松尾依里佳さん(バイオリニスト) 成長祈る「母の教え」私も

松尾依里佳さん

 うちの母は「人間の体は食べ物でつくられる」と言って、子どもに良い物を食べさせたいと頑張ってくれました。私は昨年出産し食べさせる側になってから、母の教えを生かすよう心掛けています。

 母の本棚に古い料理本が並んでいるのを見つけました。私や妹の成長を祈って、買った本です。どんな食べ物を食べたら頭の良い子に育つかといったものもあり、改めて感謝の気持ちが湧きました。
 

良いとなれば・・・


 母は、例えば豚肉を食べる時には、ビタミンB群は体を作るのに大切だと教えてくれました。緑黄色野菜も大事だと、たっぷり入った煮物などを作ってくれました。変わったところでは麩(ふ)。麩に含まれるタンパク質は、脳の働きや体の成長に良いと言って、料理に使ってよく食べさせたそうですが、母は祖母に、「金魚じゃないんだから」と言われたそうです。

 まだ小さい頃から、大人と同じ料理を食べさせてくれました。ご近所の家の手巻きずしパーティーで、子ども用のテーブルに並んでいるキュウリ、かんぴょう、卵を見て「こういうの巻いたことがない」と疑問に感じ、大人のテーブルに並ぶ刺し身を見てほっとした記憶があります。

 質だけではありません。母は成長には量もいっぱい食べないといけないと考え、たっぷり食事を作ってくれました。育ち盛りにいろんな栄養を取ることで、強く大きな体がつくられると。私は小さい頃、ちょっとしたことで体調を崩しがちだったんですが、少しずつ強くなっていきました。

 中学入学時には背もクラスで2番目に小さかったんですが、だんだん伸びていきました。でも縦に伸びるのには限界があるようで、次第に横にも広がるように。中学3年の1年間で、8キロも太りました。学校から帰ると、食卓には結構な量の夕食が。それを素早く食べて塾に行き、帰ってからはまた夜食を食べることもあり、太るのも当たり前ですよね。
 

苦労知ればこそ


 出してもらった料理は全部食べる。残してはいけないと感じていました。というのも、父方の祖父母が農家をやっていて、米や野菜、果物を作っているのを見ていたからです。

 祖父母は、小さい子に農作業の経験をさせることが大事だと思っていたのでしょう。近くの幼稚園の遠足を受け入れて、イチゴ狩りや芋掘り体験をさせていました。でも受け入れたのはいいけど、「雨が続いたからちゃんとなっていない。大丈夫だろうか」と慌てたり。その様子を見て、農作物を作る苦労を知りました。

 すごく手間暇をかけて食材ができ、それを使って時間をかけて料理ができる。食べるのは一瞬だけど、その前の苦労を考えたら、感謝の気持ちでいっぱいです。

 今、私の娘は1歳5カ月。離乳食の時期に、カボチャのような甘味のある野菜ではなく、ダイコン、ニンジン、小松菜など渋い味の野菜のピューレから食べさせました。おもちゃをしゃぶるくらいならと、ゆでたキャベツの芯を持たせてしゃぶらせていました。

 おかげで、野菜好きの子に育っています。先日も外出先で、娘がアスパラガスをむしゃむしゃ食べている様子を見た方が、びっくりしていました。私の与える料理が、この子の血となり肉となると思うと、作りがいを感じます。

 農家の皆さんは、日本中の人々の体をつくってくださっているんです。この場を借りて、感謝の気持ちを伝えたいと思います。(聞き手・写真=菊地武顕)

 まつお・えりか 大阪府生まれ。4歳よりバイオリンを始めた。京都大学在学中にプロとしてステージデビュー。2008年オリジナル曲を収めたミニアルバム「First Gate」、12年「Unlimited」をリリース。関西フィルハーモニー楽団などとの共演も多数ある。クイズ番組出演など、タレントとしても活躍中。 
 

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