核禁条約1月発効 廃絶への道 政府は示せ

 核兵器の保有や使用を全面的に禁じる核兵器禁止条約の批准が、発効に必要な50カ国・地域に達した。来年1月22日に発効する。政府は批准しない方針だ。日本は唯一の戦争被爆国である。核兵器廃絶への国際的取り組みを先導するのが使命ではないか。「核なき世界」への道筋と実現への戦略を示すべきだ。

 核禁止条約は2017年7月に国連総会で採択された。核兵器の開発や実験、製造、保有、使用だけでなく威嚇も禁止し、核兵器を違法化する内容だ。国連のグテレス事務総長は「核兵器使用による壊滅的な人道的結末に目を向けさせた世界の運動が成就した」とし、核廃絶が「国連の軍縮問題の最優先事項」と決意を表明した。

 多くの困難の中で、条約の制定・批准を働き掛けてきた広島・長崎の被爆者や核実験被害者、NGOなど関係者の粘り強い取り組みの成果である。敬意を表したい。

 核軍縮の国際的枠組みとして、米ロ英仏中の5カ国に核保有を認めた上で、軍縮交渉を行う義務を定めた核拡散防止条約(NPT)があるが、動きは停滞。むしろ核保有国が増えてしまった。こうした核保有国への非保有国の不満と危機感が、核禁止条約制定の背景にある。

 問題は、批准していない国への拘束力はなく、核保有国とその同盟国が反対していることだ。このため条約の発効だけでは核廃絶につながる可能性は低い。しかし核廃絶への国際世論が高まり、批准国が増えれば、核保有国に軍縮を促す大きな圧力になる。

 核禁止条約について日本政府は、不参加の方針を変えていない。米国を含む核保有国から支持を得られていないことや、同条約とのアプローチの違いを理由に挙げている。背景には、米国の核抑止力に頼らざるを得ないとの判断があるとみられる。一方で政府は、核廃絶の目標は共有しているとし、核保有国と、核禁止条約を支持する国などとの「橋渡し役」を果たす考えを示している。

 核禁止条約の制定を受け、核保有国と非保有国の溝が深まったとの指摘がある。それだけに「橋渡し役」として日本は、核廃絶へどういう構想を描き、具体的にどう行動するのかが、より問われる。被爆者の耐え難い苦しみに寄り添い、核廃絶の願いを共有する世界の人々が、日本の対応を注視している。核禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加するかどうかも、その一つである。また、核保有国に、同条約を支持する国との対話を促すことも重要だ。

 核兵器は日本にとって目の前の脅威である。近隣にはロシアや中国といった核保有国があり、北朝鮮も開発。米国と中国の覇権争いも激しい。核廃絶という目標に政府も与野党も違いはあるまい。今国会で、政府はもとより各党もビジョンを提示し、論戦を通じて日本の方針を練り上げていくべきである。

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