途絶えた人手、農地そのまま 復旧阻む泥とわら 台風19号 1カ月

土砂やごみが流入した水田を見つめる武島さん(福島県相馬市で)

へたや葉に乾いた泥が付着し、出荷できないイチゴ(茨城県常陸大宮市で)

 収穫期を迎えた田畑を土砂や濁流が襲った台風19号から12日で1カ月。田畑に残る大量の泥や稲わらが営農再開を妨げ、農家の苦境は今も続く。台風19、21号と立て続けに被災した農家や、新規就農して「これから」という時に被害に遭った農家もいる中で、復旧に向けた人手不足も心配されている。(音道洋範、鵜澤朋未)
 

浸水立て続け…落胆 福島県相馬市


 「1カ月たったが、一つのハードルも越えていない」と語るのは福島県相馬市の農家、武島竜太さん(55)だ。同市周辺では台風19号とその後の21号による大雨で付近の河川から水があふれ、市内の広い範囲で収穫前の水田に土砂や稲わらが流れ込んだ。

 水田や用水路には深い所で土砂が30センチ、稲わらが1メートル近く堆積した他、農道も崩れて通行できなくなった。そのため現在も25ヘクタールの水田のうち8ヘクタールで収穫が困難となっている。「丹精して育てた米なので少しでも収穫したいが、砂やわらで機械が壊れてしまう。収穫は難しい」と話す。

 営農再開は進まず、被災地周辺では11月半ばになっても稲が水田に残っている所が目立つ。浸水した住宅の片付けなどを優先したことで、収穫に取りかかれなかったためだ。なんとか刈り取っても刈り遅れによる品質低下で等外となる米も多く、農家収入の減少につながっている。

 来年の作付けに向け、残った稲の処分が必要だが、人手不足が復旧に影を落としている。武島さんの集落の農家は4戸で、近隣の協力だけで稲わらを取り除くのは難しい。「実際にどんな組織で稲わらを取り除くのか、詳細が分からないと進めようがない」と話す。稲わらの集積場所なども決まっていない。

 JAふくしま未来そうま地区の西幸夫本部長は「農家の不安を少しでもなくせるよう購買での支払い猶予などさまざまな手段を考えたい」と話す。県では被害の全体像が見えてきたとし、今後は農地の復旧を加速させ、来春の農作業シーズンに間に合わせたい考えだ。
 

実っても土取れず 茨城県常陸大宮市


 「新規就農した際に国から借りた資金を2月に完済し、ようやくこれからという時だった」

 茨城県常陸大宮市のイチゴ農家、都竹大輔さん(47)は1カ月たった今も堆積した泥と格闘している。都竹さんのハウスが並ぶのは那珂川の真横。300メートル上流の堤防が決壊し、辺り一面が湖のようになった。

 20棟あったハウスは水没し、全5棟で建て直しが必要だ。4月に買ったばかりだったトラクターも1メートルほど高い場所に移動させておいたにもかかわらず、水没した。現在、土耕栽培するイチゴのマルチの中には3~5センチの泥が堆積したまま。動力噴霧器で何度も洗った葉やへたにも泥が白くこびり着く。出荷は通常10月から始めるが、泥が落ちないため、収穫しては廃棄している。

 台風の直後は多くのボランティアが駆け付けたが、2週間を過ぎると途絶えたという。来シーズンの親苗を植えるために土壌消毒を済ませた場所は泥に埋もれ、流された育苗箱やコンテナなどこまごまとした備品を再び買いそろえるのも大きな負担となる。

 都竹さんは「ハウスは今すぐ建て直す体力がない。経費を考えると、一度規模を縮小するしかない。備品購入もカバーできるような長期支援をお願いしたい」と切望する。

 都竹さんは、同市と大子町の農家9人で構成する奥久慈いちご研究会の会長も務める。研究会は20、30代の農家が多く、そのほとんどが新規就農者だ。台風19号では、都竹さんを含む3人の農地が被害に遭った。

 JA常陸大宮営農経済センターによると、那珂川の他、久慈川が決壊した影響で野菜農家らが被災した。堀江金男センター長は「1カ月たっても泥の撤去が追い付かず農作業も遅れている。畑や水田にごみが残ったままの農地もあり、病害虫の発生や生育面での不安が残る」と話す。
 

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