次期作支援の変更 前向き投資の芽摘むな

 園芸農家らの次期作を支援する国の事業の運用変更は、交付金の減額などで生産現場に大きな影響を与えそうだ。経営が圧迫されないよう農水省は対処すべきである。前向きな取り組みを促すのが事業の目的であり、意欲をそがない手だても必要だ。同省は農家らの声を聞き、誠実に応えなければならない。

 問題の事業は高収益作物次期作支援交付金。新型コロナウイルスの流行で売り上げが減るなどの影響を受けた野菜、花き、果樹、茶について、次期作に前向きに取り組む農家を支援するのが狙いだ。2~4月に出荷実績があるか、廃棄などで出荷できなかった──ことを対象農家の要件に設定。生産コストの削減や品質向上などに必要な掛かり増し経費の2分の1相当を、定額で交付するとしていた。

 ところが同省は今月、前年からの売り上げの減少などを要件に追加。また減収額を交付額の事実上の上限とした。コロナ禍の影響を受けていなくても交付金を支払ったり、減収分を超えて支払ったりすれば、批判を受けかねないというのが理由だ。

 しかし、農家によっては次期作の取り組みを始めており、交付金を前提に、機械・施設や生産資材の購入など投資を行っている。交付金が減額や不交付となれば、想定外の負担を抱えることになる。同省の制度設計の甘さが原因であり、経営と営農に支障を来してはならない。

 また同省の当初の説明からは、減収農家だけの支援策とは受け取りにくい。業務用をはじめ従来の需要が全国的に減少する中でも、販路の転換や新たな需要の確保などを通じ、国産農産物の消費の維持・拡大を図る積極策と評価できる。農家には運用を元に戻すべきだとの要望は根強い。コロナ禍という危機の克服には、「攻めの経営」が必要との意識が高まったといえる。この機運を生かす施策を講じるのは、同省の役割である。

 今回の問題では、責任の所在の明確化を含め同省が農家に直接説明することが重要だ。国の制度設計に基づきJAなどが推進してきた。そのことで苦しい立場に置かれてしまうと、地域農業振興の妨げにもなりかねない。農家らの声を直接聞くことは、善後策の必要性の認識と具体策の検討にも役立つ。同省は説明会を始めているが、スピード感を持って進めてほしい。

 事業の実施では対象農家全てに支援が届くよう、必要な予算を確保することも同省に求めたい。減額・打ち切りへの不安があると、取り組みをためらうことにもなる。財源不足にはしないと表明することが大切だ。

 菅義偉内閣は発足したばかりだ。農政手腕が問われるのはこれからであり、この問題で農政不信を招いてはならない。来年度と今年度第3次補正の予算案を巡る政府・与党の調整が年末に向けて本格化する。これらも視野に善後策をどうするか。生産現場の実情や農家の意向をよく知る国会議員の出番である。

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