農業従事者40万人減の136万人 減少率、過去最大 20年農林業センサス
2020年11月28日

農水省は27日、2020年農林業センサス(2月1日現在)の調査結果を発表した。主な仕事が農業の「基幹的農業従事者」は136万1000人と、5年前の前回調査から39万6000人(22・5%)減った。減少率は、比較可能な05年以降で最大。高齢化が大きく響いた。一方、1経営体当たりの耕地面積は初めて3ヘクタールを超え、経営規模の拡大が進んだ。
基幹的農業従事者は一貫して減り続けており、減少ペースも加速している。同省は、この要因の一つに高齢化を挙げる。20年の基幹的農業従事者の平均年齢は67・8歳。65歳以上の割合は4・9ポイント増の69・8%に達した。「70歳を超えると、離農するか、統計対象とならない規模に経営を縮小する傾向にある」(センサス統計室)という。
全国の農業経営体数は107万6000で、前回より30万2000(21・9%)減った。前回の5年間の減少率(18%)と比べ、やはり減少のペースが加速している。
農業経営体のうち、家族で営む個人経営体の数は103万7000で、前回から30万3000(22・6%)減った。一方、家族以外の「団体経営体」は3万8000と、1000(2・6%)増えた。このうち、任意組織の集落営農などを除いた法人経営体は3万1000で4000(13%)増加。会社形態の法人の増加が貢献した。
担い手の減少に伴い、経営規模が拡大する傾向は鮮明となった。全国の1経営体当たりの耕地面積は3・1ヘクタールで、前回の2・5ヘクタールから21・5%増えた。北海道が30・6ヘクタール、都府県が2・2ヘクタールで、それぞれ初めて30ヘクタール、2ヘクタールを超えた。耕地面積が10ヘクタール以上の割合も増えて全国で55・7%となり、初めて過半に達した。
耕地面積別に経営体の増減率を見ると、北海道は100ヘクタール以上の経営体が増加。都府県も10ヘクタール以上の経営体が増えた。いずれも、それを下回る面積の経営は減った。同省は「農業経営体の減少が続く中で、法人化や規模拡大が進展している」(同)と分析する。
農林業センサスは、全ての農業経営体を対象に5年に1度行う農業版の国勢調査。今回は精査が済んだ統計の概数値を公表した。農地関係などの統計を含めて、確定値は来年3月以降に公表する。
基幹的農業従事者は一貫して減り続けており、減少ペースも加速している。同省は、この要因の一つに高齢化を挙げる。20年の基幹的農業従事者の平均年齢は67・8歳。65歳以上の割合は4・9ポイント増の69・8%に達した。「70歳を超えると、離農するか、統計対象とならない規模に経営を縮小する傾向にある」(センサス統計室)という。
全国の農業経営体数は107万6000で、前回より30万2000(21・9%)減った。前回の5年間の減少率(18%)と比べ、やはり減少のペースが加速している。
農業経営体のうち、家族で営む個人経営体の数は103万7000で、前回から30万3000(22・6%)減った。一方、家族以外の「団体経営体」は3万8000と、1000(2・6%)増えた。このうち、任意組織の集落営農などを除いた法人経営体は3万1000で4000(13%)増加。会社形態の法人の増加が貢献した。
担い手の減少に伴い、経営規模が拡大する傾向は鮮明となった。全国の1経営体当たりの耕地面積は3・1ヘクタールで、前回の2・5ヘクタールから21・5%増えた。北海道が30・6ヘクタール、都府県が2・2ヘクタールで、それぞれ初めて30ヘクタール、2ヘクタールを超えた。耕地面積が10ヘクタール以上の割合も増えて全国で55・7%となり、初めて過半に達した。
耕地面積別に経営体の増減率を見ると、北海道は100ヘクタール以上の経営体が増加。都府県も10ヘクタール以上の経営体が増えた。いずれも、それを下回る面積の経営は減った。同省は「農業経営体の減少が続く中で、法人化や規模拡大が進展している」(同)と分析する。
農林業センサスは、全ての農業経営体を対象に5年に1度行う農業版の国勢調査。今回は精査が済んだ統計の概数値を公表した。農地関係などの統計を含めて、確定値は来年3月以降に公表する。
■この記事の「英字版」はこちらをクリックしてください。
おすすめ記事
コロナとJA総会 議案事前説明に工夫を
JAの総会・総代会のシーズンを間もなく迎える。新型コロナウイルスが再び拡大し、事前の地区別説明会などの開催が難しいケースもありそうだ。組合員への議案説明や、質問・意見聴取を十分に行うことが重要だ。各地の事例も参考に集まらなくてもできる工夫をしたい。
JAの通常総会・総代会は例年3~6月が多い。数百人単位で集う大規模な会議体であり、密閉・密集・密接の「3密」を避ける工夫や対策が必要だ。感染状況の見通しが立たず、開催時期や会場の選定にも苦労するが、終息していないことを前提に準備すべきだろう。
感染リスク低減へ昨年は、来賓あいさつを省くなどで時間を短縮したり、出席者を抑えるため書面での議決権行使を依頼したりするといった対応が目立った。会場ではマスク着用や検温を依頼、消毒液を置き、会場の座席や換気、マイクの使用にも目配りした。組合員や役職員の感染を防ぐためこうした対応が今年も引き続き必要になろう。
感染防止とともに重要なのは議案内容への理解醸成だ。総会・総代会に向け、地域農業やJAの現状、課題を組合員と共有し、議案を説明し、意見を聞き、必要に応じて議案に反映させる取り組みが欠かせない。3密回避のため昨年は、地区別説明会などを中止せざるを得なかったJAが目立った。説明や意見の聴取・交換の場が減り、JAと組合員の距離や情報格差が広がるということがないよう注意しなければならない。
そのための実践例は各地にある。昨年7月に総代会を開いた三重県のJA伊勢は、約50分の議案説明用DVDを作成。事前説明会を中止し、書面議決を推奨したため説明を尽くそうと準備し、総代930人に資料や質問書と一緒に送った。
長崎県のJA壱岐市は同市のケーブルテレビを活用。総代会の議案の要点を収録し、6月の2週間にわたり1日2回放送した。JA兵庫南は、総代会資料を組合員に配布し、質問を募り、全質問を集約して一問一答形式でまとめた資料を再び組合員に配るなどした。
感染の防止と組合員への議案の説明や理解の浸透を両立させる手法として、各地の取り組みは参考になる。また、デジタル化が進み、ウェブ会議や動画配信も活用できるだろう。こうした対応は時間と労力が要る。早めの準備が肝要だ。
総会・総代会はJAの最高意思決定機関であり、事業計画や剰余金処分、役員選任など組織の重要案件を決める機会である。組合員の関心の高い自己改革の報告や支所・支店統廃合計画などの案件もあろう。
新型コロナ下で制約が多い中だが、議案について説明責任を果たし、理解を醸成するための工夫がJAには求められる。一方、JAの主役として組合員は、資料を読み込み、書面などによることも含めて、質問や意見、要望を伝えよう。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月25日
米、輸出へ「新JAS」 23年産めざし検討会議 農水省
農水省は20日、農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会を開き、農産物検査や米の流通に関する見直し項目について、今後の具体的な検討の進め方を示した。米の輸出拡大や高付加価値販売に向けた新しい日本農林規格(JAS)の制定については、2023年産米からの実現を目指して、検討会議を設ける。……
2021年01月21日
緊急事態で農産物価格低下 「生産者を下支え」 農相
野上浩太郎農相は22日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令の影響で、花きなど一部の農産物の価格が低下しているとの認識を示した。「生産者の下支えを図りたい」と述べ、2020年度第3次補正予算の事業で販売促進を支援する考えを示した。
野上農相は、緊急事態宣言による外出の自粛や飲食店の営業時間の短縮で、ホテルや贈答向けのメロン、外食向けの大葉・ワサビといったつま物の需要が減少し、「価格が下がり始めている」と述べた。……
2021年01月23日

農福連携の選択肢広げる“技あり” ICT活用「体動かなくても活躍の場」
情報通信技術(ICT)やスマート農業の進歩で、体を動かすことができない重度身体障害者らも農業分野で活躍できる環境が整ってきた。接客やAI機器開発の一端を担うなど、農福連携の新たな姿を見せている。専門家は「障害者の雇用の幅が広がる可能性を秘めている」と話す。(川崎学)
分身ロボ 農産品PR
宮城大学は遠隔操作が可能な分身ロボット「OriHime(おりひめ)」を使い、重度の身体障害者が接客販売をする実証実験をした。……
※次ページで梨収穫ロボットの開発に関わるNPO法人あさがお(福島県南相馬市)の紹介があります。
2021年01月26日
農家のコロナ対策 リスク管理で経営維持
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、改めて農業者に注意を呼び掛けたい。基本的な予防対策に加え、不測の事態に備えた代替要員の手当てなど、経営維持のためのリスク管理を徹底しよう。
恐れていた冬場のコロナ第3波が各地で猛威を振るっている。今月発令された2度目の緊急事態宣言は、首都、近畿、中京圏など11都府県に拡大。茨城、熊本、宮崎、沖縄などは県独自の緊急事態宣言を発令した。そこに静岡県で変異ウイルスの市中感染も確認され、危機感はさらに募っている。感染の波は、大都市部から地方都市へと広がり、今やどこで感染が起きても不思議ではない。
農水省によると、農業者や農業関連施設での大規模な集団感染は報告されていないが、油断は禁物だ。「野外作業が中心の農業は大丈夫」「ハウス内も換気に気を付ければ心配ない」。そんな思い込みや「コロナ慣れ」に陥っていないか。生産現場での感染拡大は経営や農畜産物の供給に影響するだけに、感染防止の基本に立ち返りたい。
緊急事態宣言の再発令を受け、政府は改めて、業界団体が中心になって作成した業種別ガイドラインの順守を呼び掛ける。ガイドラインは、各業界の実態に沿った感染防止策と事業継続に関する内容を盛り込む。農業関係者向けは大日本農会、畜産事業者向けは中央畜産会がそれぞれ作成して、周知・活用を働き掛けている。
農業者向けのガイドラインは団体のホームページで随時更新、順守すべきチェックリスト表も載せ、すぐ使えるようになっている。まず予防対策の基本は、日々の検温、「3密対策」、マスク着用、人との2メートルの間隔、適切な換気、作業場や事務所への飛沫(ひまつ)防止用シートの設置などだ。通常の手指消毒に加え、ドアノブや手すり、便座など人が触れる所は水と洗剤で拭き取る。共有するはさみなどの道具類の清掃も同様だ。また作業服は小まめに洗濯し、完全に乾いたものを着る。
ガイドラインは、こうした日常の衛生管理対策に加え、感染者発生時の対応、業務継続に向けた備えを求める。家族経営の場合、1人の感染でも営農の継続は難しくなる。不測の事態に備え、生産部会の仲間やJA職員ら代替要員のリストを作り、作業手順が分かるようにしておく。農業法人の場合も同様だ。あらかじめ組織内に支援体制を整備し、責任者や担当者を決め、事務所や作業場の速やかな消毒、代替要員の手当て、作業工程や動線の変更、関係機関との連携に取り組むよう求める。
特に代替要員は、人手不足の下ですぐに手当てできるとは限らない。国籍や職業を問わず代替要員を受け入れた農家の掛かり増し経費を助成する農水省の「農業労働力確保緊急支援事業」などを活用したい。感染リスクを想定し事前に備えることは、今や経営者の責任である。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月23日
農政の新着記事
熟練猟師が担い手育成 ペーパー狩猟者に同行 環境省、制度化へ
環境省は、狩猟の担い手不足の改善を狙い、2021年度から「狩猟インストラクター制度」の構築に乗り出す。有害鳥獣としての捕獲数の増加や人や農作物への被害に歯止めがかからない中、熟練者が現場に同行して経験や技術を教える仕組みを想定。鳥獣害管理に携わる人材育成に向けて、複数県で試行後、全国規模の制度として展開する方針だ。
同省によると全国の狩猟者免許所持者数は16年時点で20万人。……
2021年01月26日
日本食の親善大使 ポーランド ベナン… 18カ国を初任命
農水省は国産農林水産物の輸出拡大に向けて、日本食・食文化の情報発信に取り組む「日本食普及の親善大使」に、海外で活動する料理人など36人を任命した。日本食・食文化への関心が高まっているヨーロッパやアジアを中心に30カ国・地域で任命。このうち、韓国やシンガポールなど18カ国で初めて任命した。
ポーランド初の親善大使には、同省主催の外国人向け寿司コンテスト「ワールド・スシ・カップ」で優勝経験のある日本食レストランのオーナーを任命。スペインの大使に任命したアンドニ・ルイス・アドゥリス氏は、世界的に知名度の高いレストラン「ムガリッツ」のオーナーシェフで、日本の食材や日本食への造詣が深いという。アフリカ大陸初の大使として、ベナンの日本食レストラン経営者も任命した。
同親善大使は2015年から任命しており、今回を合わせて海外で44カ国・地域の87人、国内で58人の計145人を選んだ。同省の事業への協力やメディアでの情報発信、海外の日本食レストランなどへの助言を通じ、日本食・食文化の普及に取り組んでいる。
同省は「今後も海外での任命を増やし、日本食・食文化の普及を通して国産品の輸出拡大につなげたい」(海外市場開拓・食文化課)と話す。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月26日

大雪被害の新潟県を視察 営農再開へ支援強調 農相
野上浩太郎農相は23日、昨年12月からの記録的な大雪で農業被害が発生した新潟県の南魚沼市と上越市を視察した。両市で倒壊した育苗ハウスを視察後、上越市で行政やJA関係者、農家らと意見交換。春の営農に向けた支援を求める要望があり、野上農相は「施設の撤去や再建、種子や苗の確保、果樹の植え替え、畜産被害の対応などの支援が必要だ」と述べた。
南魚沼市では、JAみなみ魚沼の育苗ハウスを視察。……
2021年01月24日
富山で鳥インフル 14万羽殺処分 16県目
農水省と富山県は23日、同県小矢部市の採卵鶏農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。県は同日から採卵鶏約14万1000羽の殺処分など防疫措置を始めた。高病原性と確認されれば今季38例目で、同県の農場での発生は初めて。全国では16県目となる。
発生農場では、22日に約2000羽の死亡を確認して通報。23日午前8時に高病原性の疑いがあるH5亜型と判定した。県や自衛隊など720人態勢で殺処分を始めた。県によると、3、4日かかる見通しという。
発生農場から半径3キロ圏内の移動制限区域には養鶏場はないが、半径3~10キロの搬出制限区域には4戸が約72万3000羽を飼育している。
同日は宮内秀樹農水副大臣が新田八朗知事とウェブ会談で対応を協議。鳥インフルエンザ防疫対策本部で、野上浩太郎農相は飼養衛生管理基準の徹底を訴え、勧告や命令を経ても「基準を順守しない者に対して、県による命令違反者の公表を実施するよう国が指示するなど、家畜伝染病予防法に基づく措置を厳格に適用していく」と強調した。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月24日
食料供給確保へ連携 気候変動にも対応 閣僚宣言を採択 ベルリン農相会合
世界の90の国・国際機関が参加したベルリン農相会合が22日夜、テレビ会議形式で開かれた。新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動への対応が世界的な課題になる中、食料供給の確保に向けて連携を強化することで一致。食料価格の乱高下につながる輸出規制などの措置の制限、持続可能な農業生産に向けた国内農政の改革など、各国に求める行動をまとめた閣僚宣言を採択した。
同会合は、ドイツ政府主催で2009年以降、毎年開いている。今回のテーマは「パンデミック(世界的大流行)や気候変動の状況下で、いかに世界の食料供給を確保するか」。日本から出席した野上浩太郎農相は、人と家畜に共通する感染症を含めた「将来のパンデミック防止」の分科会で議長を務めた。
閣僚宣言では、新型コロナ禍の中で食料供給に努める農家らに「深い感謝」を表明。一部の国が食料の輸出を規制したことを念頭に、「貿易の不必要な障壁や、世界の食料供給網に混乱を生じさせてはならない」「食料価格の過剰な乱高下につながりかねない、いかなる措置も行われないよう注意する」などと明記した。
持続可能な食料供給と気候変動への対応の両立を重視する方針も打ち出した。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」の目標達成に向けて、「市場と規制措置を含む国内政策を実施する」と表明。化石燃料の使用を削減する生産方法や作物の開拓を支援する。新たな技術は、特に小規模農家が導入しやすい価格にする必要性を強調した。
野上農相は、鳥インフルエンザなど越境性の動物疾病の感染拡大が食料安全保障のリスクを高めるとの考えから、人や動物の保健衛生を一体的に見る手法が重要と指摘。農林水産業の生産力向上と環境保全を両立するため、技術革新と投資を促す必要性を訴えた。こうした考え方も閣僚宣言に盛り込まれた。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月24日
輸出で地方空港を活用 米から野菜へ転換支援 首相
菅義偉首相は22日の参院本会議の代表質問で、農林水産物・食品の輸出拡大のため「輸出対応型の集荷施設を整備するとともに、地方空港の活用を進める」と述べた。公明党の山口那津男代表への答弁。米政策を巡っては余剰米の買い上げを否定し、需給均衡に向けて「野菜などの高収益作物への転換を支援していく」と述べた。共産党の小池晃書記局長への答弁。
輸出拡大に関して、首相は「(輸出向け)産地の育成と合わせ、集積拠点や効率的な輸送ルートといった物流基盤の強化が重要だ」とも述べた。……
2021年01月23日
緊急事態で農産物価格低下 「生産者を下支え」 農相
野上浩太郎農相は22日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令の影響で、花きなど一部の農産物の価格が低下しているとの認識を示した。「生産者の下支えを図りたい」と述べ、2020年度第3次補正予算の事業で販売促進を支援する考えを示した。
野上農相は、緊急事態宣言による外出の自粛や飲食店の営業時間の短縮で、ホテルや贈答向けのメロン、外食向けの大葉・ワサビといったつま物の需要が減少し、「価格が下がり始めている」と述べた。……
2021年01月23日

配合飼料高騰 長期化に農家恐々 負担増へ先手置き換え急ぐ 食べ残し削減徹底
トウモロコシや大豆など穀類相場の高騰で、国内で配合飼料の供給価格が上昇しているため、畜産現場に長期的な影響が及ぶ可能性が出てきた。JA全農によると、1~3月期の配合飼料供給価格は昨年10~12月期に比べ、全国全畜種総平均で1トン当たり3900円値上げされている。産地は、年内は高値が続く可能性があるとして、代替飼料の活用など新たな対策を模索し始めた。(関山大樹、中川達己)
北海道中標津町のTMR(完全混合飼料)センター「とうほろDairyCenter」は、配合飼料に大豆やトウモロコシなどを混ぜた混合飼料を作り、地域の酪農家の乳牛約1250頭に供給している。だが、飼料や原料を貯蔵する12個のタンクのうち現在、大豆だけが空の状態だ。
今冬、大豆を取引するメーカーに1トン当たり5000円の値上げを打診された。従来通りに飼料生産をした場合、年間400万円の負担増になる。代替策として、飼料の主要なタンパク源を加熱大豆から、タンパク含有率のやや低い「コーングルテンフィード」に置き換えた。
センターは大豆の他、トウモロコシ、しょうゆかす、配合飼料なども使う。代表の竹村聡さん(57)は「このままだと値上がりでさらに経費が増えるため、タンパク源を替えて早めに対策を打った」と説明する。
芽室町で肉用牛約4000頭を飼養する大野ファームは月700トンほど配合飼料を購入しており、飼料高騰前に比べ、毎月210万円経費がかさんでいる。代表の大野泰裕さん(56)は「配合飼料はすぐ置き換えられるものではないが、長期的に影響が続いた場合を考え、国産で置き換えられるものがあれば少しずつ替えていく」と見据える。
九州でも畜産農家が対応に苦慮する。飼養頭数50~100頭規模の養豚農家が多い宮崎県のJA都城では「豚の餌の食べこぼしを減らすなど、餌を無駄にしないこれまでの対策を継続し、徹底するよう呼び掛ける」(養豚課)としている。
穀類の国際価格の基準となるシカゴ先物相場では20日(米国現地時間)、トウモロコシが1ブッシェル5・22ドル。大豆も1ブッシェル13・70ドル。昨年1月の同相場はトウモロコシが同3ドル台、大豆は同8ドル後半~9ドル台で推移しており、今年は高値が続く。
相場高騰は昨年8月以降、南米や米国など主産地での高温乾燥や暴風雨による生育不良が原因。中国で飼料用の需要が増え、旺盛な輸入が続くことも影響した。
米国農務省が1月12日に発表した需給予測では、今年8月末の大豆の期末在庫は全需要量の3・1%と極めて低い水準に落ち込む見込み。穀類の需給逼迫(ひっぱく)が続けば、国内の配合飼料供給価格が高止まる可能性がある。
一方、1~3月期の配合飼料安定基金の補填(ほてん)額の決定は4月中旬を予定。発動されれば、5月末に支出される。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月22日

千葉 アヒルで鳥インフル 出荷先6道府県 処分完了
農水省と千葉県は21日、同県横芝光町のアヒルふ卵農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認し、約8000羽を殺処分した。今季37例目となる。アヒルのひなの出荷先である疫学関連農場は北海道、宮城、茨城、埼玉、大阪、奈良の6道府県9農場に及び、同日に各自治体が約6700羽の殺処分を終えた。
発生農場が20日、産卵率の低下を県に通報。農水省によると、産卵率低下は高病原性鳥インフルエンザでも起きる症状で、防疫指針にも記載がある。21日に遺伝子検査で高病原性の疑いがあるH5亜型と判定された。
千葉県は発生農場で防疫措置を実施。同農場から半径3キロ圏内の移動制限区域には5戸が約17万羽を、半径3~10キロ圏内の搬出制限区域には25戸が約126万羽を飼う。
疫学関連農場では、発生農場が7日間以内に供給したひなを疑似患畜とし、同じ鶏舎などで管理するアヒルを殺処分した。疫学関連農場周辺では、移動制限・搬出制限区域を設けていない。
出荷先も殺処分 拡散防止へ厳重警戒
アヒルのひなの出荷先道府県では、ひなを疑似患畜として同日中に殺処分を完了。当該農場の家禽(かきん)の移動を禁止するなど、対応に追われた。
埼玉県は同日、県内2カ所に出荷されていたアヒル2159羽の殺処分を終えた。対象は行田市の879羽、春日部市の1280羽。2月5日まで2農場の全ての家禽の移動を控えるよう求めた他、農場の出入り口を1カ所に制限し、農場外に物品を搬出しないよう要請した。
茨城県も、かすみがうら市の1農場、古河市の2農場で計2884羽の殺処分をした。対象外の約8600羽は移動を禁止し、14日間の健康観察を経て異常がなければ、2月5日にも解除する。
年間700万羽を加工する茨城県の食鳥処理会社の関係者は「ウイルスを持ち込まれては加工処理も止まってしまう。改めて処理道具の熱処理や出入り口、車両の消毒など、予防対策を徹底していくしかない」と話す。
北海道は、赤平市の農場のアヒルのひな637羽を疑似患畜と決定し、21日午前1時44分に殺処分を完了した。同農場では食用アヒル約4000羽を飼養。ひなは19日に到着し、単独の鶏舎で飼っていた。
道は21日、家畜伝染病予防法に基づき同農場に対し、家禽などの移動を禁止し、毎日の死亡羽数を空知家畜保健衛生所に報告するよう命令した。
宮城県は、角田市の養鶏場が15日に導入したアヒル517羽の殺処分と農場の防疫措置を、21日朝までに完了した。養鶏場では約7000羽のアヒルを飼っており、殺処分対象外のアヒルも検査と経過観察を行う。移動制限区域などは設けず、周辺鶏農家へ情報提供をした。
奈良県御所市の農場では21日、全205羽の殺処分・防疫措置が完了した。同農場ではアヒル約2000羽を飼養。当該のひなは複数ある鶏舎の1カ所で飼っていたため、残る家禽とは接触がないという。
大阪府も、府内の農場が購入したひな326羽を殺処分し、21日午後0時45分に防疫措置を終えた。府内の農場での疑似患畜確認は今季初めて。府は警戒の強化を呼び掛ける。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月22日
生物多様性保全戦略 流通・消費者も一体で 来年度改定へ新項目 農水省
農水省は、生物多様性の保全方針を示す戦略を2021年度中に改定する。5月に中国で開かれる生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、新たな世界目標が決まることを踏まえる。これまで3回の有識者検討会を開き、ビジョンや目次案などを議論。現行戦略は生産者向けの記述が中心だったが、新戦略は流通、消費まで関係者一体となった取り組みを促す内容となりそうだ。
同戦略は07年に初めて策定し、農薬や肥料の適正使用、農業生産工程管理(GAP)の普及といった施策の展開を盛り込んでいる。今回が2回目の改定で、COP15を受けて決める国家戦略にも反映させる。これまでの議論で、30年に向けた戦略のビジョンは「農山漁村が育む自然の恵みを生かし、環境と経済がともに循環・向上する社会」とする方向となった。
18日の検討会第3回会合では、目次案などを議論。現行の戦略は生産者向けの記述が中心だが、同省は新たに流通業者、消費者向けの項目の新設を提起。環境に配慮した農産物の調達や、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの削減などを促すとした。
農林水産関連のコンサルティングなどを手掛ける、いきもの株式会社の菊池紳代表取締役は「流通業者が生物多様性に関わるには、それに取り組む生産者から優先して調達するのが一番」と指摘。生産者との連携を記述するよう求めた。立教大学特任教授の河口真理子氏は「生物多様性を守る最前線にいる生産者を応援しないと何も始まらない。リレーをつないでいるのが流通、小売りという位置関係も書いてほしい」と強調した。
次回の会合は3月上旬を予定。戦略本文などを検討する。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月22日