宮嶋茂樹さん(報道カメラマン) “戦場”は何でもごちそう 

宮嶋茂樹さん

 報道カメラマンとして現場を駆け巡っていると、何を食べてもうまく感じるんですよ。

 例えば、アフガニスタンに持って行ったカップ麺。2001年の9・11テロの直後に取材に行ったんです。向こうは宗教的な理由で酒と豚が駄目じゃないですか。カップ麺もいかんのでしょうけど、日本語で書いてあるだけだから、現地では分からんだろうと。
 

カップ麺が貨幣


 3ダースほど持って行ったら、取材に来ていた日本人の間で話題になって。貨幣みたいに使われました。というのも各社、衛星電話を貸したり借りたりして、日本と連絡を取っていました。その貸し借りに役立ったんです。「これ1個やるから、電話を貸してくれ」「じゃあ3分間話していい」と。

 酒は、米国の大テレビ局の先輩がブランデーを持ち込んできました。5人で飲んだら、あっという間になくなりましたね。

 臭いで飲酒がばれてはまずいと思い、臭い消しとして私が持って行ったするめを焼きました。そうしたら現地の人が「やめろ」と怒鳴り込んできた。アフガニスタンには海がないから、海産物を食べません。自分が食べない食材の匂いって、気になるんですよね。

 ゲテモノ系はなるべく食べないようにしていますが、一度、コブラのかば焼きを食べたことがあります。1992年、自衛隊のカンボジア平和維持活動(PKO)の時です。たまたま私が基地へ取材に行った時に、基地内でコブラが見つかり大騒ぎの末に捕まえたんです。コブラは赤外線に反応するそうで、写真を撮ったらストロボに向かって飛んできました。ものすごく怖かったです。

 やがて、ある隊員が「食っちゃえ」と言い出して。牙を抜いてからきれいに切り割いて、針金で作った串に刺して焼いたんです。しょうゆとみりんのたれに漬けてみたんですけど、生臭いし、ゴムを食べているような食感でしたね。
 

ミリメシに感激


 戦闘糧食とかミリメシと呼ばれる、自衛隊や各国の軍隊が戦地で食べる食事があります。この分野では、米国がものすごく進んでいます。Meal Ready to Eat(MRE)と呼ばれ、水を入れるだけで自動発火して、ほかほかの食事に変わるんです。

 私は03年のバグダッド陥落の時に、米軍のMREの世話になりました。ほんとに食い物がないところで撮影を続けていましたから、これを食べた時には「うわー、よくできてるな」と感激したものです。種類も豊富で、和洋中とそろい、10数種類もありましたよ。パスタやベジタリアン用の料理まで用意されていました。

 これにありつくため活躍したのが、持参した衛星電話です。米軍は作戦が完全に終了するまで、兵士に電話をさせないんです。ホームシックになるのを防ぐのと、機密漏えいを恐れてのことです。

 やっとバグダッドを陥落させたので、皆、祖国が恋しくなったんですね。そんな時、衛星電話を持った私が取材に行ったわけですから。戦車長が「それを貸してくれ」と言ってきました。「部下がいるから5人分だ」と。部下思いの上官のおかげで、MREにたっぷりありつけました。

 こんな取材を繰り返した後に帰国して真っ先に食べたいのは、すしとラーメン。ラーメンは、豚のだし汁を食いたいからでしょうね。それと、カツ丼のご飯を食べたくなるんです。しょうゆの味が染み込んだ日本の米はうまい! 無性に食いたくなりますね。(聞き手・写真=菊地武顕)
 

 みやじま・しげき


 1961年5月、兵庫県生まれ。日本大学芸術学部卒。「週刊文春」を中心に雑誌媒体で活躍中。97年に「東京拘置所の麻原彰晃」で、編集者の選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。日本大学客員教授も務める。5月15日まで大阪・キヤノンギャラリーで、写真展「防衛大学校の日々」を開催。 
 

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