“よそ者”招く好循環 小さな村に移住者続々 新規就農100%定着 北海道赤井川村

赤井川村の道の駅でJAや村役場の職員と話す柳澤さん(中)(北海道赤井川村で)

 人口が少なく、交通の便が決して良いとはいえないのに、移住者が続々と訪れ定着する小さな村が全国に存在する。子どもが増え、若者が増え、地域のファンという関係人口が行き交う。田園回帰の背景には、住民と“よそ者”だった移住者が手を携え、村の未来を共に考え、助け合って暮らし、次の移住者を引き寄せる好循環が芽生えていた。(望月悠希)
 

地域ぐるみで支援 「助け合える」実感


 四方を山に囲まれた北海道赤井川村。内陸性気候のため冬の積雪は多く、道内有数の豪雪地帯だ。2020年1月1日時点で1273人が暮らす。人口は5年前に比べて12%増加し、30代女性も増えた。呼び込んだ新規就農者は村ぐるみで支え、100%定着している。

 「自分がここまで暮らしてこれたのは、地域の人たちのサポートのおかげ」。同村でパプリカやミニトマトなど60アールを作る柳澤明さん(35)が笑顔を見せる。

 北海道積丹町出身。東京に本社がある乳業メーカーで7年間働いた。多忙な日々。妻の妊娠をきっかけに、家族との時間を大切にしようと、移住と就農を考えた。

 村の新規就農の受け入れ事業を知り、2年間の研修に参加。研修中は、JA新おたるの臨時職員として農家を手伝い、技術を学んだ。「研修での人脈が今に生きている」と柳澤さんは話す。

 台風で被災したとき、地域の人がビニールハウスの復旧を手伝い、妻が妊娠したときはご飯を持ってきてくれた。たくさんの温かい思いに触れ、柳澤さんはこの村の農業にやりがいを感じる。

 

 村と一体で新規就農者を受け入れているJA営農課振興センターの新見孝男課長は「農家や農地減少に歯止めをかけるため、若者が地域に根付き、農地を継承する仕組みをつくった。農ある景観を守りたい」と思いを語る。

 村には「人口1000人を切らせない」という危機感から始まった移住や就農への積極的な支援策がある。1996年度から研修を終えて農業を始めた全26組が村に定着。引退した人を除き、営農を続ける。住宅建設への補助、保育料や子どもの医療費無料などの支援も後押しする。

 新型コロナウイルス禍以降、村には移住相談が増えた。だが、大勢より関心を持ってくれた1人を大切にする村のスタンスは変わらない。小さな自治体のため住民との距離が近く、仕組みも柔軟に変えられるのが強みだ。馬場希村長は「互いに助け合いながら暮らせる村にしたい」と見据える。
 

田園回帰 人口増の兆しも


 「田園回帰」の潮流を生かし、活気を生み出す農山村は各地に広がる。「持続可能な地域社会総合研究所」が各市町村の2019年の人口を14年と比べたところ、大半の地域で減っていたものの、小規模な自治体の一部で人口増の兆しが見えた。

 6・9%増だった隠岐諸島の島根県知夫村。人口は約650人で2014年から約50人が移住や出生で増えた。夜は波の音や風の音だけで、「ゆっくり眠れる」と話す都会からの移住者もいる。子どもの世話を焼いてくれる高齢者も多く、村は「移住者は地域のつながりを感じて定着している」とみている。中学生の「島留学」も実践。多様な人が行き来する雰囲気があり、和牛の繁殖農家ら新規就農者も増える。

 鹿児島県三島村は、5年間で人口が4・8%増えた。自然の中で子育てをしたい人らが移住。30代を中心に年間3、4人が移住し畜産などを営む。

 1学年数人という少人数学校も魅力という移住者も少なくない。「子育てがしやすい」「牛飼いに集中できる」という声が上がる。村は「高齢化が進んできたが、若者や子どもの移住でにぎわいがある」と明かす。
 

資源循環や個性が鍵に


 同研究所の藤山浩所長は、田園回帰が進む過疎地域の共通項に①合併した自治体が少なく自己決定権がある②自然環境など地域資源を活用③地域内で助け合う仕組みがある──を挙げる。「資源やエネルギー、食料を地域内で循環させ、個性ある地域づくりを進めれば、若者や移住者に選ばれる地域になれる」と未来を展望する。
 

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