シイタケ原木高騰 地場産の安定確保へ奮闘 植林、“所有者マップ”作成 鳥取県
2020年12月01日
2011年の東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故を機に、シイタケ原木の価格高騰が続く中、鳥取県は県産原木の安定確保に取り組んでいる。大規模な植林に加え、早期伐採が見込める果樹園跡地の利用や、土地所有者と生産者をマッチングする市町村単位の原木林マップ作成を進める。自伐可能な原木林を整備することで、購入に頼る新規就農者らの経営維持につなげる。(鈴木薫子)
原木の確保は、自分で山林から調達する自伐型と購入に分かれる。農水省の特用林産基礎資料によると、所有林による自伐型は4割で、残り6割は中・小規模産地や新規就農者を中心に立ち木や原木を購入している。
19年のナラの原木価格は1本330円で、統計がある1980年以降では最高値。クヌギは323円で、2009年に比べると、共に4割高だ。原発事故以前は比較的安定していたが、東日本の原木主産県だった福島からの供給が滞ったことで、西日本からの移送に運賃がかかり、価格高騰につながった。
19年の干しシイタケ国内価格は1キロ3571円で、原発事故後では最高値だった16年に比べ3割安い。鳥取県で栽培指導・研究活動をする日本きのこセンター菌蕈(きんじん)研究所の長谷部公三郎所長は「干しシイタケの需要の落ち込みで、価格が低迷している。購入したほだ木では採算が合わない」と指摘する。
同センターなどのグループは、原木林の造成が急務だと考え、19年に植林を始めた。鳥取市の5ヘクタールに1万5000本のクヌギ苗を植林。15年後に長さ1メートルの原木を12万本確保できる計画だ。将来的に20ヘクタールに広げる。
県は果樹園跡地の活用を後押しする。県と市町村が、土地所有者に園地の鉄線や棚などの撤去費用の9割を助成。植林は国の造林事業を使う。果樹園跡地は土地が肥沃(ひよく)で「木の成長が早く、伐採時期が5年ほど早まる」(県産材・林産振興課)ため、早期伐採が期待できる。
事業は16年度に始まり、これまで6件1・5ヘクタール分を造成。21年度も数件の利用を見込む。
生産者が自力で原木林を探す仕組みづくりも進める。同グループと県は今年、自治体やJA鳥取いなばと連携し、市町村単位の「新・原木林マップ」作りに着手した。森林所有者へ更新された情報を聞き取る際、森林利用の意向を調査する。所有者の許可を得て、インターネットのマップ上で名前や連絡先を閲覧可能にし、生産者と所有者のマッチングに役立てる。既に鳥取市と八頭町が参加。21年1月以降、所有者の意向をマップに反映させていく予定だ。
原木シイタケで使うコナラやミズナラが枯れる「ナラ枯れ」の被害が全国規模で深刻化する中、生産者が対策に乗り出した。インターネット交流サイト(SNS)内にネットワークを立ち上げ、生産者同士で情報をリアルタイムに共有。被害状況や拡大防止策を持ち寄り、対処方法を探る。
ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が運ぶナラ菌という病原菌が木の中で繁殖することで通水が阻害され、木が枯死する伝染病。原木として使うミズナラやコナラ、クヌギの他、栗やカシワなど広葉樹に伝染し、特に高樹齢の木が被害を受けやすい。全国規模で広がりを見せている。
熊本県人吉市で、年間10万本の原木シイタケを生産する浅香康昌さん(61)は7月、シイタケを発生させるほだ場の雑木林のシイなど20本以上が枯れているのを発見した。県の調査でナラ枯れだと分かった。祖父の代から100年続く農家だが「初めての被害で対処方法が分からなかった」という。
対策の情報が少なく、自らSNSのフェイスブック上に「椎茸(しいたけ)栽培におけるナラ枯れネットワーク」を立ち上げた。全国のシイタケ生産者や専門家ら88人が参加。各県の被害状況や伐採・移動時の注意点などを投稿し、情報を共有する。
鳥取県日野町の廣瀬俊介さん(34)は、原木を確保する山林でコナラが枯れる被害に遭った。対策を探るうちにネットワークに参加。県林業試験場が作ったカシナガのせん入孔のサイズ(約1・4~1・9ミリ)が目盛りで分かる定規「カシナガスケールMiK2」を紹介した。
林野庁によると、2019年度のナラ枯れ被害量は前年度比35%増の6万500立方メートル。20年度の被害をまとめている同庁森林保護対策室は「今年はさらに増えている」とみる。廣瀬さんは「急激な広がりに情報が追い付いていない」として、積極的に情報交換をする考えだ。
自伐支援へ環境整備
原木の確保は、自分で山林から調達する自伐型と購入に分かれる。農水省の特用林産基礎資料によると、所有林による自伐型は4割で、残り6割は中・小規模産地や新規就農者を中心に立ち木や原木を購入している。

19年の干しシイタケ国内価格は1キロ3571円で、原発事故後では最高値だった16年に比べ3割安い。鳥取県で栽培指導・研究活動をする日本きのこセンター菌蕈(きんじん)研究所の長谷部公三郎所長は「干しシイタケの需要の落ち込みで、価格が低迷している。購入したほだ木では採算が合わない」と指摘する。
同センターなどのグループは、原木林の造成が急務だと考え、19年に植林を始めた。鳥取市の5ヘクタールに1万5000本のクヌギ苗を植林。15年後に長さ1メートルの原木を12万本確保できる計画だ。将来的に20ヘクタールに広げる。
県は果樹園跡地の活用を後押しする。県と市町村が、土地所有者に園地の鉄線や棚などの撤去費用の9割を助成。植林は国の造林事業を使う。果樹園跡地は土地が肥沃(ひよく)で「木の成長が早く、伐採時期が5年ほど早まる」(県産材・林産振興課)ため、早期伐採が期待できる。
事業は16年度に始まり、これまで6件1・5ヘクタール分を造成。21年度も数件の利用を見込む。
生産者が自力で原木林を探す仕組みづくりも進める。同グループと県は今年、自治体やJA鳥取いなばと連携し、市町村単位の「新・原木林マップ」作りに着手した。森林所有者へ更新された情報を聞き取る際、森林利用の意向を調査する。所有者の許可を得て、インターネットのマップ上で名前や連絡先を閲覧可能にし、生産者と所有者のマッチングに役立てる。既に鳥取市と八頭町が参加。21年1月以降、所有者の意向をマップに反映させていく予定だ。
ナラ枯れ SNSで情報共有
原木シイタケで使うコナラやミズナラが枯れる「ナラ枯れ」の被害が全国規模で深刻化する中、生産者が対策に乗り出した。インターネット交流サイト(SNS)内にネットワークを立ち上げ、生産者同士で情報をリアルタイムに共有。被害状況や拡大防止策を持ち寄り、対処方法を探る。
ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が運ぶナラ菌という病原菌が木の中で繁殖することで通水が阻害され、木が枯死する伝染病。原木として使うミズナラやコナラ、クヌギの他、栗やカシワなど広葉樹に伝染し、特に高樹齢の木が被害を受けやすい。全国規模で広がりを見せている。
カシナガのせん入孔を測る定規で被害を調べる廣瀬さん(鳥取県日野町で)
対策の情報が少なく、自らSNSのフェイスブック上に「椎茸(しいたけ)栽培におけるナラ枯れネットワーク」を立ち上げた。全国のシイタケ生産者や専門家ら88人が参加。各県の被害状況や伐採・移動時の注意点などを投稿し、情報を共有する。
鳥取県日野町の廣瀬俊介さん(34)は、原木を確保する山林でコナラが枯れる被害に遭った。対策を探るうちにネットワークに参加。県林業試験場が作ったカシナガのせん入孔のサイズ(約1・4~1・9ミリ)が目盛りで分かる定規「カシナガスケールMiK2」を紹介した。
林野庁によると、2019年度のナラ枯れ被害量は前年度比35%増の6万500立方メートル。20年度の被害をまとめている同庁森林保護対策室は「今年はさらに増えている」とみる。廣瀬さんは「急激な広がりに情報が追い付いていない」として、積極的に情報交換をする考えだ。
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そばの実パスタソース 北海道・JA新得町
全国有数のソバ産地である北海道のJA新得町が作ったトマト味のソース。ソバの実を使って初めて加工品開発に挑戦したJA自慢の商品で、ソバのうま味を凝縮している。
電子レンジで3分以内に手軽に調理できる。ドリアやスープなどさまざまな料理に利用でき、パンに付けてもおいしい。10種類の豆、雑穀、野菜などを加えた栄養の豊富さも特徴だ。JAでは「消費者に新得町がソバの産地であることや、加工の取り組みを知ってほしい」としている。
3個(1個180グラム)入り1500円(税・送料別)。十勝管内の土産店などで購入できる。問い合わせは「相馬商店」、(電)0156(64)5055。
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2021年01月15日

鳥インフル対策徹底を リーフ作成 農水省
農水省は高病原性鳥インフルエンザの多発を受け、養鶏農家に注意喚起するリーフレットを作成した。今季は渡り鳥の飛来地の他、道路や公園、森などにもウイルスが多量に存在するとし、飼養衛生管理の徹底など、対策への意識を高めてもらうのが狙い。都道府県を通じて配布し、同省のホームページなども活用して周知する。……
2021年01月15日
チバクロバネキノコバエ イチゴで特殊報福島県内初めて
福島県病害虫防除所は14日、いわき市のイチゴ圃場(ほじょう)でチバクロバネキノコバエの被害を県内で初めて確認し、特殊報第3号を発表した。イチゴへの被害は長野、茨城県などに続き7県目。……
2021年01月15日

農家に“ありがとう” みんなで伝えよう 全農 「食の応援団」 虹のコンキスタドール 的場華鈴さん
JA全農の「食の応援団」を務めるアイドルグループ、虹のコンキスタドールのリーダー、的場華鈴さん(20)が、日本農業新聞のインタビューに応じた。応援団の活動で国産農畜産物のおいしさを知る一方、農家が消費者の感謝の気持ちに触れる機会が少ないことに驚いたという。得意なインターネット交流サイト(SNS)を通じ「農家や食への『感謝』を盛り上げたい」と力を込める。
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2021年01月15日

「農業男子×総選挙」広報大使 初舞台Bリーグ会場 JA東京グループ
JA東京中央会は、男子プロバスケットボールのBリーグに所属する「アルバルク東京」と協力して東京農業PRの強化に取り組む。東京都立川市のアリーナ立川立飛で開かれたホームゲームでは、「農業男子×総選挙」で東京農業広報大使となった3人の若手農家が、初舞台として試合前のコートに登場した。
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2021年01月14日
地域の新着記事

あす阪神・淡路大震災26年 記憶風化させない
未曽有の被害をもたらした阪神・淡路大震災の発生から、17日で26年を迎える。月日の経過に伴い震災の記憶が風化する中、本紙が当時報じた現場を改めて訪れた。関係者は「当時の様子を知る人はもうほとんどいない」と口をそろえる。震災の記憶をいかに次代へ継承するか。改めて問われている。(北坂公紀)
助かった命「奇跡」 兵庫県西宮市・卸売市場
地震発生から3日後の1995年1月20日付の1面。激しく倒壊した木造建築物を捉えた写真が、地震の規模の大きさを物語る。撮影されたのは兵庫県西宮市の西宮地方卸売市場だ。
「スーパーのバイヤーと取引していたら、不意に強い衝撃が走り、天井が落っこちてきた」。当時、同市場で青果卸・中善を営んでいた前田裕司さん(65)は振り返る。
震災当日は午前4時ごろから市場で働いていた。地震発生時は、地面から突き上げられるような縦揺れの衝撃が大きく「店にトラックでも突っ込んだのかと思った。はじめは何が起こったのか分からなかった」。
木造瓦屋根で2階建てだった建物は倒壊。ただ、山積みだった荷物の上に屋根がかぶさる形で、地面との間にわずかな空間が生まれた。「命が助かったのは本当に偶然だった」。奇跡的に犠牲者は出なかったという。
当初は再建を目指したものの、膨大な建設費などを前に話はまとまらず、2001年に閉場となった。
跡地にはスーパーなどが立ち並び、当時の面影はほとんど残っていない。前田さんは「当時の様子を知る人はもうほとんどいないと思う」と指摘する。
神戸市・農林中金事務所
「農林中央金庫神戸事務所も無残な姿に」。発生1週間となる1995年1月24日付の近畿・北陸面。3階部分が押しつぶされ、大きな被害を受けたビルの写真が説明文と共に掲載された。
神戸市内にある神栄(株)の本社ビルで、当時は1、2階に農林中金の事務所が入っていた。入社7年目だった同社執行役員の中西徹さん(56)は「当時、3階が職場だったが、出勤前だった。地震が3時間後だったら、おそらくつぶされていた」と話す。ビルは掲載4日後の28日から解体が始まり、1998年には跡地に新たにビルが建てられた。
農林中金の事務所は、95年2月からは仮設店舗で、同年7月からは仮店舗に移転して営業を再開。建て替え後のビルにも戻ったが、2002年に大阪支店に統合された。農林中金は「大阪支店でも当時を知る人は少なくなり、現在では3人しかいない」と話す。
近年、大規模な災害が頻発し、過去の災害の「記憶」と「教訓」から学ぶことは多い。今後起こる災害で被害を少しでも抑えるために、薄れつつある震災をどう次代に継承するかが問われている。
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2021年01月16日

市来農芸(鹿児島)が連覇 和牛甲子園オンラインで最多33校
和牛生産に情熱を注ぐ全国の農業高校生“高校牛児”が集い、日頃の飼養管理の成果や肉質を競う「和牛甲子園」が15日、オンラインで開かれた。新型コロナウイルス禍による休校や活動制限を乗り越え、全国19県から過去最多の33校が出場した。頂点となる総合優勝には、昨年に続き、鹿児島県立市来農芸高校が輝き、2連覇を達成した。
JA全農の主催で、今回が4回目。……
2021年01月16日

農業施設被害5000棟超 大雪で東北・北陸など
記録的な大雪で東北3県と新潟、北陸3県では13日までに、合わせて5000棟を超えるパイプハウスなど農業施設の損傷、損壊の被害が報告された。除雪が追い付かず全体を把握し切れていないため、被害はさらに拡大する恐れがある。
各県が12日時点で把握した被害状況によると、岩手県では県南部を中心にパイプハウス2346棟に被害が出た。秋田県ではパイプハウスなどの農業施設1019棟が被害を受け、農作物を含めた被害額は3億円を超えた。山形県はサクランボや西洋梨など約65ヘクタールで枝折れなどの樹体被害や、パイプハウス474棟の被害が報告された。
新潟県は13日、大雪・暴風雪による農業の被害状況を発表。昨年12月14日から今年1月12日までの被害を取りまとめ、22市町村でパイプハウス785棟が損傷・損壊した他、6市でライスセンターや育苗ハウスなどの共同利用施設35棟が被害を受けた。ハウスの被害は強風によるビニールの破損などが多い。
北陸3県でも13日正午現在の各県のまとめによると、富山県ではパイプハウスや畜舎、農作業場は、全壊244棟を含む336棟が被害を受けた。石川県は累計で農業用ハウス307棟などの被害を確認した。福井県では農業用ハウスの損壊が130棟に上った。
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2021年01月14日
「災害強い地域」切望 島根・江の川氾濫から半年 移転決定も課題山積
広島県と島根県を流れる1級河川・江の川が豪雨で氾濫してから14日で半年がたち、流域では災害に強い地域づくりを望む声が高まっている。平成以降でも8回の大きな水害に見舞われるなど、危険と隣り合わせの江の川流域。常態化する災害を乗り越えようと、集団移転や堤防建設が進みつつあるが、費用がかさむなど課題は山積みだ。(鈴木薫子)
美郷町
「腹を決めた。もうここには住めん」。江の川と支流の君谷川が流れる島根県美郷町港地区。自治会長を務める屋野忠弘さん(78)ら5戸は、地区内の高台にある安全な場所への集団移転を決断した。
江の川の直近の氾濫は2020年7月14日。同県だけでも8市町で全半壊42戸、床下浸水43戸、水田は213ヘクタールが冠水した。農林水産関係被害額は約20億円に上る。
同地区は川沿いに13戸が点在するが、地形が低い上に堤防がなく、農地冠水などの水害が毎年起きる。7月の豪雨では本流が増水して支流の水をせき止める「バックウオーター現象」が起き、家屋も浸水した。
住み慣れた土地を離れたくないという思いを抱えながらも、次世代を優先させた屋野さん。集団移転は、国の防災集団移転促進事業を利用。同年9月の町議会で請願書が採決され、移転先として地区中心部の集会所近くを希望した。
だが事業は思うように進まなかった。移転先は山を切り崩して造成する必要があるが、費用が想像以上に膨らんだ。造成費用の国の助成上限は1戸約1000万円だが、試算した費用は4倍近い。高齢の移転希望者が多く、高額の持ち出しは厳しい。屋野さんは「中山間地で条件に合う所を探すのは難しい。地形に見合った助成をしてほしい」と切実だ。
同町建設課の担当者は「住民の負担を減らしたいが、町の持ち出しが膨らむ」と頭を抱え、町は費用見直しや別の移転先の選定を進める。屋野さんらは「年寄りが今から新しい場所に溶け込むのは難しい」と考え、地区内での移転を希望している。
堤防建設急ぐ 江津市
2020年7月の豪雨による江の川氾濫で浸水した島根県江津市桜江町(中国地方整備局提供)
長さ194キロ、流域面積3900平方キロの江の川。堤防が必要な区間は154キロに上るが、20年3月末現在で27%に当たる41キロ分の堤防がない。水害が常態化している地域が多いが「堤防規模が大きく建設に時間がかかる」(国土交通省中国地方整備局河川計画課)ため、整備が遅れていた。
20年7月の大規模な氾濫を受け、江津市桜江町では建設が急ピッチで進むことになった。水田やカボチャ畑が冠水した同町小田地区では、今年6月に念願の堤防が完成予定だ。支流の田津谷川流域でも用地・建物調査が進む。
田津谷川が流れる同町川越地区の渡田自治会では、18年の西日本豪雨で被災した若い世帯2組が地区外へ転居するという苦い過去がある。自治会長の小松隆司さん(64)は「(これ以上の災害は)地区が衰退しかねない」と懸念。堤防の早期建設を望む。
<メモ> 防災集団移転促進事業
災害危険区域などの住居を安全な場所へ集団移転させるもので、事業主体は市町村。20年4月に住宅団地の規模要件が「10戸以上」から「5戸以上」に緩和された。移転先の用地取得や造成、住宅建設などの費用は、国が実質94%、市町村が6%を負担する。東日本大震災を除く同事業の実施状況は、35市町村で移転戸数1854。
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2021年01月14日
鹿児島で鳥インフル 今季初、3・3万羽処分
農水省と鹿児島県は13日、同県さつま町の肉用鶏農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。……
2021年01月14日

新潟・北陸地方 記録的大雪 農業被害相次ぐ ハウス・物流影響大きく
冬型の気圧配置が強まり記録的な大雪となった新潟県や北陸地方では12日、懸命の除雪作業が続いた。ただ、生活道路や農道の多くは除雪が追い付かず、農家やJA職員が農地や農業施設に近づけない状況。被害の全容を把握するには、時間がかかる見通しだ。
新潟県上越市のJAえちご上越本店では、雪の影響で職員の出勤が通常の半分以下に限られる中、午前7時半ごろから職員約30人が雪かきに追われた。JA総務課の高橋一彦次長は「数日で2メートル超の大雪が降ったのは驚いた」と明かす。
管内の農業被害の把握はこれからだが、既に育苗ハウス8棟が雪による重みでつぶれたという報告が上がっている。県内では7日からの暴風雪により18市町村でパイプハウスの損傷などの被害が出ている。被害はさらに拡大する見込みだ。
福井県では、農産物の物流が滞るなどの影響が出た。
花き卸の福井中央花卉(かき)市場(福井市)は主要な道路が軒並み通行止めになった影響で11日のせり取引を中止。13日から通常通り行うが、入荷量は例年の5分の1以下になる見込みだ。
JA福井県直売所「喜ね舎愛菜館」(福井市)は8日ごろから出荷者が来られない状況が続き、12日には入荷も途絶えた。商品が少なく、短縮営業を続けている。
石川県でも、11日時点でビニールハウスなどの被害を確認した。
気象庁によると、日本海側を中心に降り続いた大雪で、新潟県上越市高田では10日午後2時までの72時間に187センチの雪が降った。この他、岐阜県白川村白川や富山県砺波市砺波など、6県13地点で72時間降雪量が観測史上1位を記録した。
富山、石川、岐阜の3県では、倒木や積雪で集落の孤立が発生した。
育苗間に合うか…岩手
雪の重みでハウスがつぶれ、ぼう然とする農家(12日、岩手県奥州市で。高内杏奈写す)
岩手県では県南地域を中心に農業被害が出ている。奥州市では園芸用や水稲育苗用のハウスなどが倒壊した。同市をエリアとするJA岩手ふるさと、JA江刺によると、直近10年では最も大きな被害。規模によっては、ハウスの撤去・再建を考えると、春の育苗作業に間に合うのか心配する農家もいるという。
JA岩手ふるさとの農業被害金額は、4億5700万円余り(8日現在)。雪が一気に降り、その後断続的に降り続いたという。JAは雪が消えなければ支援に動けず、全容把握を第一に取り組む。
JA江刺は6日時点での農業被害予想額は、2億4700万円余り(解体撤去費用を含まず)。積雪のため、現場に立ち入れない所があるため、さらに増えるとみている。
12日も市内で早朝にまとまった雪が降り、降ったりやんだりを繰り返した。雪の重さにつぶれたハウスに農家は一様に落胆していた。
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2021年01月13日

島の豚 海風熟成 生ハム 3月初出荷へ 香川・小豆島出身の三好さん
CFで資金、特産化手応え
香川県小豆島町出身で隣の土庄町に住む三好昭浩さん(59)は、小豆島の食材や気候を利用した長期熟成生ハムの製造を始めた。2019年の12月から仕込んだ豚の骨付きモモ肉など計50本を、クラウドファンディング(CF)で建てた海風が当たる工房で熟成中。3月には初出荷できる見込みだ。
三好さんは、43歳まで商社で加工品の商品開発をした後、神奈川県内の飲食店に勤めた。ファーマーズマーケットなどで全国のこだわりの食品に出合う中、「生産者の思いが伝わる、その土地でしかできない特産品を作りたい」と思うようになったという。
島に帰郷したのは5年前。島内で豚を放牧する鈴木農園を訪れた際に生ハム製造を思い立ち、すぐに肉の購入を申し入れたという。
三好さんによると、生ハムの産地は乾燥した高冷地が多い。小豆島は製造の適地とはいえないが、試作してみるとまずまずの出来だったという。島の特産であるしょうゆのこうじを使うなど改良を重ね、3年かけて商品化の手応えを得た。しょうゆの風味がほのかに残るためか「日本酒にも合う生ハム」と三好さん。ハムの表面には、小豆島産のオリーブオイルを塗って乾燥を防ぐ。
19年9月、土庄町に「草壁ハム製作所」を設立。工房の改装や材料の購入資金は、クラウドファンディングで調達した。熟成中の生ハムに使うのは、鈴木農園の放牧豚と県内産「オリーブ夢豚」が半分ずつ。瀬戸内海に面した山の斜面にある工房で、空調管理せず自然の空気に当てて、14カ月熟成させる。
骨付きの「原木」と、500グラムのブロックの直販を予定している。飲食店との契約も決まっており、今後さらに広げていく考えだ。
三好さんは「生ハムをきっかけに、イベントやコラボレーション企画などができると考えている。島の観光産業に貢献したい」と意気込んでいる。
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2021年01月13日

いくえ農園12年目 学びの場で心豊かに 農への思い深まる タレントの榊原郁恵さん
タレントの榊原郁恵さんが、神奈川県厚木市で農園活動を始めて12年目を迎えた。農園を“自分を成長させてくれる学びの場”と捉え、忙しい仕事の合間を縫って通い続ける。今では「農作物ができるまでどれほど時間も手間もかかるか、体で分かる」ようになった。育った作物に「感動の連続」だという。
農園は約10アール。地元のJAあつぎを仲介して借り、仲間4人で運営する。「土が合っているのか、すごくいいサトイモが取れるの」と榊原さん。仲間の70代男性は「最初はいつまで続くかなあと思ったけど、農作業に誰よりも熱心なんだよね。もう一通りの野菜作りはできるよ」と目を細める。
高校生の時に芸能界に入って以来、仕事一筋だった。「この世界以外知らないし、趣味も特にない。何か新たに学びたい。どうせなら生活に身近なもの」と考えたとき、日本の自給率の低さや耕作放棄地の問題などが目に付いた。
自分で作った農作物を食べたくなり、JAが当時開いていた農業塾に参加。出身地の厚木を活気づけたいという思いもあった。修了後も農作業を続けたくて、仲間と農園を始めた。
大好きなアスパラガスが収穫まで3年ほどかかることや、小松菜やシュンギクの種の小ささに驚いた。野菜作りについて「子育てをしているみたい。過度な愛情も、気に掛けないのも駄目。生き物を育てているんだなあ」とつくづく感じる。
在来種の栽培や加工品作りなど、やりたいことにどんどん挑戦。日本農業新聞にも活動の様子を連載した。農家と知り合い自ら農作物を作る中で、作り手と買い手の距離感にもどかしさも感じるようになった。「食べる側は野菜を当たり前にあるものと思いがちだけれど、農家が時間をかけて地道な作業をして作っている。“育てられたもの”をいただいているという感覚を一人一人が持てるように、農業に触れ合う機会が増えるといいな」
農園を続けてこられた理由に、仲間の存在を挙げる。農業について教わるだけでなく、作業も互いに協力し、励まし合ってきた。「心が豊かになり、私自身を育ててもらえた」と感謝する。仲間も年を重ね、体力的にきついと感じることもあるが、まだまだ続けたい。農への思いは深まるばかりだ。
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2021年01月12日

TACブログで情報発信 毎週更新、アクセス10倍も 滋賀・JAグリーン近江
滋賀県のJAグリーン近江は、地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)全員がブログを活用し、新型コロナウイルス下の情報発信につなげている。組合員へ訪問できないときも、栽培の注意点や研修会の案内など営農に関する情報を毎週欠かさず更新。新型コロナの支援に関する記事などは、普段の約10倍のアクセスを記録するなど注目を集める。
ブログは「JAグリーン近江TACブログ」で、今年度で10年目。……
2021年01月12日

富山で記録的大雪 安全確保し除雪を 施設被害懸念
富山県内は9日も雪が降り続き、富山地方気象台(富山市石坂)では1986年以来35年ぶりに1メートルを超える積雪を記録した。大雪となり、農家はハウスなど農業施設の被害に警戒を強めている。市内の用水路で死亡事故も発生し、関係機関は除雪中の安全確保を徹底するよう呼び掛けている。
同気象台によると、9日午後1時現在の積雪は富山120センチ、高岡伏木110センチなど。
葉物を中心としたハウスを7棟所有する富山市金屋の寺家久雄さん(72)は「こんなに降るとは思わず驚いている。ハウスがつぶれないか心配だ」と話し、周囲の除雪に余念がない。深い雪に覆われていることや交通障害もあり、県や関係機関も農業施設の被害を把握しにくい状況が続く。
県内では用水があふれて床下浸水するなど建物被害の他、雪かきに伴う人身事故が相次いだ。富山南警察署によると8日午後7時ごろ、富山市善名で80代男性が田んぼの間を流れる用水の集水ますで倒れているのを家族が見つけ、死亡が確認された。除雪作業中に転落した可能性がある。
県によると除雪機で指を切断する事故や、屋根からの転落などが各地で相次ぐ。除雪中の事故などに引き続き注意を呼び掛けている。
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2021年01月10日