虫すだく

 虫すだく。都会の草むらでも虫たちが、秋めく夜風に乗って鳴き声を競う。独唱、合唱、輪唱。夜長のBGMにしばし聞き入る▼小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、虫の音に「音楽」を聞き取る日本人の細やかな感性をたたえた。平安の昔より、祖先たちはこの時季、野山に出ては月をめで、「虫聞き」を楽しんだ。江戸時代になると、春の花見、秋の虫聞きは、庶民の娯楽になった▼かように日本人と虫との付き合いは古いが、文芸評論家・山本健吉さんの随筆で意外な事実を知った。万葉人は秋に鳴く虫を全てコオロギと称していたという。その後、種類ごとに呼び名は定まるが、鳴き声の捉え方も違った。かつてはチンチロリンがスズムシで、リンリンがマツムシだったとある。そのままなら童謡「虫のこえ」の歌詞は違ったものになったかも▼最近の虫の話題は「聞く」ではなく「食べる」。来る食料危機に備え昆虫食が地球を救うとの触れ込みで注目が集まる。FAOも後押しする。国産カイコの釜揚げ、タガメサイダー、昆虫ふりかけなど商品も続々。通販や店舗で気軽に買える▼無印良品が徳島大学と開発したコオロギの粉末入りせんべいを食べてみた。いける。「虫聞き」ならぬ「虫食べ」文化。無視できない未来食になるかも。

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