地域

[活写] “最辛”の熊対策
青森県中泊町で木炭の生産を手掛けるツリーワークは、インド原産の激辛トウガラシ「ブート・ジョロキア」と木酢液を使った熊の忌避剤を開発した。熊の出没が多い2020年は、全国から問い合わせが相次ぎ、受注が前年の10倍に増えたという。
商品名は「熊にげる」。ジョロキアから抽出した辛味成分と木酢液を混ぜた黒い液体だ。臭いが漏れ出るよう上部に穴を開けたペットボトルに入れ、畑の近くにつるして使う。
炭・木酢液を研究する谷田貝光克東京大学名誉教授の助言を受け16年に開発。青森や秋田、長野県などのトウモロコシ畑やリンゴ園で試験し、熊や猿に対する効果を確認した。
ジョロキアの施設栽培にも取り組み、製品のコストダウンに成功した。現在はハウス2棟で、製品2トン分の原料を収穫する。価格は1リットル入りで1万円。1ヘクタールの畑で約1年間使える量という。
同社代表の佐々木嘉幸さん(82)は「注文が増えている。原料が足りないので、栽培に協力してくれるよう農家に呼び掛けたい」と話す。
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2021年01月17日

あす阪神・淡路大震災26年 記憶風化させない
未曽有の被害をもたらした阪神・淡路大震災の発生から、17日で26年を迎える。月日の経過に伴い震災の記憶が風化する中、本紙が当時報じた現場を改めて訪れた。関係者は「当時の様子を知る人はもうほとんどいない」と口をそろえる。震災の記憶をいかに次代へ継承するか。改めて問われている。(北坂公紀)
助かった命「奇跡」 兵庫県西宮市・卸売市場
地震発生から3日後の1995年1月20日付の1面。激しく倒壊した木造建築物を捉えた写真が、地震の規模の大きさを物語る。撮影されたのは兵庫県西宮市の西宮地方卸売市場だ。
「スーパーのバイヤーと取引していたら、不意に強い衝撃が走り、天井が落っこちてきた」。当時、同市場で青果卸・中善を営んでいた前田裕司さん(65)は振り返る。
震災当日は午前4時ごろから市場で働いていた。地震発生時は、地面から突き上げられるような縦揺れの衝撃が大きく「店にトラックでも突っ込んだのかと思った。はじめは何が起こったのか分からなかった」。
木造瓦屋根で2階建てだった建物は倒壊。ただ、山積みだった荷物の上に屋根がかぶさる形で、地面との間にわずかな空間が生まれた。「命が助かったのは本当に偶然だった」。奇跡的に犠牲者は出なかったという。
当初は再建を目指したものの、膨大な建設費などを前に話はまとまらず、2001年に閉場となった。
跡地にはスーパーなどが立ち並び、当時の面影はほとんど残っていない。前田さんは「当時の様子を知る人はもうほとんどいないと思う」と指摘する。
神戸市・農林中金事務所
「農林中央金庫神戸事務所も無残な姿に」。発生1週間となる1995年1月24日付の近畿・北陸面。3階部分が押しつぶされ、大きな被害を受けたビルの写真が説明文と共に掲載された。
神戸市内にある神栄(株)の本社ビルで、当時は1、2階に農林中金の事務所が入っていた。入社7年目だった同社執行役員の中西徹さん(56)は「当時、3階が職場だったが、出勤前だった。地震が3時間後だったら、おそらくつぶされていた」と話す。ビルは掲載4日後の28日から解体が始まり、1998年には跡地に新たにビルが建てられた。
農林中金の事務所は、95年2月からは仮設店舗で、同年7月からは仮店舗に移転して営業を再開。建て替え後のビルにも戻ったが、2002年に大阪支店に統合された。農林中金は「大阪支店でも当時を知る人は少なくなり、現在では3人しかいない」と話す。
近年、大規模な災害が頻発し、過去の災害の「記憶」と「教訓」から学ぶことは多い。今後起こる災害で被害を少しでも抑えるために、薄れつつある震災をどう次代に継承するかが問われている。
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2021年01月16日

市来農芸(鹿児島)が連覇 和牛甲子園オンラインで最多33校
和牛生産に情熱を注ぐ全国の農業高校生“高校牛児”が集い、日頃の飼養管理の成果や肉質を競う「和牛甲子園」が15日、オンラインで開かれた。新型コロナウイルス禍による休校や活動制限を乗り越え、全国19県から過去最多の33校が出場した。頂点となる総合優勝には、昨年に続き、鹿児島県立市来農芸高校が輝き、2連覇を達成した。
JA全農の主催で、今回が4回目。……
2021年01月16日

農業施設被害5000棟超 大雪で東北・北陸など
記録的な大雪で東北3県と新潟、北陸3県では13日までに、合わせて5000棟を超えるパイプハウスなど農業施設の損傷、損壊の被害が報告された。除雪が追い付かず全体を把握し切れていないため、被害はさらに拡大する恐れがある。
各県が12日時点で把握した被害状況によると、岩手県では県南部を中心にパイプハウス2346棟に被害が出た。秋田県ではパイプハウスなどの農業施設1019棟が被害を受け、農作物を含めた被害額は3億円を超えた。山形県はサクランボや西洋梨など約65ヘクタールで枝折れなどの樹体被害や、パイプハウス474棟の被害が報告された。
新潟県は13日、大雪・暴風雪による農業の被害状況を発表。昨年12月14日から今年1月12日までの被害を取りまとめ、22市町村でパイプハウス785棟が損傷・損壊した他、6市でライスセンターや育苗ハウスなどの共同利用施設35棟が被害を受けた。ハウスの被害は強風によるビニールの破損などが多い。
北陸3県でも13日正午現在の各県のまとめによると、富山県ではパイプハウスや畜舎、農作業場は、全壊244棟を含む336棟が被害を受けた。石川県は累計で農業用ハウス307棟などの被害を確認した。福井県では農業用ハウスの損壊が130棟に上った。
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2021年01月14日
「災害強い地域」切望 島根・江の川氾濫から半年 移転決定も課題山積
広島県と島根県を流れる1級河川・江の川が豪雨で氾濫してから14日で半年がたち、流域では災害に強い地域づくりを望む声が高まっている。平成以降でも8回の大きな水害に見舞われるなど、危険と隣り合わせの江の川流域。常態化する災害を乗り越えようと、集団移転や堤防建設が進みつつあるが、費用がかさむなど課題は山積みだ。(鈴木薫子)
美郷町
「腹を決めた。もうここには住めん」。江の川と支流の君谷川が流れる島根県美郷町港地区。自治会長を務める屋野忠弘さん(78)ら5戸は、地区内の高台にある安全な場所への集団移転を決断した。
江の川の直近の氾濫は2020年7月14日。同県だけでも8市町で全半壊42戸、床下浸水43戸、水田は213ヘクタールが冠水した。農林水産関係被害額は約20億円に上る。
同地区は川沿いに13戸が点在するが、地形が低い上に堤防がなく、農地冠水などの水害が毎年起きる。7月の豪雨では本流が増水して支流の水をせき止める「バックウオーター現象」が起き、家屋も浸水した。
住み慣れた土地を離れたくないという思いを抱えながらも、次世代を優先させた屋野さん。集団移転は、国の防災集団移転促進事業を利用。同年9月の町議会で請願書が採決され、移転先として地区中心部の集会所近くを希望した。
だが事業は思うように進まなかった。移転先は山を切り崩して造成する必要があるが、費用が想像以上に膨らんだ。造成費用の国の助成上限は1戸約1000万円だが、試算した費用は4倍近い。高齢の移転希望者が多く、高額の持ち出しは厳しい。屋野さんは「中山間地で条件に合う所を探すのは難しい。地形に見合った助成をしてほしい」と切実だ。
同町建設課の担当者は「住民の負担を減らしたいが、町の持ち出しが膨らむ」と頭を抱え、町は費用見直しや別の移転先の選定を進める。屋野さんらは「年寄りが今から新しい場所に溶け込むのは難しい」と考え、地区内での移転を希望している。
堤防建設急ぐ 江津市
2020年7月の豪雨による江の川氾濫で浸水した島根県江津市桜江町(中国地方整備局提供)
長さ194キロ、流域面積3900平方キロの江の川。堤防が必要な区間は154キロに上るが、20年3月末現在で27%に当たる41キロ分の堤防がない。水害が常態化している地域が多いが「堤防規模が大きく建設に時間がかかる」(国土交通省中国地方整備局河川計画課)ため、整備が遅れていた。
20年7月の大規模な氾濫を受け、江津市桜江町では建設が急ピッチで進むことになった。水田やカボチャ畑が冠水した同町小田地区では、今年6月に念願の堤防が完成予定だ。支流の田津谷川流域でも用地・建物調査が進む。
田津谷川が流れる同町川越地区の渡田自治会では、18年の西日本豪雨で被災した若い世帯2組が地区外へ転居するという苦い過去がある。自治会長の小松隆司さん(64)は「(これ以上の災害は)地区が衰退しかねない」と懸念。堤防の早期建設を望む。
<メモ> 防災集団移転促進事業
災害危険区域などの住居を安全な場所へ集団移転させるもので、事業主体は市町村。20年4月に住宅団地の規模要件が「10戸以上」から「5戸以上」に緩和された。移転先の用地取得や造成、住宅建設などの費用は、国が実質94%、市町村が6%を負担する。東日本大震災を除く同事業の実施状況は、35市町村で移転戸数1854。
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2021年01月14日
鹿児島で鳥インフル 今季初、3・3万羽処分
農水省と鹿児島県は13日、同県さつま町の肉用鶏農場で鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。県は同日から約3万3000羽の殺処分などの防疫措置を始めた。同県は肉用鶏と採卵鶏を合わせた飼養羽数が全国で最も多い。高病原性と確定すれば同県での発生は今季初、国内で15県36例目。
県によると、12日に農場から死亡鶏が増えたと連絡があり、同日に簡易検査で陽性を確認。13日に高病原性の疑いがあるH5亜型と判明した。
農場から3キロ圏内の移動制限区域には8戸が約31万7600羽を飼育。半径3~10キロ圏内の搬出制限区域では33戸が163万7300羽ほどを飼う。発生農場周辺には消毒ポイントを設置した。
同日は、農水省の葉梨康弘副大臣が鹿児島県知事とウェブ会談を実施。会談後に開いた鳥インフルエンザ防疫対策本部で野上浩太郎農相は「野外に多量のウイルスが存在するものと強く意識をしてもらい、農場に持ち込まぬように飼養衛生管理を徹底いただきたい」と強調した。
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2021年01月14日

新潟・北陸地方 記録的大雪 農業被害相次ぐ ハウス・物流影響大きく
冬型の気圧配置が強まり記録的な大雪となった新潟県や北陸地方では12日、懸命の除雪作業が続いた。ただ、生活道路や農道の多くは除雪が追い付かず、農家やJA職員が農地や農業施設に近づけない状況。被害の全容を把握するには、時間がかかる見通しだ。
新潟県上越市のJAえちご上越本店では、雪の影響で職員の出勤が通常の半分以下に限られる中、午前7時半ごろから職員約30人が雪かきに追われた。JA総務課の高橋一彦次長は「数日で2メートル超の大雪が降ったのは驚いた」と明かす。
管内の農業被害の把握はこれからだが、既に育苗ハウス8棟が雪による重みでつぶれたという報告が上がっている。県内では7日からの暴風雪により18市町村でパイプハウスの損傷などの被害が出ている。被害はさらに拡大する見込みだ。
福井県では、農産物の物流が滞るなどの影響が出た。
花き卸の福井中央花卉(かき)市場(福井市)は主要な道路が軒並み通行止めになった影響で11日のせり取引を中止。13日から通常通り行うが、入荷量は例年の5分の1以下になる見込みだ。
JA福井県直売所「喜ね舎愛菜館」(福井市)は8日ごろから出荷者が来られない状況が続き、12日には入荷も途絶えた。商品が少なく、短縮営業を続けている。
石川県でも、11日時点でビニールハウスなどの被害を確認した。
気象庁によると、日本海側を中心に降り続いた大雪で、新潟県上越市高田では10日午後2時までの72時間に187センチの雪が降った。この他、岐阜県白川村白川や富山県砺波市砺波など、6県13地点で72時間降雪量が観測史上1位を記録した。
富山、石川、岐阜の3県では、倒木や積雪で集落の孤立が発生した。
育苗間に合うか…岩手
雪の重みでハウスがつぶれ、ぼう然とする農家(12日、岩手県奥州市で。高内杏奈写す)
岩手県では県南地域を中心に農業被害が出ている。奥州市では園芸用や水稲育苗用のハウスなどが倒壊した。同市をエリアとするJA岩手ふるさと、JA江刺によると、直近10年では最も大きな被害。規模によっては、ハウスの撤去・再建を考えると、春の育苗作業に間に合うのか心配する農家もいるという。
JA岩手ふるさとの農業被害金額は、4億5700万円余り(8日現在)。雪が一気に降り、その後断続的に降り続いたという。JAは雪が消えなければ支援に動けず、全容把握を第一に取り組む。
JA江刺は6日時点での農業被害予想額は、2億4700万円余り(解体撤去費用を含まず)。積雪のため、現場に立ち入れない所があるため、さらに増えるとみている。
12日も市内で早朝にまとまった雪が降り、降ったりやんだりを繰り返した。雪の重さにつぶれたハウスに農家は一様に落胆していた。
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2021年01月13日

島の豚 海風熟成 生ハム 3月初出荷へ 香川・小豆島出身の三好さん
CFで資金、特産化手応え
香川県小豆島町出身で隣の土庄町に住む三好昭浩さん(59)は、小豆島の食材や気候を利用した長期熟成生ハムの製造を始めた。2019年の12月から仕込んだ豚の骨付きモモ肉など計50本を、クラウドファンディング(CF)で建てた海風が当たる工房で熟成中。3月には初出荷できる見込みだ。
三好さんは、43歳まで商社で加工品の商品開発をした後、神奈川県内の飲食店に勤めた。ファーマーズマーケットなどで全国のこだわりの食品に出合う中、「生産者の思いが伝わる、その土地でしかできない特産品を作りたい」と思うようになったという。
島に帰郷したのは5年前。島内で豚を放牧する鈴木農園を訪れた際に生ハム製造を思い立ち、すぐに肉の購入を申し入れたという。
三好さんによると、生ハムの産地は乾燥した高冷地が多い。小豆島は製造の適地とはいえないが、試作してみるとまずまずの出来だったという。島の特産であるしょうゆのこうじを使うなど改良を重ね、3年かけて商品化の手応えを得た。しょうゆの風味がほのかに残るためか「日本酒にも合う生ハム」と三好さん。ハムの表面には、小豆島産のオリーブオイルを塗って乾燥を防ぐ。
19年9月、土庄町に「草壁ハム製作所」を設立。工房の改装や材料の購入資金は、クラウドファンディングで調達した。熟成中の生ハムに使うのは、鈴木農園の放牧豚と県内産「オリーブ夢豚」が半分ずつ。瀬戸内海に面した山の斜面にある工房で、空調管理せず自然の空気に当てて、14カ月熟成させる。
骨付きの「原木」と、500グラムのブロックの直販を予定している。飲食店との契約も決まっており、今後さらに広げていく考えだ。
三好さんは「生ハムをきっかけに、イベントやコラボレーション企画などができると考えている。島の観光産業に貢献したい」と意気込んでいる。
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2021年01月13日

いくえ農園12年目 学びの場で心豊かに 農への思い深まる タレントの榊原郁恵さん
タレントの榊原郁恵さんが、神奈川県厚木市で農園活動を始めて12年目を迎えた。農園を“自分を成長させてくれる学びの場”と捉え、忙しい仕事の合間を縫って通い続ける。今では「農作物ができるまでどれほど時間も手間もかかるか、体で分かる」ようになった。育った作物に「感動の連続」だという。
農園は約10アール。地元のJAあつぎを仲介して借り、仲間4人で運営する。「土が合っているのか、すごくいいサトイモが取れるの」と榊原さん。仲間の70代男性は「最初はいつまで続くかなあと思ったけど、農作業に誰よりも熱心なんだよね。もう一通りの野菜作りはできるよ」と目を細める。
高校生の時に芸能界に入って以来、仕事一筋だった。「この世界以外知らないし、趣味も特にない。何か新たに学びたい。どうせなら生活に身近なもの」と考えたとき、日本の自給率の低さや耕作放棄地の問題などが目に付いた。
自分で作った農作物を食べたくなり、JAが当時開いていた農業塾に参加。出身地の厚木を活気づけたいという思いもあった。修了後も農作業を続けたくて、仲間と農園を始めた。
大好きなアスパラガスが収穫まで3年ほどかかることや、小松菜やシュンギクの種の小ささに驚いた。野菜作りについて「子育てをしているみたい。過度な愛情も、気に掛けないのも駄目。生き物を育てているんだなあ」とつくづく感じる。
在来種の栽培や加工品作りなど、やりたいことにどんどん挑戦。日本農業新聞にも活動の様子を連載した。農家と知り合い自ら農作物を作る中で、作り手と買い手の距離感にもどかしさも感じるようになった。「食べる側は野菜を当たり前にあるものと思いがちだけれど、農家が時間をかけて地道な作業をして作っている。“育てられたもの”をいただいているという感覚を一人一人が持てるように、農業に触れ合う機会が増えるといいな」
農園を続けてこられた理由に、仲間の存在を挙げる。農業について教わるだけでなく、作業も互いに協力し、励まし合ってきた。「心が豊かになり、私自身を育ててもらえた」と感謝する。仲間も年を重ね、体力的にきついと感じることもあるが、まだまだ続けたい。農への思いは深まるばかりだ。
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2021年01月12日

TACブログで情報発信 毎週更新、アクセス10倍も 滋賀・JAグリーン近江
滋賀県のJAグリーン近江は、地域農業の担い手に出向くJA担当者(愛称TAC=タック)全員がブログを活用し、新型コロナウイルス下の情報発信につなげている。組合員へ訪問できないときも、栽培の注意点や研修会の案内など営農に関する情報を毎週欠かさず更新。新型コロナの支援に関する記事などは、普段の約10倍のアクセスを記録するなど注目を集める。
ブログは「JAグリーン近江TACブログ」で、今年度で10年目。……
2021年01月12日
地域アクセスランキング
1
21年産米最大の転作へ 正念場 手を携え 新潟県三条市
稲作経営にとって正念場となる2021年が幕を開けた。米の消費量が毎年減少する中、新型コロナウイルス禍で業務需要が低迷し、民間在庫が積み上がる。需給緩和や米価の大幅下落を回避できるかは、過去最大規模となる主食用からの転換の成否に懸かっている。米のトップ産地・新潟県内で「生産の目安」達成に向け、生産者やJAグループの挑戦が始まった。(雫石征太郎)
収入格差を是正 「次代のため」農家ごとに深掘り
新潟県の中央部にある三条市川通北部地域で、農事組合法人・尾崎泉地区生産組合は農地225ヘクタールを集積し、「コシヒカリ」などの主食用米を栽培する。……
2021年01月01日

2
農業施設被害5000棟超 大雪で東北・北陸など
記録的な大雪で東北3県と新潟、北陸3県では13日までに、合わせて5000棟を超えるパイプハウスなど農業施設の損傷、損壊の被害が報告された。除雪が追い付かず全体を把握し切れていないため、被害はさらに拡大する恐れがある。
各県が12日時点で把握した被害状況によると、岩手県では県南部を中心にパイプハウス2346棟に被害が出た。秋田県ではパイプハウスなどの農業施設1019棟が被害を受け、農作物を含めた被害額は3億円を超えた。山形県はサクランボや西洋梨など約65ヘクタールで枝折れなどの樹体被害や、パイプハウス474棟の被害が報告された。
新潟県は13日、大雪・暴風雪による農業の被害状況を発表。昨年12月14日から今年1月12日までの被害を取りまとめ、22市町村でパイプハウス785棟が損傷・損壊した他、6市でライスセンターや育苗ハウスなどの共同利用施設35棟が被害を受けた。ハウスの被害は強風によるビニールの破損などが多い。
北陸3県でも13日正午現在の各県のまとめによると、富山県ではパイプハウスや畜舎、農作業場は、全壊244棟を含む336棟が被害を受けた。石川県は累計で農業用ハウス307棟などの被害を確認した。福井県では農業用ハウスの損壊が130棟に上った。
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2021年01月14日

3
“よそ者”招く好循環 小さな村に移住者続々 新規就農100%定着 北海道赤井川村
人口が少なく、交通の便が決して良いとはいえないのに、移住者が続々と訪れ定着する小さな村が全国に存在する。子どもが増え、若者が増え、地域のファンという関係人口が行き交う。田園回帰の背景には、住民と“よそ者”だった移住者が手を携え、村の未来を共に考え、助け合って暮らし、次の移住者を引き寄せる好循環が芽生えていた。(望月悠希)
地域ぐるみで支援 「助け合える」実感
四方を山に囲まれた北海道赤井川村。内陸性気候のため冬の積雪は多く、道内有数の豪雪地帯だ。2020年1月1日時点で1273人が暮らす。人口は5年前に比べて12%増加し、30代女性も増えた。呼び込んだ新規就農者は村ぐるみで支え、100%定着している。
「自分がここまで暮らしてこれたのは、地域の人たちのサポートのおかげ」。同村でパプリカやミニトマトなど60アールを作る柳澤明さん(35)が笑顔を見せる。
北海道積丹町出身。東京に本社がある乳業メーカーで7年間働いた。多忙な日々。妻の妊娠をきっかけに、家族との時間を大切にしようと、移住と就農を考えた。
村の新規就農の受け入れ事業を知り、2年間の研修に参加。研修中は、JA新おたるの臨時職員として農家を手伝い、技術を学んだ。「研修での人脈が今に生きている」と柳澤さんは話す。
台風で被災したとき、地域の人がビニールハウスの復旧を手伝い、妻が妊娠したときはご飯を持ってきてくれた。たくさんの温かい思いに触れ、柳澤さんはこの村の農業にやりがいを感じる。
村と一体で新規就農者を受け入れているJA営農課振興センターの新見孝男課長は「農家や農地減少に歯止めをかけるため、若者が地域に根付き、農地を継承する仕組みをつくった。農ある景観を守りたい」と思いを語る。
村には「人口1000人を切らせない」という危機感から始まった移住や就農への積極的な支援策がある。1996年度から研修を終えて農業を始めた全26組が村に定着。引退した人を除き、営農を続ける。住宅建設への補助、保育料や子どもの医療費無料などの支援も後押しする。
新型コロナウイルス禍以降、村には移住相談が増えた。だが、大勢より関心を持ってくれた1人を大切にする村のスタンスは変わらない。小さな自治体のため住民との距離が近く、仕組みも柔軟に変えられるのが強みだ。馬場希村長は「互いに助け合いながら暮らせる村にしたい」と見据える。
田園回帰 人口増の兆しも
「田園回帰」の潮流を生かし、活気を生み出す農山村は各地に広がる。「持続可能な地域社会総合研究所」が各市町村の2019年の人口を14年と比べたところ、大半の地域で減っていたものの、小規模な自治体の一部で人口増の兆しが見えた。
6・9%増だった隠岐諸島の島根県知夫村。人口は約650人で2014年から約50人が移住や出生で増えた。夜は波の音や風の音だけで、「ゆっくり眠れる」と話す都会からの移住者もいる。子どもの世話を焼いてくれる高齢者も多く、村は「移住者は地域のつながりを感じて定着している」とみている。中学生の「島留学」も実践。多様な人が行き来する雰囲気があり、和牛の繁殖農家ら新規就農者も増える。
鹿児島県三島村は、5年間で人口が4・8%増えた。自然の中で子育てをしたい人らが移住。30代を中心に年間3、4人が移住し畜産などを営む。
1学年数人という少人数学校も魅力という移住者も少なくない。「子育てがしやすい」「牛飼いに集中できる」という声が上がる。村は「高齢化が進んできたが、若者や子どもの移住でにぎわいがある」と明かす。
資源循環や個性が鍵に
同研究所の藤山浩所長は、田園回帰が進む過疎地域の共通項に①合併した自治体が少なく自己決定権がある②自然環境など地域資源を活用③地域内で助け合う仕組みがある──を挙げる。「資源やエネルギー、食料を地域内で循環させ、個性ある地域づくりを進めれば、若者や移住者に選ばれる地域になれる」と未来を展望する。
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2021年01月03日

4
新潟・北陸地方 記録的大雪 農業被害相次ぐ ハウス・物流影響大きく
冬型の気圧配置が強まり記録的な大雪となった新潟県や北陸地方では12日、懸命の除雪作業が続いた。ただ、生活道路や農道の多くは除雪が追い付かず、農家やJA職員が農地や農業施設に近づけない状況。被害の全容を把握するには、時間がかかる見通しだ。
新潟県上越市のJAえちご上越本店では、雪の影響で職員の出勤が通常の半分以下に限られる中、午前7時半ごろから職員約30人が雪かきに追われた。JA総務課の高橋一彦次長は「数日で2メートル超の大雪が降ったのは驚いた」と明かす。
管内の農業被害の把握はこれからだが、既に育苗ハウス8棟が雪による重みでつぶれたという報告が上がっている。県内では7日からの暴風雪により18市町村でパイプハウスの損傷などの被害が出ている。被害はさらに拡大する見込みだ。
福井県では、農産物の物流が滞るなどの影響が出た。
花き卸の福井中央花卉(かき)市場(福井市)は主要な道路が軒並み通行止めになった影響で11日のせり取引を中止。13日から通常通り行うが、入荷量は例年の5分の1以下になる見込みだ。
JA福井県直売所「喜ね舎愛菜館」(福井市)は8日ごろから出荷者が来られない状況が続き、12日には入荷も途絶えた。商品が少なく、短縮営業を続けている。
石川県でも、11日時点でビニールハウスなどの被害を確認した。
気象庁によると、日本海側を中心に降り続いた大雪で、新潟県上越市高田では10日午後2時までの72時間に187センチの雪が降った。この他、岐阜県白川村白川や富山県砺波市砺波など、6県13地点で72時間降雪量が観測史上1位を記録した。
富山、石川、岐阜の3県では、倒木や積雪で集落の孤立が発生した。
育苗間に合うか…岩手
雪の重みでハウスがつぶれ、ぼう然とする農家(12日、岩手県奥州市で。高内杏奈写す)
岩手県では県南地域を中心に農業被害が出ている。奥州市では園芸用や水稲育苗用のハウスなどが倒壊した。同市をエリアとするJA岩手ふるさと、JA江刺によると、直近10年では最も大きな被害。規模によっては、ハウスの撤去・再建を考えると、春の育苗作業に間に合うのか心配する農家もいるという。
JA岩手ふるさとの農業被害金額は、4億5700万円余り(8日現在)。雪が一気に降り、その後断続的に降り続いたという。JAは雪が消えなければ支援に動けず、全容把握を第一に取り組む。
JA江刺は6日時点での農業被害予想額は、2億4700万円余り(解体撤去費用を含まず)。積雪のため、現場に立ち入れない所があるため、さらに増えるとみている。
12日も市内で早朝にまとまった雪が降り、降ったりやんだりを繰り返した。雪の重さにつぶれたハウスに農家は一様に落胆していた。
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2021年01月13日

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今冬 降雪量に地域差 平年の倍… 一方で半分以下も
日本付近は今後10日にかけて、強い冬型の気圧配置となり、各地で大雪となる可能性が高い。ただ、今冬は降雪量が平年の2倍に増えている場所もあれば、半分程度にとどまる場所もあり、降雪量の地域差が目立つ。既に大雪に見舞われた地域は一層の積雪となるが、降雪量が少ない地域では地表が寒気にさらされることで、凍害の恐れも出ている。
気象庁によると、2020年11月~21年1月6日の累積降雪量は、豪雪地帯の北海道岩見沢市岩見沢で535センチ(平年319センチ)、新篠津村新篠津で513センチ(同313センチ)となるなど、平年を大きく上回る地点が続出している。一方、芽室町芽室は平年の降雪量は145センチだが、同期間は一度も降らなかった。
東北以南の本州各地でも、降雪量に差が出ている。東北では秋田県湯沢市湯沢で425センチ(同221センチ)となる一方、青森県弘前市弘前は124センチ(同209センチ)と少ない。信越では、新潟県長岡市長岡の272センチ(同126センチ)に対し、長野県木曽町開田高原が83センチ(同118センチ)にとどまる。
地形や風向きなどで降雪量に地域差は毎年出るが、同庁は「既に積雪量が多い地域は、さらに増えてくる。一方で、これまでは少なかった地域も警戒してほしい」(天気相談所)と注意を促す。
降り過ぎ 除雪追い付かず
秋田県横手市は7日午後3時時点の積雪量が155センチで、平年の3・6倍の積雪を記録している。市内で水稲や果樹などを栽培する小原正樹さん(59)方では、先月20日ごろと年明けの2度の寒波で、ホウレンソウを栽培するハウス6棟のうち5棟が全壊、1棟が半壊する被害が出た。半壊したハウスのビニールを外したが、骨組みの上にも雪が積もっており、今までにない状況だ。
同市など秋田県南部ではこれまで何度か雪害に遭ってきた。以前は長時間雪が降り続いたことが影響したが、今回は「2、3日で1メートルの雪が積もった」(小原さん)。このため雪下ろしが進まないという。
県農林政策課によると7日午前11時現在、県内では横手市や湯沢市など県南部を中心にホウレンソウやセリ、花きなどに被害が出た他、施設被害も発生。被害額は2億5800万円に上る。
小原さんは「リンゴの木も雪に埋まり、枝が折れているだろう。調査ができていない所もあり、被害は拡大するのではないか」と心配する。
雪がない 土壌凍結が心配
「越冬前の生育条件は良好だったので、これ以上土壌の凍結が進まないでほしい」と願う小川さん(北海道音更町で)
気象庁の帯広測候所によれば、北海道帯広市では6日まで記録的な「積雪ゼロ」が続いた。1983年の観測以来、初めてのことだ。7日は十勝地方でも降雪があったが、8日以降は再び晴れが続く見込み。例年は雪の下で越冬する小麦が地表に出てしまい、凍害の恐れが出てきた。農家らは土壌の凍結が例年より深く進んでいるとして、土中で越冬する作物への影響を危惧している。
帯広市に近い音更町で39ヘクタールの畑作経営をする小川磯治さん(64)は、今後の降雪を期待している。秋まき小麦「きたほなみ」は種まきがやや遅れたものの、昨年10月後半から11月にかけて気温が高めだったため、生育は予想以上に進んだ。だが、土壌の凍結が長期化することに危機感を持つ。
小川さんは「養分がしっかり蓄積されて越冬を迎える態勢ができているので、かなりの悪条件にも耐えられる」としながらも、「これ以上凍結が進むと、凍結した層が融雪時期に邪魔をして、融雪水が浸透しないことも想定される」と危惧する。十勝地方では、春掘りのナガイモに対しても凍害を心配する声が相次いでいる。
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2021年01月08日

6
島を目指す若者たち “ノー密”求め就農希望じわり 「手厚い」「段階的」研修が魅力
条件不利地とされてきた離島への移住、就農を志す若者が増えてきた。自然豊かな離島特有の環境に加え、手厚い受け入れ体制を整えている地域は体験希望者が増加。新型コロナウイルス禍を受け、人口が密集していないことも魅力になっており、各地域とも将来の担い手確保につなげたい考えだ。(松村直明)
東京・伊豆大島
東京都心部から120キロ以上離れた太平洋上に浮かぶ伊豆大島。島外からやって来た20、30代の男性3人が地元農家に教わりながら、島特産の切り花、ブバルディアの調製作業を体験する。
東京都島しょ振興公社が企画した移住希望者向けの就農体験ツアーの一幕だ。毎年5人前後の応募があるが20年は19人と急増した。公社は「コロナ禍の中、人口が密集しておらず自然豊かな島に注目する若者が増えている」(業務課)とみる。
移住が決まったら町運営の農業研修施設で学んだ後、就農する。参加者の1人で、東京都在住の望月一志さん(34)は三重県の農業法人で働いていた経験があり、自立就農を目指し応募した。離島の環境面に加え、「困った時すぐに相談できる体制も魅力」と話す。
町の研修施設では農家4人が交代で講師を務め、技術指導を受けられる。これまで3人を花や果樹の農家として輩出。21年度も1人が独立する。
ツアーや研修施設で指導役を務める花農家の五味秀策さん(45)は「一人でも仲間が増えてほしい」という思いで、就農前から農地探しに協力したり、就農後も定期的に連絡を取り合ったりして移住者を手厚く支える。
町は、研修生の経済面の支援も用意。2年間の研修期間中は計20万円の支援金を支給。さらに月単位で、研修中に生産した農産物の売上金の一部を支給する。こうした仕組みも新規就農者の確保に貢献している。
愛媛・岩城島
愛媛県上島町と地元のNPOは、瀬戸内海に浮かぶ岩城島で就農を考える人を対象に1週間の体験を受け入れる。コロナ禍を背景に年間の参加者数は最近5年間で最多となる見込み。体験後の段階的な研修を用意していることも大きな魅力だ。
20年度は既に5人が参加し、19年度の3人を上回った。今後、少なくとも4人が参加を予定する。
同島はレモンなどのかんきつ類の栽培が盛ん。1週間の体験でも果樹農家で作業を学ぶ。希望者にはその後、延べ20日間の「お試し就業研修」と、その後の2年間のインターンを用意。さらに、研修を受け入れるNPO法人「豊かな食の島 岩城農村塾」は、独立時に農地のあっせんや開墾などで支援する。
これまでに5人が就農。年明けにも新たに1人が独立する予定だ。脇義富代表は「コロナ禍で今、島が注目されていると感じる。興味を持って体験に来た人を担い手として確保していけるかが課題」と考える。
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2021年01月07日

7
[農と食のこれから 二つの学校から]前編(上) 未来描く2・5%の視点 古代小麦を研究 都立園芸高
「香ばしい香りだね」「味はいいけど、少し硬いかな」「レシピをもっと工夫すべし!」
東京都世田谷区深谷の閑静な住宅街にある都立園芸高校。食品科研究棟の一室で、大野玲奈さん(18)、竹村花夏さん(18)、吉田澪さん(18)の3年生3人が、自分たちで作ったシュークリームやシフォンケーキ、クッキーを試食した。……
2021年01月04日

8
[農と食のこれから 二つの学校から]前編(中) 学歴よりも“学習歴” 無臭鶏卵に挑戦
新型コロナウイルス禍で「いつ終わるか分からない春休み」に突入した昨年3月、東京都立園芸高校動物科3年、阿部葉さん(18)は宮城県内の養豚場にいた。消毒した長靴で豚舎に入り、鼻から空気を吸い込み、驚いた。「ふんの臭いがしない。どうして?」
その数週間前、阿部さんは、働き手として生徒を受け入れてくれる農業インターンシップを休校中にできないかと考えていた。……
2021年01月05日

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ユーチューブ動画、自作新聞 “農”情報 消費者に届け
インターネットで誰でも動画で情報発信できる時代。“半農半芸”を目指すアーティストが、動画投稿サイトで地域農業を応援する番組を始めた。一方で“アナログ”な媒体にこだわる農家は、自作の新聞で身近な「農」の話題を消費者に届けている。
兼業の強み伝えたい 半農半アーティスト 岡村典幸さん
名古屋市を拠点に活動するヒップホップグループ「nobodyknows+(ノーバディノウズ)」のメンバー、岡村典幸さん(40)が、東海地方の農業を盛り上げようと奮闘している。以前から農業法人に勤めたり青果店を立ち上げたりと農業に携わってきたが、昨年から畑を借りて野菜などの栽培を始めた。農業の魅力を世界に伝えるため、農家を自ら取材し動画投稿サイト「ユーチューブ」で発信する。
グループでは「ノリ・ダ・ファンキーシビレサス」の愛称で活動。2004年には紅白歌合戦にも出場した。今もライブ活動や楽曲提供などを続けている。農業に初めて関わったのは2008年ごろ。友人と青果店を始め、名古屋近郊の農家に飛び込み営業で野菜を仕入れて、軽トラックで販売。後に店舗も開いた。
ちょうどグループの全国ツアーが終わって一段落した時期で「誘われて始めたが、農家と話すうちに農業の楽しさを感じた」という。その後10年にわたり、無農薬・有機野菜を約3ヘクタールで大規模生産する農業法人に勤務。農場長も務めた。
昨年から岐阜県内の休耕地を借り、野菜やハーブ類を生産しつつ、効果的な販路を模索している。平日は住宅施工に関わる他の仕事もこなしつつ、アーティストと農家の“三足のわらじ”を続けている。畑の管理は、早朝や休日にこなす。
今の農業生産を下支えしているのは各地の兼業農家だと感じていて、「兼業農家でも、ある程度の収入が得られるモデルを示したい」と展望する。
ユーチューブチャンネルでは農家や農業関係企業を取材し、動画で農業の魅力を発信。「食料生産を支えている農家がどんな人なのかを知ってもらい、都市部の人に身近に感じてほしい」と願う。
町の話題も楽しく 観光農園運営 松本茂さん
発行してきた「みかん畑通信」と松本さん(神奈川県真鶴町で)
神奈川県真鶴町でミカン狩りなどができる観光農園「松本農園」を運営する松本茂さん(70)が、30年以上前から毎年1、2回発行する新聞「みかん畑通信」が人気だ。2020年は10月に第41号を発行。内容は松本さんの身の回りの出来事が中心で、地域や農園の自然環境の話題などが盛りだくさんだ。
新聞発行は、講演会で講師の女性が「根府川のレモンを買っているが、段ボール箱にはレモンしか入っていない。何かちらしとか入れないのか」と言われたことが契機となった。
「私には彼女が“上から目線”で、農家はモノも書けないのかと言ったように受け取った」と松本さん。「農家にもできるはず」と考え、当時は子どものPTA活動で広報紙の作り方などを学んでいたこともあり、1986年ごろから新聞の発行を始めた。新聞はB4判1枚の両面刷りで、松本さんがパソコンで記事を書き、新聞を参考にしながらレイアウト。
最新号のトップ記事は、源頼朝が神奈川から千葉に船で渡った航跡をヨットに乗って実際に渡った話。裏面は農園内の茶の木をテーマにした「みかん畑の自然」と、息子の妻が日々の生活での出来事などをつづる。
発行部数は1500部。町内の知り合いはもとより、松本さんのミカンを毎年楽しみにしている全国の常連客に発送している。客からは「ミカン以上に新聞に価値がある」という声もあるという。町内でも同紙のファンが多い。酒を販売する草柳文江さん(80)もその一人。ファイルに保管して来店客にも見せているという。「農園の出来事がよく書かれている」と感心する。「新聞作りが人生に潤いを与えている」という松本さんは、次号に向けて記事になりそうな話題を探している。「日本農業新聞が取材に来たことも書けるかな」と笑顔を見せる。
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2021年01月09日

10
いくえ農園12年目 学びの場で心豊かに 農への思い深まる タレントの榊原郁恵さん
タレントの榊原郁恵さんが、神奈川県厚木市で農園活動を始めて12年目を迎えた。農園を“自分を成長させてくれる学びの場”と捉え、忙しい仕事の合間を縫って通い続ける。今では「農作物ができるまでどれほど時間も手間もかかるか、体で分かる」ようになった。育った作物に「感動の連続」だという。
農園は約10アール。地元のJAあつぎを仲介して借り、仲間4人で運営する。「土が合っているのか、すごくいいサトイモが取れるの」と榊原さん。仲間の70代男性は「最初はいつまで続くかなあと思ったけど、農作業に誰よりも熱心なんだよね。もう一通りの野菜作りはできるよ」と目を細める。
高校生の時に芸能界に入って以来、仕事一筋だった。「この世界以外知らないし、趣味も特にない。何か新たに学びたい。どうせなら生活に身近なもの」と考えたとき、日本の自給率の低さや耕作放棄地の問題などが目に付いた。
自分で作った農作物を食べたくなり、JAが当時開いていた農業塾に参加。出身地の厚木を活気づけたいという思いもあった。修了後も農作業を続けたくて、仲間と農園を始めた。
大好きなアスパラガスが収穫まで3年ほどかかることや、小松菜やシュンギクの種の小ささに驚いた。野菜作りについて「子育てをしているみたい。過度な愛情も、気に掛けないのも駄目。生き物を育てているんだなあ」とつくづく感じる。
在来種の栽培や加工品作りなど、やりたいことにどんどん挑戦。日本農業新聞にも活動の様子を連載した。農家と知り合い自ら農作物を作る中で、作り手と買い手の距離感にもどかしさも感じるようになった。「食べる側は野菜を当たり前にあるものと思いがちだけれど、農家が時間をかけて地道な作業をして作っている。“育てられたもの”をいただいているという感覚を一人一人が持てるように、農業に触れ合う機会が増えるといいな」
農園を続けてこられた理由に、仲間の存在を挙げる。農業について教わるだけでなく、作業も互いに協力し、励まし合ってきた。「心が豊かになり、私自身を育ててもらえた」と感謝する。仲間も年を重ね、体力的にきついと感じることもあるが、まだまだ続けたい。農への思いは深まるばかりだ。
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2021年01月12日
