農産物輸出政策 農業所得向上の追求を

 2019年の農林水産物・食品の輸出額は政府目標の1兆円には届かなかったが、7年連続で過去最高を更新した。だが、伸びている品目の中には、農業所得の向上につながるか疑わしいものもある。政府は輸出額だけにこだわるのではなく、農業所得の向上に貢献する“質の高い輸出”を追求すべきだ。

 農水省によると、19年の農林水産物・食品の輸出額は前年比0・6%増の9121億円だった。このうち加工品を含む農産物は3・8%増の5877億円。品目別に見ると、主力の牛肉が20%増の296億円で、同じく主力のリンゴも3・7%増の144億円と好調だった。

 一方、振るわなかったのが林産物と水産物だ。特に水産物はサバの不漁などが響いて5・2%減の2873億円と低迷。全体額が伸び悩む要因となった。

 香港や中国、台湾など20か国・地域が輸入規制を続けている。輸出拡大に向けて政府は、4月に設置する輸出本部を中心に、各国・地域に規制撤廃を働き掛けていく方針だ。江藤拓農相は「今年は必ず伸ばせる。1兆円を当然突破する覚悟でやっていきたい」と意欲的だ。

 もちろん輸出を増やしていく方針に異論はない。問題なのは、今の輸出が農業所得の向上に結び付いているか、疑問を拭えない点があることだ。

 その代表例が加工食品。5・5%増の3270億円で輸出額全体の3分の1超を占める。内訳を見ると、アルコール飲料(6・9%増の660億円)、ソース混合調味料(3・4%増の336億円)、清涼飲料水(7・9%増の303億円)など。また「各種の調製食品のその他のその他」という名称で分類されている加工食品もある。896億円と輸出額全体の1割弱を占めるが、他に分類できない雑多な食品の寄せ集めで、同省は「中に何が入っているか全く把握できていない」という。これらをはじめ加工食品には、海外の原料に依存しているものが多いと指摘されている。

 政府は13年4月に決めた「農林水産業・地域の活力創造プラン」に「農業・農村の所得倍増を目指す」と明記。達成への具体策の一つに輸出を挙げる。農業所得の向上につながる輸出の実現は政府の約束である。

 江藤農相は、輸出額の新たな目標を設定する考えで「どのぐらいの水準が適切か、基本計画ができるまでに詰めたい」と強調。次期の食料・農業・農村基本計画に位置付ける方針を示している。それなら、所得倍増目標の達成に向けて、輸出による農業所得の向上についても目標を設定すべきではないか。

 輸出を農業所得の向上に結び付けるには、まず現在の輸出額のどれくらいが農業所得になっているかを分析し、明らかにする必要がある。その上で伸ばすべき品目は何か。伸ばすためにはどんな施策が必要か。政府はいま一度知恵を絞り農業所得向上に向けた道筋を示すべきだ。
 

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