メガFTAと食肉 影響見据え対策加速を

 大型自由貿易協定(メガFTA)の影響が心配される食肉の動向から目が離せない。輸入の増加は依然として続き、国産の相場は弱含みで推移している。関税引き下げの影響が出るのはまだ先だとみられていたが、生産者・産地と政府、業界は警戒を強め、生産・販売対策を加速させる必要がある。

 環太平洋連携協定(TPP)は昨年末に発効し、今年2月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効した。牛肉、豚肉などの食肉は、関税引き下げによる国内への影響が最も心配された分野だ。深刻になるのは税率の下げ幅が大きくなる5年後、10年後との見方もあるが、そう悠長に構えてはいられない状況が出始めている。

 最大の要因は食肉輸入の増加が止まらないことだ。豚肉は、2017年に93万トンと過去最高を記録し、昨年も横ばいの高い水準だったが、今年は10月までの累計で17年同期を既に4万トン上回った。過去最高を更新するのは確実な情勢だ。TPP、EPAともに2回の引き下げで従価税が1・9%へと2・4ポイント削減されたが、予想を超える輸入ラッシュとなった。

 背景には、日本市場でのシェア争いが早くも始まっていることがあるとみられる。特に、この10年で対日輸出量を2倍に増やし、シェアを3割に高めたEUが今年の増加の一因だ。TPP、日欧EPA加盟国はいずれも、前年を上回っており、最大の輸出国の米国だけが前年を下回っている。

 輸入が増えているのは豚肉だけではない。牛肉も、10月までの累計が、この20年間で最も多かった18年をわずかとはいえ上回っている。従来9割を占めてきたオーストラリアと米国の二大輸出国が前年を下回る中で、TPP加盟のカナダ、ニュージーランドなど新興国が追い上げている。鶏肉も10月累計で過去最高水準の輸入量となった。

 食肉輸入の増加は、国産の枝肉相場に影響を及ぼし始めている。豚肉は1年ほど前から国産豚の生産回復に輸入の増加が追い打ちを掛け相場低迷となった。今年は回復の兆しが見え始めたが、夏場から輸入増で、再び弱含みの展開となっている。鶏肉相場、和牛相場も似たような構図だ。

 これまで枝肉相場を大きく左右してきたのは国内の景気動向だ。この10年ほどでは、リーマン・ショック、東日本大震災が相場低迷の要因となった。この5年ほど大きな景気後退もなく、相場は安定するはずなのだが、輸入の増加で相場はますます不安定なものとなっている。

 TPP、EPAに加え来年1月には日米貿易協定も発効の見通しだ。抑制効果を発揮してきた牛肉のセーフガード(緊急輸入制限措置)は、TPPからの米国離脱でほとんど期待できない。関税という防波堤が低くなる中、それを越えて食肉輸入が増えるのは先のことではない。始まっているとみるべきだ。
 

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