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直接支払い3制度 自治体負担軽減を 農水省が検討開始 根拠法20年度見直し
農水省は6日、中山間地域等直接支払制度と多面的機能支払交付金、環境保全型農業直接支払交付金から成る「日本型直接支払い」の検証を始めた。農業者団体からの意見聴取などを通じ制度の課題を洗い出し、2020年度に対応方針も取りまとめる。現場で制度を推進する自治体の事務負担の軽減などが検討事項となる見込みだ。
三つの制度は、政府が地域政策と位置付けており、条件不利地を含めた農地の保全、営農の継続などを後押ししている。各制度の根拠法として、農業の多面的機能発揮促進法が15年4月に施行され、施行5年後の20年度に見直すかどうか、検証するとしていた。今後、三つの関連制度の第三者委員会で検討を進める。
同日の会合で、委員長に就いた東京大学大学院の中嶋康博教授は「それぞれ(の直接支払いは)地域の農業農村に大きな役割を果たしている。改めて法制度、運用について課題を共有したい」と話した。同省は、自治体のアンケート結果を報告。三つの制度を同じ部署で担当している市町村は7割に上った。
宮城大学の三石誠司教授は、関連制度を推進するに当たり「市町村が忙しいため、(現場の要望を)聞くことができていないのではないか」と指摘。自治体の人手不足を課題として検討するよう提起した。
日本消費者協会の河野康子理事も自治体の人手不足を課題に挙げ、「コンサルティングなどの手当てが必要」と述べた。コンサルタント企業クニエの原誠マネージングディレクターは「事務と人材が課題の大きな柱になる」と指摘した。
市町村は同じ部署で3制度を担当するが、同省は制度ごとに担当部署を設けていることも論点になった。中嶋委員長は市町村の人手不足を念頭に「書類様式を可能な限り統一した方がいい」と指摘、同省に精査を求めた。
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2019年12月07日
マルチ作家の永六輔さんは、言葉集めの才人だった
マルチ作家の永六輔さんは、言葉集めの才人だった。普通の人々のなにげない言葉に耳を澄ました。一番書きたかったのが「職人」の世界だった▼同名の著書には、気っ風のいい職人たちの言葉が並ぶ。「職業に貴賤(きせん)はないと思うけど、生き方には貴賤がありますねェ」。その生き方を端的に表すのがお金。「いいかい、仕事は金脈じゃない、人脈だぞ。人脈の中から金脈を探せよ。金脈の中から人脈を探すなよ」▼永さんには、お金にまつわる原体験がある。中学生の時、NHKの番組に投書して、初めて謝礼をもらった。それを聞いた近所の職人、ほめた後に言った。「(大人になったら)なぜくれたのかわかる金だけをもらえよ。なぜくれるんだかわからない金は、絶対もらうんじゃないぞ」。そして永さんは思う。「この言葉を政治家と役人に伝えたい」と▼永さんが逝って3年。訳のわからない金が飛び交っている。不透明な原発マネー、企業談合の裏金、「政治とカネ」の不祥事も後を絶たない。極めつけは、首相による公金を使った支持者接待の「桜疑惑」。供応を受ける側に反社会的勢力やマルチ商法の張本人がいたらしい▼公と私のけじめなく、金脈と人脈が入り乱れる花見の宴(うたげ)である。〈花開けば風雨多し〉。政権に冬の花嵐が吹き荒れる。
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2019年12月04日

渋野プロ地場産で応援 JAグループ岡山
JAグループ岡山は6日、岡山市で岡山県出身のプロゴルファー・渋野日向子選手に、同県産米「きぬむすめ」120キロと県産農産物を贈呈した。今年8月にAIG全英女子オープンで優勝し、日本人42年ぶりのメジャー制覇を成し遂げた渋野選手の快挙を祝い、来シーズンの一層の活躍を応援した。
「きぬむすめ」は、JAグループ岡山が新たなブランド米として生産拡大する瀬戸内海のカキ殻を使った資材で栽培する「里海米」。この他、県産ブドウ「紫苑」2房と、梨「愛宕」2玉、黄ニラ10束、ナス「千両」2キロなどを贈った。
渋野選手の父親は、JA岡山の正組合員で実家に畑があり、渋野選手は小さい頃から農作業を手伝っていたという。渋野さんは「農業には親近感がある。これからも、岡山の米や農産物を元気にモリモリ食べて、頑張りたい」と笑顔を見せた。
JA岡山中央会の青江伯夫会長は「岡山県人に勇気をくれたことに感謝したい。JAグループ岡山で、おいしいお米や野菜を作り、食べてもらい、さらに、パワーアップしてほしい」とエールを送った。
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2019年12月07日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 水稲品種 古参に脚光 多収の晩生「アケボノ」生産拡大 業務用、酒造で引き合い
JA岡山西は、もうかる米作りの一環で、70年ほど前に育種された水稲「アケボノ」の生産拡大を進めている。古い品種だが、業務用米や酒造原料米として実需者の引き合いが強く、栽培しやすい多収性の晩生種として、生産者にも人気が高い。ポスト「コシヒカリ」をにらんだ品種開発が盛んだが、実需のニーズを見極めて古い品種にも光を当てた形だ。2018年産の集荷数量は1278トンで、品種別では主食用米の3割を占める計算だ。19年産は1440トンの集荷を目指す。
「朝日」と「農林12号」を親とする「アケボノ」は1953年に品種登録された。多収で倒れにくいのが特徴。米は、炊くと粒が大きく、歯応えがあり、あっさりした食味が楽しめる。外食や中食用として使われ、県内の卸業者は「粘りが少なく加工に向く。特にすし飯の需要が大きい」と説明する。酒造用の掛け米としても人気があり、JAの川上勝之営農部長は「生産拡大を呼び掛けているが、需要に供給が追い付かない状況だ」と話している。
同県浅口市の平喜酒造は「アケボノ」を掛け米だけでなく、こうじ米としても使う。原潔巳部長は「タンパク質が少なく、きれいなこうじができる。造った日本酒は淡麗な味わいで、料理に合う。米の品質にばらつきがないのも良い」と分析する。
生産者からの評価も高い。15ヘクタールで水稲を育てる倉敷市の山地康弘さん(59)は「費用や手間がかからず、安定して多収が見込める。晩生種のため、コシヒカリやヒノヒカリなどと作期分散しやすい」と栽培の理由を話す。
10アール当たり収量は例年、約540キロで、「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」よりも約120キロ多いという。一方、肥料代は10アール当たりで2000円ほど安い。JAの概算金は、最も高い「コシヒカリ」に比べると、18年産で60キロ当たり約1100円安いが、利益は「アケボノ」の方が大きくなる。
地域では、9月上旬から10月上旬に「あきたこまち」「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」「にこまる」を収穫し、「アケボノ」は例年11月5日ごろに刈り取っている。山地さんは「品質が落ちないので、作業を急がずに済む」と、融通の利く特性にも満足する。「生産者にとって頼もしい品種。作り続けたい」と意気込む。
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2019年12月05日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 受託田の水管理住民がサポート
JA岡山西は、JAの作業受託組織を住民が支援する「稲作りサポーター」制度を導入し、JAと地域住民で農地を守る体制を整えた。条件不利地や飛び地などの農地は受託が難しいが、日常的に必要な水管理をサポーターが担うことで、受託能力を高める。2019年は7人が、サポーターとして約5ヘクタール分の管理を担う。
サポーター制度を取り入れたのはJAの子会社として13年に設立した岡山西アグリサポート。19年度は水稲24ヘクタール、タマネギ1ヘクタールを栽培する。
倉敷市を中心に農地中間管理機構(農地バンク)を通じて、高齢で農作業が難しい生産者らから農地を預かるが、受託地は170カ所に分散され、面積拡大にも限界が出ていた。対策として16年から、地元農家から「稲作りサポーター」を募集。水管理の委託を始めた。
赤木稔さん(76)は、同市で水稲80アールを栽培しながらサポーターとして80アールの水管理を請け負う。6月の田植え時期が最も忙しく、地区によってはポンプで水路から水をくみ上げる水田も多く、機械を運搬するため体力もいる。赤木さんは「耕作放棄地を見るのは残念。みんなで助け合い農地を守りたい。体力が続く限り稲作りサポーターを続ける」と話す。
同社の阿部晃治生産部長は「サポーターのおかげでよく水管理ができ、草も生えにくいため、米の品質が上がった。協力して地域農業を守っていきたい」と頼りにする。
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2019年12月07日