「日本ワイン」1年 “産地色”で輸入に対抗 生産者と連携強化 畑ごと個性発揮

ワインの原料となるブドウ「甲州」を収穫するワイナリーの社員(山梨県甲州市で)

 国産ブドウだけを使い、国内で製造した果実酒を「日本ワイン」とする国の新たな表示ルールが始動して30日で1年。各産地で、生産者とワイナリーが連携した“産地が見える”ワイン造りが始まっている。相次ぐ大型通商交渉の発効による関税撤廃などで安価な輸入ワインが増える中、日本の風土を生かしたワイン造りで付加価値を高める戦略だ。

 日本のワイン産業発祥の地とされ、30以上のワイナリーがある山梨県甲州市勝沼地区。今季から園地ごとの土壌や気候、作り手の個性を生かしたワイン造りが動きだした。一定条件で収穫地名などを記せる新たな表示ルールから一歩踏み込み、より詳細な「畑ごと」のワイン造りに挑む。

 ブドウ「甲州」の番地までを記した園地住所や植栽本数、出荷計画などを地元のJAフルーツ山梨が出荷組合ごとに取りまとめ、ワイナリーと共有。ワイナリー側は、生産者や園地情報を明確に把握し、それぞれのブドウの品質や個性に応じて高品質なワインを造る。

 勝沼ワイン協会会長を務める勝沼醸造の有賀雄二代表は「市場競争の中で優位性を出すには、単なる甲州ワインではなく、生産者や風土と結び付いたワイン造りが必要」と強調する。今後、醸造に適した高品質なブドウに対し仕入れ価格を上乗せする「評価払い」も検討、栽培技術の底上げや生産者の所得向上につなげる構想を描く。

 国税庁によると、同県の「日本ワイン」生産量は5530キロリットル(2017年)で全国1位。JAは「新たなルールは、原料の醸造用ブドウ産地に追い風。日本一の産地を守るためにも、取り組みに協力して生産者の所得を増やしたい」と力を込める。

 生産量2位の長野県でも同様の動きが加速している。同県ワイン協会は「新たなルールが始まって以降、原料ブドウを畑ごとに仕込むワイナリーが増えている」と話す。

 各ワイナリーが、産地との結び付きを強めたワイン造りに力を入れる背景には、安価な輸入ワインの攻勢がある。貿易統計によると、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効した2月から8月までのEUからのワインの輸入量は前年同期比26%増の9万9615キロリットルと急増している。

 日本ワイナリー協会は「付加価値向上に向け、国産原料の調達を強めて日本ワインを製造する動きが、中小に加え、大手メーカーでも出ている」と指摘する。
 

<ことば> 日本ワインの表示ルール


 ワインの新表示ルールとして2018年10月30日に始まった。国産ワインのうち日本ワインに限り、一定条件を満たした上で、地名、ブドウの品種名・収穫年を表ラベルに表示できる。輸入果汁や輸入ワインを原料としたワインと区別でき、産地の個性を打ち出しやすくなった。
 

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