自治体農政の現場 中央集権化に「待った」

 生産現場に近い自治体が住民参加型で農業・農村の将来ビジョンを作り、農業振興や地域の活性化を進めていく。そんな基本的なことが実際は難しい。地方農政の現場は逆に“中央集権化”が強まっている。新しい食料・農業・農村基本計画では、改めて農政での国と地方の在りようが問われている。

 制定から20年の食料・農業・農村基本法は「食料の安定供給」「多面的機能の発揮」「農業の持続的な発展」「農村の振興」の四つの理念を掲げ、国や地方公共団体、農業者の責務を定めている。地方公共団体には第8条で「国との適切な役割分担」や、地域特性に応じた施策の策定と実施を挙げる。国の施策の下請け機関ではない。

 農業を持続可能な産業にしていく上で、適地適作や小農、高齢者にも出番がある多様な農業構造をつくることが重要だ。その意味でも、現場に近い自治体への期待は大きいが、その農政部署の弱体化が気掛かりだ。全国町村会が8月末、「これからの自治体農政の在り方」をテーマに、東京都内で開いたシンポジウムでは厳しい現状報告が相次いだ。

 その要因の第一は、職員数の減少である。堀部篤東京農業大学准教授の調べによると、地方公共団体の職員数は2005年を100とした場合、17年には一般管理部門が89に、農業部門はさらに少ない77になる。合併自治体の場合、農業部門の縮小幅はもっと大きくなる。

 第二は独自財源の減少だ。財政難の下、社会保障関連の支出割合が増える一方、農業予算は減っている。自治体単独の農業振興事業を実施できるのは、よほどの意欲的な首長がいる自治体でないと難しい。自治体農政は、地方分権の掛け声とは裏腹に、国の補助金への依存度が一段と強まっている。農政の中央集権化が進んでいるのだ。

 マスタープランの作成を要件にした補助事業が増え、かつ補助事業に対する重要業績評価指数(KPI)の導入で成果を求める国のプレッシャーは強い。農地中間管理機構(農地集積バンク)はその典型だろう。かくして、自治体農政の現場は、計画作成と調整・確認作業に忙殺される。シンポで報告したある県の農政担当者の場合、仕事の六割が補助事業事務を占めた。

 近年の一連の農政改革は、この実態にさらに油を注いだと懸念される。魅力のない仕事に若い人材は来ない。国と地方自治体の望ましい農政分担の在り方について、新基本計画の策定を機に真剣に考えるべきだ。

 自治体の体力がか細くなる中、「地域運営組織」や「小さな拠点」、あるいはNPOといった住民の参画がますます地方自治の現場で重要になっていくだろう。その中にはJAや商工会といった地域に根差した経済団体も含まれる。住民組織の育成と支援、地域の経済団体との連携も、審議会でしっかり議論すべきだ。

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