食料自給率国は軽視? 認識に隔たり 国民は不安 必要性薄い 世論調査 14年が最後

 2018年度の食料自給率がカロリーベースで過去最低の37%に落ち込む中、食料供給に対する国民の意識を尋ねる政府の世論調査が長く実施されていないことに、疑問の声が上がっている。直近の14年の調査では回答者の8割が将来の食料安全保障を危惧していたが、農水省は「(不安だという)決まりきった回答にしかならない」と実施に消極的だ。識者は「食料自給率を軽視する姿勢と取られかねない」と批判する。

 同省の依頼を受けて内閣府が実施、結果を公表してきた「食料の供給に関する特別世論調査」が、14年を最後に止まっている。「食料の供給に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする」目的で、定期的に実施してきたものだ。名称が異なる同様の調査も随時、実施していた。だが、同省によると14年以降はこうした調査はしておらず、「予定もない」(広報評価課)という。

 同省は「『食料自給率が低い』という、分かりきった回答にしかならないという指摘があった」(食料安全保障室)と理由を説明する。そうした指摘がどこからあったのかは明かさなかったが、調査の必要性は薄いとの認識だ。これまでは08年の世界的な穀物価格の高騰などの時勢に応じて実施しており、調査年が厳密に決まっているわけではないとして「実施しない特別な理由があるわけではない」と強調する。

 東京大学大学院の鈴木宣弘教授は、こうした政府の姿勢に「国として自給率を引き上げるのを諦めたと受け取られかねない」とみる。農業大国との貿易協定が発効、交渉が進展する局面にあり「貿易自由化を進めて自給率が上がるわけがない。そんな時に調査して国民に不安だと言われたら困るということではないか」と皮肉る。

 将来の食料供給に対する国民の不安は大きい。14年調査では、回答を寄せた全国の1781人のうち、83%が将来の日本の食料供給に「不安がある」とした。農地の減少や農家の高齢化、世界的な異常気象、輸入の減少・停止の恐れなどが理由に挙がった。食料自給力の向上が必要と答えた割合は96%に達した。同調査時のカロリーベース食料自給率は39%。さらに18年度は過去最低の37%に落ち込み、向上に向けた本格論議を求める声が農業関係者を中心に強まっている。
 

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