野口五郎さん(歌手) 地元のみそが「元気の源」

野口五郎さん

 僕はみそにはこだわりがあります。生まれ育ったのは岐阜県で、濃厚な赤みそなんですね。八丁みそですけど、本場・岡崎のとはちょっと違います。岡崎と名古屋でも違いますし、うちの方は名古屋のものに近い感じでした。

 家から300メートルくらいの所にみそとしょうゆを造る工場があり、そこで買っていたんです。いつも外から見たり、工場の中から漂う匂いをかいだりしていました。母に「買ってきて」と言われて、みそを入れる容器や1升瓶を持って買いに行きました。
 

食の違いに驚き


 歌手になるため中学の時に東京に出ました。みそ汁を飲んで「なに、これ?」とびっくりしました。全然違うんですよ、みそが。

 僕にとってみそ汁とは、おいしいもの、ほっとするもの、癒やされるものでした。でも東京に出てからは、そのように感じることができなかった。僕に言わせると、東京のみそ汁はお吸い物ですね。

 僕が一番好きなみそ汁の具は、ネギ。緑の部分が煮込まれてシナーッとなっているのがいいんです。あとは絹ごし豆腐ですね。

 東京ではネギにも驚きました。白い部分がずいぶんと長い。実家の方のネギは緑の部分が長いんですよ。といっても、京都の九条ネギのように細いものではありません。太さは深谷ネギと同じくらい。でも深谷ネギとは違って、緑の部分がかなり長いんです。

 同じ日本でも、地域によってみそやネギがこんなに違うんだとびっくりしたことを覚えています。

 上京して何年かたった頃のことでしょうか。ヒット曲に恵まれて、コンサートで名古屋へ行く機会を頂きました。

 名古屋に行くのは本当に久しぶりでした。名物のみそ煮込みうどんを食べたら、うれしくなって。そのうどんに使われてるみそこそ、僕が求めている味なんです。一口食べて「これだーっ」と。

 それで止まらなくなってしまって。リハーサルの合間に食べ、仕事が一段落して食べ、夜に食べ、帰る間際に食べ……結局6杯も食べてしまいました。

 結婚してからは、奥さん(タレントの三井ゆりさん)に岐阜のみそでみそ汁を作ってもらっています。みその味と匂いが強いですから、だしもそれに負けないものが必要になるじゃないですか。九州のあごだしを取り寄せています。赤みそは見た目が強烈ですから、どうしても薄く作ってしまいがち。「思い切って濃くして」と注文しちゃいます(笑)。
 

こだわりの七味


 みそ汁には、七味唐辛子を掛けていただきます。浅草でおいしい七味唐辛子に出合ってから、そちらにも凝るようになって。店で自分で調合することができるんです。いつも行くたびに「麻の実抜き、さんしょう多め」にブレンドして買っています。これじゃなきゃ駄目。赤みそには、さんしょうのピリッとした味が欠かせません。

 みそ汁といえば思い出すのが、小学校の頃。学校から帰ると、残りご飯にみそ汁を掛けて食べたものです。がーっとかきこんで、野球に行きました。食べるのに時間がかかると、友達から「何やってるんだ」と怒られる。ものすごいスピードで食べて、家を飛び出しました。時々家にご飯が残っていないことがあって、そんな時は力が入らずに三振でした(笑)。

 今はジャーでいつも保温になっていますよね。今度、保温しないで冷や飯にして、みそ汁を掛けて食べてみよう。童心に帰って、そんなことを考えています。(聞き手=菊池武顕)

 のぐち・ごろう 1956年岐阜県生まれ。71年に「博多みれん」でデビュー。「青いリンゴ」のヒットで一躍スターに。今年デビュー50周年を迎え、コブクロ・小渕健太郎氏作詞・作曲の記念シングル「光の道」とメモリアルアルバムをリリース。8月30日~9月5日、東京「COTTON CLUB」でライブ開催予定。
 

おすすめ記事

食の履歴書の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは