食育菜園がもたらす変化は校内にとどまりません。知識豊富な生産者へのリスペクトが生まれ、また農家の側も誇りとプライドを再確認できるでしょう。

 新たな食育推進基本計画の作成が来年予定されていますが、食育で大切なのはルールの押し付けではなく、子どもが本来持っている「センスオブワンダー(自然や生命への驚きや感動)」を育むことではないでしょうか。
 

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