法律ができるまでの長い道 発揮する効果 検証必要 元農水省官房長 荒川隆氏

 通常国会も1カ月が経過した。コロナ特措法改正を優先処理したため、実質的な審議期間が例年より短くなり今後の国会日程は窮屈だろう。農水省も提出予定法案を「不要不急」でない4本に絞り込んだ。

 政策遂行の三大手法である法律は、予算、税制と同様行政が原案を作るが、国会での議決が必要だ。議員立法がまれな日本では、行政府である役所が業界の意向を聞き取り、所管物資の需給・価格動向を把握し、財政事情や政治情勢までも勘案して、法案の制定改廃の判断を行う。

 法律の所管課長たる者は、前年秋ごろには「巡る情勢」を踏まえて法案提出の腹決めを行う。出すとなれば、「たこ部屋」と称される法改正専属の検討体制を整備し、所属員にとっては翌年の法案成立まで続く名誉だがつらく厳しい生活が始まる。年末年始返上で省内の法令審査官のチェックを経て、その後内閣法制局という「法の番人」の厳しい審査を受ける。何週間にもわたり、立法事実(なぜ法律改正が必要か)の有無や論理整合性、現実妥当性、前例の有無など、想定し得る論点を一つずつ精査し、内閣提出法案として閣議決定される。

 その後は、法案を審議してもらうための手続きが待っている。閣議決定前に与党事前審査として農林部会、政審・総務会で了解をもらうと、いよいよ野党も含めた国会対応だ。会期は150日間だが審議は毎日行われるわけではない。衆・参農水委とも定例日は週3日だ。重複する曜日にはどちらがやるか、無理して午前と午後に分け合うかなどの調整が必要になる。野党が「寝る」ことで国会が止まることもしばしばだ。そんな中で自法案を一日も早く審議してもらうためのさながら根回し競争だ。

 国会審議となれば、活躍するのが法制局審査で培われた膨大な審査録だ。およそ考えられるあらゆる質問に答えるべく想定問答集を準備し、局長室や大臣室で事前勉強会を行う。委員会の審議時間は、法案の大小や対決法案か否かなどで決まるので、野党にも賛成してもらえるよう説明を重ねる。わずか一こまないし数こまの委員会審議を経て本会議が終われば、晴れて法律が成立する。成立した法律の施行までには、さらに数カ月の経過期間が置かれるのが通例だ。

 このように、法律ができるまでには役所と政治を巻き込む年単位のとても手間のかかるプロセスが必要なのだ。実際に法律が動きだせば、関係者の日々の経営や暮らしに直結する以上、必要な社会的コストだ。一時期、突出して多くの農政改革関連法案が連年国会提出された時期があったが、粗製濫造(らんぞう)のそしりを受けぬためにも、それらの法律が期待された効果を発揮しているかしっかり検証する必要があろう。

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