延長で涙… 農系球児あと一歩 夏こそ甲子園初勝利 大声援に選手誓う 茨城・石岡一

孫の勇姿に涙ぐみながら声援を送る飯岡琴子さん(25日、兵庫県西宮市で)

サヨナラ負けを喫し、ベンチ前で悔しそうに立ち尽くす石岡一ナイン(25日、兵庫県西宮市で)

盛岡大付サヨナラ


 第91回選抜高校野球大会で唯一の農業系高校・茨城県立石岡第一高校(21世紀枠)は25日、岩手県の盛岡大学付属高校との初戦に臨み、2―3で惜しくも敗れた。八回までリードしたものの、九回に追い付かれ、延長十一回でのサヨナラ負け。甲子園球場に駆け付けた家族や地元・茨城県石岡市の農業関係者らは、「よく頑張った」「勇気づけられた」「夏を目指して」などと、選手らの健闘をたたえた。(藤川千尋、前田大介)
 

孫の勇姿に拍手


 2年生ながらチームの4番を担う飯岡大政選手に熱い視線を送ったのは、茨城県つくば市の農家で祖母の飯岡琴子さん(83)。一回表終了後、「ファースト、飯岡君」とアナウンスがこだますると、感極まり涙を流した。

 琴子さんは10アールで水稲を中心に栗やブルーベリーを栽培。飯岡選手は、おばあちゃん子で「『何か手伝おうか』と、よく訪ねてきた。栗の木に登り枝を揺すり収穫を手伝ってくれた」と懐かしむ。

 選抜出場を懸けた昨年9月の茨城大会終了後から肉体改造に取り組む孫のために「コシヒカリ」や餅を差し入れした。1日に食べる米の目安を約3キロに設定。冬を越え体重は6キロ増加。見違えるほど大きくなった孫の姿に琴子さんは目を細めた。

 試合前に飯岡選手は「小さい頃、おばあちゃんに『絶対に甲子園に連れて行く』と夢を語っていた。いいところでヒットを打ち、恩返ししたい」。願い通り六回表、待望の甲子園初安打を記録。一塁ベース上に立ち、何度もガッツポーズをし喜びを表した。

 試合は九回の土壇場で追い付かれ、延長十一回裏に逆転負けを喫した。「おばあちゃんにはいろんな面で支えてもらえたのに……。試合に勝てず申し訳なく思う」と、目頭を押さえた。

 試合後、同校園芸科2年の中山颯太捕手は「私立高校相手にここまで戦えるんだということを、全国の農業系高校に示せたと思う。夏に甲子園で1勝すれば、もっといい刺激を与えられる」と話した。
 

“夢”かない感謝


 「自分たちが果たせなかった夢をかなえてくれてありがとう」。目を輝かせグラウンドを見つめるのは、川井政平監督(44)のいとこで石岡市の酪農家、川井幸一さん(57)だ。川井監督に野球の手ほどきをした一人で、同校野球部では主将を務めた。川井監督とは「幸(こう)ちゃん」「しょうへい」と呼び合う中。「幼少期には牛舎へ向かう途中で政平に引き止められ、よくキャッチボールをせがまれた。そのおかげでいつも農作業は遅れ気味だった」と、懐かしそうに振り返る。

 思い出されるのは自身が高校3年の時、出場した夏の甲子園を懸けた茨城大会。3回戦の相手は後に全国制覇を果たす取手第二高校だった。優勝候補を相手に延長にもつれ込む大熱戦を演じ、延長十一回表に幸一さんの一打で逆転したものの、その裏2点を献上し甲子園の夢はついえた。それだけに21世紀枠で出場が決まった時は「大声を上げて喜びを爆発させた」。

 悲願の甲子園1勝にはあと一歩及ばなかったが、「諦めなければ県立の農業系高校でも夢はかなうということを政平は証明してくれた」と幸一さんは、選抜で果たせなかった甲子園での勝利に期待を込めた。
 

勇気をもらった


 地元の茨城県では、ナインの奮戦をたたえる声が相次いだ。土浦市の米農家で、かつて同部で投手を務めた来田諒さん(22)は農作業を中断し、テレビで後輩たちの晴れ舞台を応援した。「夏の甲子園を目指して、また農家に夢を見させてほしい」と期待する。

 同校が管内にあるJA新ひたち野では、JA職員らがテレビの前で、試合の緊迫した展開を固唾(かたず)をのんで見守った。久保田惠一組合長は「農業系代表としてよく頑張ったと思う。農家やJA職員を勇気づけてくれた」とたたえる。

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは