[あんぐる] 可能性 採掘中 黄ニラ、花苗…坑道農業(岡山県美咲町)

真っ暗で冬でも20度前後の坑道は、特産の黄ニラの軟化栽培に最適。低コストで出荷時期を延ばせるメリットが出せる(岡山県美咲町で)

菌床シイタケを栽培する区画では、見学ツアーの参加者がきのこ狩りを楽しめる

 岡山県美咲町が、閉山した柵原鉱山のトンネルを活用する「坑道農業」を振興している。中は真っ暗で、気温や湿度が安定しているため、農家が特産の黄ニラの軟化栽培などに役立てる。運動施設なども設け、一度は眠りについた鉱山を目覚めさせ、活気を掘り起こしている。

 同鉱山では化学肥料などの原料になる硫化鉄鉱が採れ、戦後の食料増産を支えた。一時は東洋一とされる産出量を誇ったが、安価な外国産に押されて1991年に閉坑。地中には総延長1400キロの坑道が残った。

 このトンネルの入り口から約700メートル分が「坑道農業」の実践地だ。町が持ち主から借り受け、町農業公社に管理を委託。このうち300平方メートルをJAつやま黄ニラ生産部会のメンバー8人が栽培に活用している。

 坑道を使うのは、寒くて栽培できない11月から翌年3月まで。畑から掘り出した株を棚に並べ、3週間かけて30センチほどに伸びた葉を収穫する。中の温度は通年で20度ほどなので、真冬でも暖房費がかからない。部会長の直原篤さん(67)は「地域のシンボルだった鉱山が役目を終えても強みを発揮している」と話す。

 他にもシイタケの菌床栽培や花苗の芽出し、地元業者の酒やみその貯蔵に使われている。

 農業以外の用途も広がる。町は2001年、密閉された坑道の構造を生かし、高地と同じように酸素量を減らした環境でトレーニングできる施設「ハイポキマイン・走路・やなはら」を建設。世界でも珍しい42・195メートルの走路があり、有名選手や町のスポーツチームが利用している。

 町や町農業公社は、坑道の有用性や特産農産物をアピールしようと、毎月第1日曜日に見学会を催している。鉱山の歴史を学んで坑道を歩く約2時間のツアーで、これまでに5000人以上が参加する人気ぶりだ。同町産業観光課の川島聖史さん(51)は「坑道にはまだまだ可能性が眠っている。大いに生かしていきたい」と話す。(染谷臨太郎)

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