棚田法案の協議 早期成立へ歩み寄りを

 棚田保全に向けた議員立法「棚田地域振興法案」を巡る与野党の協議が本格化する。具体的な内容について意見の隔たりがあり、先行きには不透明感も漂うが、現場では早期成立を期待する声は大きい。与野党が互いに歩み寄り、妥協点を見いだすべきだ。

 法案は自民党の棚田支援に関するプロジェクトチーム(PT)が作成し、先週の同党総務会で了承された。国が棚田地域の振興策を総合的に策定する責務があると明記。都道府県は国が定める基本方針に基づいて、振興計画を作成する。国が振興地域を指定し、財政措置を行うことも盛り込んだ。同党は野党と共同で今国会に提出し、成立を目指す方針で今後、野党との本格協議に入る。

 PT座長の江藤拓首相補佐官は「故郷を思い、棚田地域がぎりぎりの状態にあることは(与野党の)共通認識だ」と述べ、法案の成立を急ぐ必要性を強調する。棚田は、景観や生物多様性の保全に大きな役割を担い、近年は都市住民を呼び込む観光資源としても注目されている。一方、高齢化による担い手不足は深刻化し、保全は年々難しくなっているのが実情だ。

 ただ、与野党協議が進み、今国会で成立にこぎ着けることができるか、不透明感も漂う。野党は法案の趣旨には理解を示すものの、具体的な内容を巡って意見の食い違いが目立ってきているからだ。

 立憲民主党は先週、自民党の棚田法案について議論し、修正を求めることを決めた。主食用米の作付面積に応じて交付金を出し、所得を補償することを追加で盛り込むよう求める。同党議員は「棚田に直接支払いをすることが地域支援につながる」と意義を強調する。

 棚田地域に限った話とはいえ、野党の“看板政策”である戸別所得補償制度の事実上の復活といえる内容だけに、政府内からは「自民党が受け入れるのは容易ではないだろう」との見方が出ている。今夏の参院選が近づき、与野党の対決ムードが強まる中、立憲民主党側にも安易に妥協する気配はない。

 だが、過疎・高齢化が進む生産現場の強く求める法案をないがしろにしていいはずはない。日本の棚田百選に選ばれている「東後畑棚田」を抱える山口県長門市の大西倉雄市長は「農業を営んでいく政策だけでなく、地域全体で(棚田を)支える仕組みが必要だ」と地域政策としても重要視する。

 6月26日の会期末が近づき、残された時間は少ない。与野党は協議を急ぎ、互いの主張に丁寧に耳を傾けながら、落としどころを探るべきだ。今国会では食品ロス削減に向けた議員立法を与野党で提出し、成立する見通しになった例もある。

 参院選をにらんだ駆け引きに明け暮れれば、現場不在の党利党略との批判は免れない。政治に対する不信感を一層強めるだけだろう。 

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