[実証始まる スマート農業](5) 大規模複合経営(北海道岩見沢市)×水管理、無人トラ 人手に代わる

ロボットトラクターで作業した農場を示す道下さん(北海道岩見沢市で)

所得向上へ省力徹底 


 省力化を進めなければ農地を守れない──。北海道岩見沢市の農業者や農業関係者には強い危機感がある。JAいわみざわ管内で農家戸数が減少し続け、2018年は1019戸と、25年前の3割になった。28年には約700戸に減る恐れがあり、1戸当たりの経営規模は7ヘクタール増えて25ヘクタールほどになるとみられる。情報通信技術(ICT)を駆使したスマート農業の省力効果に、地域の強い期待が集まっている。

 同市の農家でつくるいわみざわ地域ICT農業利活用研究会は今年から、無人で動くロボットトラクターや水管理システムなどを駆使し、米の生産コストの削減や所得向上効果を実証する試験を始めた。水管理作業時間の8割削減、耕起・整地作業時間の3割削減を目指す。

 ロボットトラクターは、耕起や整地、種まき後の鎮圧などあらゆる作業で活用する。空いた時間は、同時並行で畦畔(けいはん)の除草など別の作業をしたり、高収益な園芸作物の生産などに充てたりして経営向上につなげる。

 研究会に所属する道下一記さん(43)は、試験耕作を担う農家4人のうちの1人。家族経営で水稲と小麦、ナタネなど9品目を55ヘクタールで手掛ける。中でもコンバインとロボットトラクターの協調作業に期待する。

 7月には、有人コンバインで小麦を収穫し、刈り跡を追従する無人のロボットトラクターで麦かんを細断する計画だ。8月中旬に控えるナタネの種まきに備えた取り組みで、道下さんは「この時期はスケジュールが詰まっており、同時作業はかなり効果的だ」とみる。

 研究会はこの他にも、定点カメラやドローン(小型無人飛行機)などで収集したデータを活用し、人工知能(AI)が分析。複数の品目を栽培する農業者が品目ごとに、栽培管理に関する最適な作業スケジュールや方法を示せるようにする。研究会会長の西谷内智治さん(51)は「スマート農業は少ない人手で大面積を守る技術。これからは所得向上も求められる」と言い切る。

 同市は環境整備で先進農業を後押しする。13年には全国の自治体で初めて、トラクターの自動走行に必要な高精度の位置情報を発信する基地局を設置。18年には完全無人トラクターの走行に向け、映像伝送も可能な電波の免許を取得した。

 政府は、23年までに全農地の8割を担い手に集約するという目標を掲げる。全国の集積率が56・2%(19年3月末現在)であるのに対し、北海道の集積率は91%。道内では担い手に農地が集まっても、耕作者が足りなくなる懸念が現実味を帯びる。ロボットトラクターを題材にしたテレビドラマの登場人物のモデルとなった北海道大学大学院の野口伸教授は「スマート農業は、人手不足を乗り越えられる技術。これからの日本農業に不可欠だ」と予見する。

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