新過疎法・要件変更案 自治体に波紋 人口の実態考慮して “対象外”なら事業頓挫

農作業をするニセコ高の生徒。同校は地域に徹底的に根差した教育が特徴だが、ハウスをはじめ施設は老朽化している(北海道ニセコ町で)

 今年度で期限切れとなる過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)に代わる新法案で、財政支援を受けられる「過疎地域」の指定から外れる恐れがある自治体に、動揺が広がっている。自民党の議論では、指定要件となる人口減少率の基準年を変更する案が有力となっているためだ。「田園回帰に逆行する」「財源不足で事業が継続できない恐れもある」などとして、継続や経過措置を求める意見が続出。一方で「人口減少の実態に合った基準にするべきだ」との声もある。(尾原浩子)
 

北海道ニセコ町


 過疎法について議論する自民党過疎対策特別委員会では、人口減少の起点について現行法の1960年ではなく、75年または80年とする案が浮上している。同法の対象は他に複数の要件があり、基準年の変更も決定ではないものの、適用されれば過疎地域から“卒業”する自治体が出てくる見通しだ。

 北海道ニセコ町。全国でも珍しい町立の農業高校、北海道ニセコ高校があり、農家実習、地域の特産品開発、地元企業と連携したPRなど、地元に根差した運営が特徴だ。

 同町はスキー場などがある道内屈指のリゾート地として有名だが、多様な農作物が栽培される農業地帯でもある。地域おこし協力隊員や移住者の受け入れも熱心に進め、住民の話し合いを大切にする地域づくりを進めてきた。同校はそんな町の核となる存在だ。

 同町の人口は、現行法の算定要件となる国勢調査(2015年)時点で4958人。1960年に比べ4割減だが、75年とはほぼ同じ。80年に比べると400人増えるため、新法の対象から外れる可能性がある。

 人口増の内実は、町に憧れて移住する定年退職した世代(65歳以上)が中心だ。高齢化率は27・2%(15年)と、全国平均(26・6%)よりも高い状態が続いている。

 町は昨年、過疎債を活用し、住民の避難所にもなっている同校の体育館を改修した。学校側からは朽ちてしまったガラス温室の棚の改修も求められている。学校の維持には多額の予算がかかり、近年は過疎債を教育環境の充実などに使ってきた。

 町は「持続可能な地域づくりに向け、移住者を呼び込む住宅設備も進める予定だったが、過疎法の対象から外れれば計画が頓挫する可能性まで出てきた」(総務課)と主張。人口密度や、財政力指数なども低いとして「地域の実情を鑑みてほしい」と、新法でも対象になるよう求める。
 

「変更やむなし」の声も


 同町以外にも、対象から外れる可能性がある自治体は多い。沖縄県の試算によると、新たな案が適用されれば、現在の指定対象18市町村のうち半数が対象から外れてしまう。県地域離島課は「離島など小さな自治体にとって影響は大きい」として、幅広い地域が対象になるように求めている。

 ただ、西日本の一部自治体からは「人口が極端に減っていない自治体も支援されることは、国民の幅広い理解を得られない」などと、案を支持する声も上がっている。

 自民党過疎対策特別委員会は今後議論を深め、年末までに「施策大綱」を示したい考えだ。

 委員の一人は「“卒業”する自治体が出るのはやむを得ない。経過措置など、財政力が弱い自治体をどう支援するかは、今後の課題だ」と説明している。
 

<ことば> 過疎法


 1970年に議員立法として制定された。その後、政府は4次にわたり制定。元利償還の70%を交付税措置とする過疎対策事業債を中心に、国庫補助金の補助率かさ上げ、税制特例措置などで過疎地域を支援する。現在は、全市町村の48%の817市町村が対象だ。道路や水道、学校などや農業、医療、教育などでも活用できる。
 

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは