豚コレラ 9府県養豚協会長 ワクチンの是非 説明を 本紙緊急調査
2019年07月12日

豚コレラの感染農場が相次ぎ、感染した野生イノシシの分布が広がっていることを受け、日本農業新聞は、発生や隣接する9府県の養豚協会の会長らに現状や政府への訴えなどを聞き取る緊急調査をした。豚へのワクチン投与を求める意見の他、共通して農水省にワクチン投与によるメリットやデメリットなど丁寧な説明を要望する声が出た。感染の恐怖と戦いながら衛生管理を徹底しても発生に歯止めがかからず、現場には焦燥感が高まっている。
半数の豚が殺処分された岐阜県養豚協会の吉野毅会長は「日本最高レベルの衛生対策をしている自信はあるが、防げない。限界だ。今にも大粒の涙が出るほど心が壊れている」と疲労する。最初に感染が分かってから10カ月が過ぎた。終息の兆しは見えず、県内全農家が精神的に追い詰められている。
近隣県にも緊張感がみなぎっている。感染したイノシシが11日時点で4頭発覚した三重県養豚協会の小林政弘会長は「衛生管理基準を守れと指示する国と、恐怖におののく現場との溝が大き過ぎる。衛生管理をやり尽くしても発生する岐阜や愛知の実態を見て皆、びくびくしている」と明かす。7月に感染イノシシが見つかった福井県養豚協会の相馬秀夫会長は「殺処分した農家の思いを考えると言葉がなく、自分たちも切羽詰まっている」と窮状を訴える。
吉野会長は「国の水際対策が甘い中、なぜ岐阜に責任をなすり付け、ワクチンを打たないのか」と水際対策の徹底やワクチン投与を求める。吉野会長の他、複数の会長が豚へのワクチン投与を切望する。
感染したイノシシが広がる中で同省が提唱する早期出荷に疑問の声も相次ぐ。静岡県養豚協会の中嶋克巳会長は「早期出荷してもイノシシを考えると一歩踏み出せない。今、発生したら終わり。発生していない静岡でも農家は疲弊している」と語気を強める。全大阪養豚農業協同組合の川上幸男組合長は「早期出荷を現場に求めるなら再開対策をセットで考えなければ農家は守れない」と訴える。中嶋会長も川上組合長も、2010年に宮崎県で発生した口蹄(こうてい)疫は4カ月で終息したことを踏まえ「豚コレラで初動を誤った農水省の責任は大きい」と感じる。
各県から共通して挙がるのが、同省に丁寧な説明を求める声だ。愛知県養豚協会の小林功理事長は「全国で順次、説明会を行う必要がある」と強調。豚へのワクチン投与では、科学的な根拠に基づくメリットやデメリットなどを丁寧に説明してほしいと指摘する。滋賀県養豚推進協議会の森本雄一会長は、相次いで感染イノシシが見つかっていることから「危機のステージは大きく変わった。明日はわが身」とした上で「農水省の説明不足が際立つ。衛生管理の不備を言うなら発生農場の課題点を各地にフィードバックしなければ教訓は生かせない」とみる。
各県とも、消毒の徹底や畜舎への出入りの厳重管理、畜舎へのフェンス設置など衛生対策に時間と費用を投資し、厳重な対策を急ぐ。ただ、費用や作業時間がかさむ一方で対策に終わりが見えず、複数の会長から「このままでは養豚業が消える」と悲痛な声が出る。
見えぬ終息…現場は「切望」
半数の豚が殺処分された岐阜県養豚協会の吉野毅会長は「日本最高レベルの衛生対策をしている自信はあるが、防げない。限界だ。今にも大粒の涙が出るほど心が壊れている」と疲労する。最初に感染が分かってから10カ月が過ぎた。終息の兆しは見えず、県内全農家が精神的に追い詰められている。
近隣県にも緊張感がみなぎっている。感染したイノシシが11日時点で4頭発覚した三重県養豚協会の小林政弘会長は「衛生管理基準を守れと指示する国と、恐怖におののく現場との溝が大き過ぎる。衛生管理をやり尽くしても発生する岐阜や愛知の実態を見て皆、びくびくしている」と明かす。7月に感染イノシシが見つかった福井県養豚協会の相馬秀夫会長は「殺処分した農家の思いを考えると言葉がなく、自分たちも切羽詰まっている」と窮状を訴える。
吉野会長は「国の水際対策が甘い中、なぜ岐阜に責任をなすり付け、ワクチンを打たないのか」と水際対策の徹底やワクチン投与を求める。吉野会長の他、複数の会長が豚へのワクチン投与を切望する。
感染したイノシシが広がる中で同省が提唱する早期出荷に疑問の声も相次ぐ。静岡県養豚協会の中嶋克巳会長は「早期出荷してもイノシシを考えると一歩踏み出せない。今、発生したら終わり。発生していない静岡でも農家は疲弊している」と語気を強める。全大阪養豚農業協同組合の川上幸男組合長は「早期出荷を現場に求めるなら再開対策をセットで考えなければ農家は守れない」と訴える。中嶋会長も川上組合長も、2010年に宮崎県で発生した口蹄(こうてい)疫は4カ月で終息したことを踏まえ「豚コレラで初動を誤った農水省の責任は大きい」と感じる。
各県から共通して挙がるのが、同省に丁寧な説明を求める声だ。愛知県養豚協会の小林功理事長は「全国で順次、説明会を行う必要がある」と強調。豚へのワクチン投与では、科学的な根拠に基づくメリットやデメリットなどを丁寧に説明してほしいと指摘する。滋賀県養豚推進協議会の森本雄一会長は、相次いで感染イノシシが見つかっていることから「危機のステージは大きく変わった。明日はわが身」とした上で「農水省の説明不足が際立つ。衛生管理の不備を言うなら発生農場の課題点を各地にフィードバックしなければ教訓は生かせない」とみる。
各県とも、消毒の徹底や畜舎への出入りの厳重管理、畜舎へのフェンス設置など衛生対策に時間と費用を投資し、厳重な対策を急ぐ。ただ、費用や作業時間がかさむ一方で対策に終わりが見えず、複数の会長から「このままでは養豚業が消える」と悲痛な声が出る。
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冬風揺れる柿すだれ JAふくしま未来伊達地区
全国有数のあんぽ柿産地、福島県のJAふくしま未来伊達地区管内で、皮をむいた柿を干し場につるす加工作業が最盛期を迎えている。きれいなオレンジ色の柿が次々とつるされる光景は「柿色のカーテン」と呼ばれ、この時期の風物詩だ。
原料の「蜂屋」や「平核無」の渋柿から乾燥によって独特の深い味わいと甘味を生み出す地区特産のあんぽ柿。
同地区では、11月上旬から原料となる柿の収穫作業が始まり、中旬からは、連通しと呼ばれる柿の皮むきや縄に柿を取り付ける作業、干し場につるす作業など、加工作業が本格化する。
JA伊達地区あんぽ柿生産部会長の佐藤孝一さん方では、11月15日から加工作業を開始。約8トンを加工する。1本の縄に10個ほど付けられた柿は、手作業で次々と専用の干し場につるされ、約40日間自然乾燥し、あんぽ柿として出荷される。「昼夜の寒暖の差や乾燥に適したこの産地特有の自然環境が、味わい深い極上のあんぽ柿を育む」と佐藤部会長は話す。
JAのあんぽ柿は、主に京浜地方を中心に各地の市場などへ出荷される。現在、「平核無」が出荷最盛期を迎え、生産量の9割以上を占める「蜂屋」は、12月上旬から本格的な出荷が始まり、翌年の3月下旬まで続く。
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2019年12月04日
気候非常事態 長野県が宣言 都道府県で初
長野県は6日、世界的な気候変動への危機感と地球温暖化対策への決意を示す「気候非常事態宣言」を都道府県として初めて発表した。2050年までに県内の二酸化炭素(CO2)排出量を実質的にゼロにすることを目指す。
県議会が同日、台風19号被害やスペインでの国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)開催などを背景に、宣言を出すよう県に求める決議を全会一致で採択。これを受けて県が宣言を発表した。宣言では、国内で頻発する気象災害と世界的な異常気象、気候変動に触れ、「この非常事態を座視すれば、未来を担う世代に持続可能な社会を引き継ぐことはできない」と強い危機感を示した。
県は、太陽光発電や小水力発電といった再生可能エネルギーの拡大、省エネ対策の強化などで、CO2排出量の実質ゼロを実現したい考え。阿部守一知事は会見で「広く県民一丸となって気候変動対策を進めていきたい」と強調した。インターネット中継で阿部知事と会談した小泉進次郎環境相は「台風で大きな被害を受けた長野県が宣言したことは象徴的。来週参加するCOP25で発信したい」とエールを送った。
宣言は、地球温暖化対策を加速させようと欧米諸国を中心に広がっている。欧州連合(EU)の欧州議会が11月に採択した他、国内では長崎県壱岐市、長野県白馬村などが宣言している。
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2019年12月07日

台風19号被災長野市を視察 参院農水委
参院農林水産委員会は3日、台風19号の浸水被害を受けた長野市の果樹園地やJAの選果施設を視察し、農家らと意見交換した。被災農家は営農再開に向け、早急な泥の除去や資金対策などの支援を求めた。
与野党議員8人が長野市穂保地区の園地やJAながの長野平フルーツセンターなどを視察した。
地元の若手農家グループが要望を伝えた。浸水被害を受けた農地は、災害復旧事業の支援対象となるが、現状では泥の撤去作業が十分進んでいない実態を説明。リンゴ農家の小滝和宏さん(36)は防除のためのスピードスプレヤー(SS)も入れないことから、「来年3月下旬の薬剤散布時期がリミット。間に合わなければ木を切ることも考えなければいけない」と危機感を示した。
県庁では阿部守一知事が、果樹園に堆積した土砂の処分場確保が難しいことから、公共工事の盛土などに活用することを要望した。
同委員長の自民党の江島潔議員は「想像以上に広範囲で大きな被害に衝撃を受けた。現場の意見や要望は、委員会でしっかり検討して、政府に返していきたい」と述べた。
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2019年12月04日
テレビドラマ「水戸黄門」で、悪代官役を演じた俳優の訃報に触れ、名場面がよみがえってきた
テレビドラマ「水戸黄門」で、悪代官役を演じた俳優の訃報に触れ、名場面がよみがえってきた▼白ひげをたくわえ、好々爺(や)然とした黄門さまが、助さん、格さんを従え、諸国を巡りながら悪事を懲らしめていく。決めぜりふは「この紋所が目に入らぬか」。言わずと知れた徳川家の家紋が入った印籠である。悪人たち、一斉にひれ伏し一件落着と相成る。さしずめ今なら「安倍官邸」の紋所が、絶大な威光を発揮する印籠か▼黄門さまこと水戸藩第2代藩主・徳川光圀には、逸話や俗説が多い。「恐れ多くも先の副将軍」というのはドラマ上の設定。諸国漫遊というが実は関東近県しか歩いていないとも。これは『大日本史』の編さんで家臣を各地に派遣したことから尾ひれがついたようだ▼光圀は子孫のために9カ条の訓戒を残した。1条は「苦は楽の種、楽は苦の種としるべし」。ドラマ主題歌の冒頭〈人生楽ありゃ苦もあるさ〉はここから来たのだろう。「主人と親は無理を言うものと思え」。これも納得。主人をトランプさんに置き換えればよく分かる。「おきてを恐れよ」は、決まり事や法令を守れとの戒めである▼あすは黄門忌。現代によみがえれば忙しかろう。ぜひとも「令和の不平等条約」に喝を入れてもらいたい。「国益を一体何と心得る」
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2019年12月05日
国際植物防疫年 日本の指導力発揮 期待
2020年は国連が定めた国際植物防疫年(IYPH)。病害虫や雑草の対策が重要だとの認識を、世界的に高める機会となる。優れた技術・対策を持つ日本が国際的なリーダーシップを取るべきだ。東京五輪・パラリンピックで日本への侵入リスクが高まる。市民を巻き込み水際対策も強化したい。
国境を越えて侵入する病害虫は食料安全保障にとって脅威だ。水稲に吸汁被害を与えるトビイロウンカが今年、西日本を中心に記録的な発生となった。米の作況指数(10月15日現在)は九州が「87」、四国と沖縄が「94」、中国が「97」だった。
また、飼料用トウモロコシなどを加害するツマジロクサヨトウは、7月に国内で初めて確認されてから農場での発生が瞬く間に21府県に拡大した。地球温暖化の影響で定着する恐れがあり、生産現場では農家らが懸命の防除対策を進める。
来年は東京五輪・パラリンピックが開催される。病害虫は人や物の移動でも侵入する。植物検疫の重要性を市民に訴え、土付きの植物を持ち込まないなど水際対策への協力を得たい。
IYPHの根底には、持続可能な開発目標(SDGs)である飢餓や貧困の解消、環境の保護、経済発展に、病害虫のまん延防止は欠かせないとの考えがある。ニューヨークとローマでの年末のキックオフセレモニーを皮切りに、来年の閣僚会合や国際シンポジウムなどを通じ、市民や政治家、行政の担当者、企業の社員らに理解を広げる。
IYPHでの国際的なリーダーシップの発揮には、20カ国・地域(G20)の会合との関連で茨城県つくば市で11月に開かれた、病害虫研究者による二つの国際会合の経験が生きる。
市民も参加した国際農林水産業研究センター(国際農研)のシンポジウムでは、講演やパネルディスカッションを通じ、各国が連携して対策・研究に当たることが重要だとの認識で一致した。SDGsの達成や食料安保につながることも確認した。
専門研究者らが中心の農水省主催のワークショップでは、かんきつグリーニング病など八つの病害虫について研究成果や防除方法を共有。今後の研究連携の在り方を話し合った。海外の研究者らは、日本の植物防疫の仕組みやミバエを撲滅した経験などに強い関心を示していた。
二つの会合ともに、日本の研究者らが開催国として議論をリード。防除対策や研究成果の共有、研究者のネットワークづくり、国際的な研究連携の進め方などで成果を得た。
その成果を生かし日本は国際的な行動を起こすべきだ。診断技術や疫学調査、越境防止措置、予防・防除技術を提供したり、研究連携の輪を広げたり、国際的な監視体制を強化したりすることで、持続的な食料生産に貢献できる。病害虫のまん延防止への協力は越境性病害虫の国内への侵入を防ぐことになり、食料安保にもつながる。
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2019年12月05日
農政の新着記事

中小・家族目配りを 自民畜酪委熊本を視察 畜産農家ら訴え
自民党畜産・酪農対策委員会は7日、2020年度の畜産・酪農対策の決定に向け、九州の酪農・畜産現場へ視察に入った。意見交換で畜産農家は、中小や家族経営も安定的に農業を続けられる環境づくりを要望。ヘルパーの確保や、豚コレラ(CSF)などの防疫強化を求めた。
熊本県JA菊池で開いた意見交換には、井野俊郎同委員会委員長代理、農林・食料戦略調査会の坂本哲志副会長、藤木眞也農水政務官らが出席。JA熊本中央会の宮本隆幸会長は、相次ぐ国際貿易交渉の結果「農家は先が見えず不安になっている。次世代が安心して農業ができる対策をしてもらいたい」と訴えた。
繁殖農家の源義通さん(69)は生産力の維持・向上には「定休型ヘルパーの導入で、農家が休めるようにしなくてはいけない」と指摘。ヘルパー確保につながる支援を求めた。肥育農家の斉藤秀生さん(59)はアジア諸国から日本への観光客の増加で「豚コレラや口蹄(こうてい)疫の侵入リスクが高まっている」と懸念。農家ごとの対策は限界があるとして、国主導の水際対策の強化が「最重要課題」と強調した。同委の宮路拓馬事務局長は北海道、関東、九州での視察内容を踏まえ、11日にも対策をまとめる考えを示した。
8日は鹿児島、宮崎県での現場視察、農家らとの意見交換を予定する。
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2019年12月08日

コスト増、人材不足、日米交渉… 生乳生産不安尽きず 畜酪対策 来週ヤマ場
2020年度の畜産・酪農対策を巡る政府・与党の協議が来週、ヤマ場を迎える。都府県は生乳生産の減少に歯止めがかからない一方、北海道は増産意欲は高いが、コスト増や人材確保などの課題があり、日米貿易交渉など将来への不安も尽きない。生産基盤強化に向け、規模拡大や家族経営の維持など多様な担い手が将来に安心して生産できる体制を求める声が強まっている。
生乳生産量は、北海道は増産基調だが、都府県は前年割れが続く。課題の一つが農家戸数の減少が続く都府県酪農だ。
栃木県大田原市で、育成牛含めたホルスタイン66頭を家族3人で飼養する藤田義弘さん(43)は「乳価は上がったが、消費増税で相殺され、経営は改善していない」と訴える。課題として挙げるのは人手の確保。毎月の休みは3日で休む時は酪農ヘルパーに頼むが、来てくれないときもあるためヘルパーの人材確保を強く求める。
藤田さんが就農した20年前の市内の酪農家は約90戸だったが、現在は約70戸。戸数減に歯止めをかけるため「現状の規模や労働力でも経営が維持できる対策にも力を入れてほしい」と家族酪農が続けられる対策の充実を求める。
「クラスター」要件厳し過ぎ
北海道頼みの生乳生産だが、道内の生産基盤も盤石ではない。酪農家は減り、規模拡大で生産量を維持、拡大している状況でコスト増が課題だ。
士幌町で乳牛380頭を育てる川口太一さん(56)は、牛舎の増築費用に頭を悩ませる。現在の搾乳牛200頭を約260頭に増やしたいが、増築費は資材費や人件費の高騰で「10年前に牛舎を作った時より、2倍以上(3500万~4000万円)かかる」と話す。畜産クラスター事業を活用したいが、建築基準などの要件が厳しく適用が難しいという。このため、同事業の要件緩和を求める。
コストが高くなりがちな冬の施工を防ぐため、十分な工期を確保できる仕組みも提案。同事業本来の狙いである畜産関係事業者が連携・集結し、地域ぐるみで高収益型の畜産を目指す体制整備も重要と話す。「産地としての責任を果たすため経営主になって以来、増頭してきた。少しでも事業を使いやすくしてほしい」と強調する。現在はパート1人、中国人技能実習生3人で経営しており、将来の雇用確保も懸念している。
中小・家族経営守る政策必要
酪農の規模拡大が進む中、新たな課題が広がる。「増頭で、ふん尿処理に困っている」「酪農ヘルパーなどの人材確保の対策を続けてほしい」──。11月30日、12月1日に釧路市や幕別町、網走市を視察した自民党畜産・酪農対策委員会の委員に、各地区のJA組合長が訴えた。「中小規模・家族経営基盤の維持強化に向け、省力化などの支援を続けてほしい」といった声も目立つ。酪農家が減少する中で規模拡大一辺倒ではなく、中小規模や家族経営を守るという意識も高まっている。
JAグループ北海道は畜産クラスター事業では計画的に投資できるように全ての事業の基金化を求める。加工原料乳生産者補給金は再生産可能な水準、集送乳調整金は指定団体が機能発揮できる水準を求めている。
生産減、離農止まらず
全国の生乳生産量は減少傾向にあり、農水省によると2018年度は728万9227トンと、5年前から2・9%減。特に都府県で減り続けている。牛乳・乳製品の需要は堅調だが、生産量が伸び悩み自給率は低下。同年度はカロリーベースで25%にとどまった。
酪農家戸数はこの10年、前年比4%前後の減少が毎年続く。大規模化や牛1頭当たりの乳量の伸びで、生乳生産の下落をカバーしている。
JAグループは、中小規模の家族経営などの離農が止まらないことが生産基盤の弱体化につながっていると指摘。大規模農家を、引き続き生産基盤の維持・拡大をリードする存在と位置付ける一方、「多様な生産者」の生産基盤の強化を重視する考えを打ち出した。
20年度畜産・酪農対策の重点要請では、規模拡大を問わず事業継承や生産効率の向上を支援するように提起。特に、飼養頭数50頭未満が76%を占める都府県酪農を念頭に、牛舎の空きスペースを活用した増頭への支援などが必要だとしている。
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2019年12月07日
直接支払い3制度 自治体負担軽減を 農水省が検討開始 根拠法20年度見直し
農水省は6日、中山間地域等直接支払制度と多面的機能支払交付金、環境保全型農業直接支払交付金から成る「日本型直接支払い」の検証を始めた。農業者団体からの意見聴取などを通じ制度の課題を洗い出し、2020年度に対応方針も取りまとめる。現場で制度を推進する自治体の事務負担の軽減などが検討事項となる見込みだ。
三つの制度は、政府が地域政策と位置付けており、条件不利地を含めた農地の保全、営農の継続などを後押ししている。各制度の根拠法として、農業の多面的機能発揮促進法が15年4月に施行され、施行5年後の20年度に見直すかどうか、検証するとしていた。今後、三つの関連制度の第三者委員会で検討を進める。
同日の会合で、委員長に就いた東京大学大学院の中嶋康博教授は「それぞれ(の直接支払いは)地域の農業農村に大きな役割を果たしている。改めて法制度、運用について課題を共有したい」と話した。同省は、自治体のアンケート結果を報告。三つの制度を同じ部署で担当している市町村は7割に上った。
宮城大学の三石誠司教授は、関連制度を推進するに当たり「市町村が忙しいため、(現場の要望を)聞くことができていないのではないか」と指摘。自治体の人手不足を課題として検討するよう提起した。
日本消費者協会の河野康子理事も自治体の人手不足を課題に挙げ、「コンサルティングなどの手当てが必要」と述べた。コンサルタント企業クニエの原誠マネージングディレクターは「事務と人材が課題の大きな柱になる」と指摘した。
市町村は同じ部署で3制度を担当するが、同省は制度ごとに担当部署を設けていることも論点になった。中嶋委員長は市町村の人手不足を念頭に「書類様式を可能な限り統一した方がいい」と指摘、同省に精査を求めた。
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2019年12月07日

肉持ち込み厳罰化へ 次期国会提出めざす 家伝法改正で農水省検討会
農水省の有識者検討会が6日、家畜伝染病予防法(家伝法)改正の提言(中間取りまとめ)を公表した。入国者が肉製品を持ち込んだ場合の罰則強化の他、アフリカ豚コレラ(ASF)の発生時に周辺農場を含む予防的殺処分を可能にすること、疾病発生時の国や都道府県の指導権限強化を盛り込んだ。これを踏まえ、同省は法案作成を進め、来年の通常国会に提出を目指す。
会議では、①輸出入検疫②野生動物対策③疾病のまん延防止措置④飼養衛生管理──の4テーマごとに提言を示した。
輸出入検疫では、訪日客が急増する中で肉や肉製品の持ち込みが増えているとして、厳罰化の重要性を強調。現状では3年以下の懲役または100万円以下の罰金としている罰則を引き上げることを盛り込んだ。家畜防疫員には、肉が入っている疑いのある荷物を開ける権限が必要とした。
野生動物対策には、豚コレラ(CSF)で野生イノシシがウイルスを拡散した経緯を踏まえ、経口ワクチンを法律に位置付けるべきだと明示。疾病のまん延防止ではワクチンがないアフリカ豚コレラの侵入時に、発生周辺農場の予防的殺処分をすべきだとした。
飼養衛生管理については農場へ責任者を設置し、基準や都道府県の命令に違反する場合は厳罰化を提言。都道府県や国の責任を明確化し、緊急時に迅速な対応が行われるよう求めた。
今回の提言をまとめたのは「我が国の家畜防疫のあり方についての検討会」。10月下旬から4回にわたり議論した。
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2019年12月07日

日米協定 規模問わず支援明記 畜産増頭強化も 政策大綱改定
政府は5日、環太平洋連携協定(TPP)等総合対策本部(本部長=安倍晋三首相)を開き、日米貿易協定の国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」を改定した。中小・家族経営や条件不利地も含め、規模の大小を問わずに意欲的な農家を支援する方針を明記。畜産の増頭支援やスマート農業の推進を重視した。来年1月1日にも日米協定の発効を控える中、長期的な生産基盤の強化につなげられるかが課題になる。
2019年度補正予算の農林水産対策費として反映する。安倍首相は「なお残る国民の不安を払拭(ふっしょく)する必要がある。国内産業の競争力強化に加えて、農林水産業の生産基盤強化に努める」と強調した。
江藤拓農相は同日、農水省の対策本部で「必要な補正予算の確保を含め、しっかりと対応を議論し、これからの食料・農業・農村基本計画の議論にも反映していきたい」との考えを示した。
来年1月1日に発効する見通しとなった日米貿易協定やTPPでは、特に畜産・酪農への長期的な影響が懸念される。
大綱では基盤強化策として「肉用牛・酪農経営の増頭・増産を図る生産基盤の強化」を掲げた。畜産クラスター事業での中小・家族経営向け支援を拡充する。堆肥の活用による全国的な土づくりの展開も打ち出した。
スマート農業の活用、輸出拡大の環境整備などにも力点を置く。一連の財源確保は「既存の農林水産予算に支障を来さないよう、政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する」との方針を維持した。
牛肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)では、TPPの発動基準数量が米国離脱後も見直されず、日米貿易協定のSGと併存するため、基準数量の調整が課題。大綱では「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況を見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行う」とした。
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2019年12月06日

中小規模に配慮を 畜酪対策で決議 衆参農水委
衆参農林水産委員会は5日、畜産・酪農対策を中心に一般質疑をした。対策取りまとめに向けて、関連補給金は中小規模や家族経営の意欲喚起も考慮して決定することなどを政府に求める決議を全会一致で採択した。江藤拓農相は、関連対策の畜産クラスター事業の要件緩和に前向きな考えを示した。豚コレラ(CSF)の殺処分に伴う手当金の非課税化については、過去の事例を踏まえて議員立法を提起した。
決議では加工原料乳生産者補給金・集送乳調整金の単価や総交付対象数量、肉用子牛生産者補給金の保証基準価格は、中小・家族経営を含む酪農家の意欲喚起を考慮して決定するよう要望。畜産クラスター事業などは、中小・家族経営にも配慮しつつ、地域一体の機械導入などを強力に支援するよう求めた。
畜産クラスター事業の規模拡大要件について、江藤農相は中小規模、家族経営にとって「大きなハードル。重要な政策課題だ」と指摘。地理条件などで規模拡大が難しい農家らへの支援を検討する方針を示した。
加工原料乳生産者補給金の単価決定に向け、江藤農相は環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)、日米貿易協定を踏まえ、「農家の不安に寄り添わなくてはならない」と強調。「財務(省)と、しっかり交渉をやらせていただく」と単価水準確保に力を入れる考えを示した。共産党の紙智子氏への答弁。
豚コレラ発生農家には家畜伝染病予防法(家伝法)に基づき、全頭殺処分を求め、殺処分した豚の評価額と同等の手当金を支払う。ただ手当金は所得税の対象。経営再開の財源確保のため、非課税化を求める声は多い。
口蹄(こうてい)疫の発生時は、議員立法による措置で非課税となった。江藤農相は、現在の法的状況下で非課税にするのは不可能としつつ、「もう一回議員立法でやっていただければ法的には可能」と述べ、与野党議員に検討を提起した。国民民主党の関健一郎氏への答弁。
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2019年12月06日

日米協定“拙速”承認 来年1月1日発効へ 参院
日米貿易協定は4日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、承認された。来年1月1日に発効する見通し。牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税を削減。生産額の減少は過去の大型協定に匹敵する。昨年末に発効したTPP、今年2月に発効した欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に続き大型協定の発効が迫り、日本農業はかつてない自由化に足を踏み入れる。
同協定を巡る交渉は4月に開始。9月に最終合意し、10月に署名した。合意内容の公表から協定の国会審議までは1カ月足らず。TPPなど過去の大型協定と比べても異例の短さで、情報開示や国民的な議論の不十分さが目立った。
同日の採決では、自民、公明両党と日本維新の会などが賛成。立憲民主党、国民民主党などの共同会派や共産党は反対した。
政府は今後、関連する政令改正などの国内手続きを終え、米国に通知する。米国側は国内法の特例に基づき議会審議を省く方針。両国の合意で発効日を決められ、米国の要望に応じて1月1日の発効となる見通しだ。
発効後、日米は追加交渉に向けた予備協議に入り、4カ月以内に交渉分野を決める。政府は関税交渉について「自動車・自動車部品を想定しており、農産品を含めてそれ以外は想定していない」(茂木敏充外相)としているが、具体的な交渉範囲は協議次第だ。
協定では、牛肉は関税率を最終的に9%まで削減する。セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)を設定した一方、発動した場合、発動基準をさらに高くする協議に入る。TPPのSGと併存し、低関税で輸入できる量がTPPを超えるため、政府は加盟国との修正協議に乗り出す。
今後、追加交渉での農産品の扱いやSGの発動基準数量の引き上げの動向などが焦点になる。
日本の攻めの分野の自動車・同部品の関税撤廃は継続協議となった。
政府の影響試算では、農林水産物の生産額は、米国抜きのTPP11の影響も踏まえると最大2000億円減る。国会審議で野党は、日欧EPAなど発効済みの他の貿易協定も含めたより精緻な試算を求めたが、政府・与党は応じなかった。
政府・与党は現在、中長期的な農政の指針となる食料・農業・農村基本計画の見直しの議論を進めている。一連の大型協定による農産品の自由化にどう対応するか具体策が問われている。
国内対策 農家規模問わず
政府は4日、日米貿易協定に伴い、国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」改定案を自民、公明両党に示し、了承された。農業分野では、中山間地を含めた生産基盤強化の必要性を強調し、「規模の大小を問わず、意欲的な農林漁業者」を支援する方針を明記。新たに肉用牛や酪農の増頭・増産対策などを盛り込んだ。政府は5日に正式決定し、2019年度補正予算に農林水産業の対策費として3250億円程度を計上する。
改定案では、国内外の需要に応え、国内生産を拡充するため農林水産業の生産基盤を強化する必要性を指摘。畜産クラスター事業による中小・家族経営支援の拡充や、条件不利地域も含めたスマート農業の活用も盛り込んだ。規模要件の緩和や優先採択枠の設置で対応する。
自民党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(本部長=森山裕国対委員長)などの会合で、西村康稔経済再生担当相は「(農業の)国内生産を確実に拡大するため、中山間地域も含めた生産基盤を強化していく」と述べた。森山本部長は会合後、「(家族経営を)政策の横に置くのではなく、中心に据えてやっていくことが大事だ」と記者団に語った。
改定案には輸出向けの施設整備、堆肥活用による全国的な土づくりの展開、家畜排せつ物の処理円滑化対策、日本で開発した農産物の新品種や和牛遺伝資源の海外流出対策なども盛り込んだ。
農林水産分野の対策の財源について、既存の農林水産予算に支障のないよう「政府全体で責任を持って」確保する方針は改定案でも維持した。
TPPの牛肉SGの発動基準見直しを巡っては、「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況などを見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行っていく」との記述にとどめた。
日米協定国会承認 期限ありき審議不足 再協議規定 農業扱い不透明
日米貿易協定は、踏み込んだ議論には至らないまま、国会審議が終結した。来年1月1日発効を目指す政府・与党は、野党側の資料請求にも応じず、議論がかみ合わないまま審議が進展。野党も最終的には4日の参院本会議での採決に応じたため、農産品の再協議の可能性をはじめとした懸念を掘り下げることなく、協定は承認された。衆参両院の委員会審議は22時間余り。過去の経済連携協定を大きく下回る。
参院本会議では、これまでの委員会審議と同様に、農産品について、米国が「特恵的な待遇を追求する」と明記した再協議規定への懸念が続出。採決の最終盤となっても不明瞭な部分が残っている実態が改めて浮き彫りになった。
国民民主党の羽田雄一郎氏が再協議規定について「米国の強い意志を感じる」と指摘。大統領再選を目指すトランプ氏の強硬姿勢を警戒した。
協定に賛成した日本維新の会の浅田均氏も「米国がさらに強気の姿勢で交渉に臨んでくるのは不可避。積み残しになった自動車・同部品の関税撤廃の確定も含め、交渉は一筋縄ではいかない」と警鐘を鳴らした。
ただ、野党側は採決を容認。会議場内では「反対」などの声が出たが、賛否の投票作業は淡々と進んだ。
衆参両院を通じて、審議不足は否めない結果となった。衆院では、自動車の追加関税の回避の根拠となる議事録など示さない政府・与党に対し、主要野党が反発して退席。与党側が審議時間の消化を優先。質問者不在のまま割当時間を消化する「空回し」を含めても、審議時間は22時間余りにとどまる。
一方、環太平洋連携協定(TPP)は2016年、衆参両院に特別委員会を設けて計130時間以上審議。日米協定の審議時間は短さが際立つ。
さらに衆院では、協定の審議が「桜を見る会」の説明責任を巡る与野党の駆け引き材料になった部分も多い。野党内からも「政争の具にせず、審議の充実を追求していくべきだった」(幹部)と審議運営を批判する声が出ている。
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2019年12月05日
畜酪対策で重点要請 家族経営支援を 全中
JA全中は4日、2020年度の畜産・酪農対策に関する重点要請事項を決めた。中小規模の家族経営を含む、多様な生産者の生産基盤の強化などが柱。ICT(情報通信技術)による労働負担の軽減などに支援を求める。
2019年12月05日

所得向上に重点を 年内に論点まとめる 自民基本政策委
自民党の農業基本政策検討委員会(小野寺五典委員長)は4日、来年3月に改定を予定する政府の食料・農業・農村基本計画について、年内に一定の論点をまとめる方針を確認した。同委員会の顧問を務める宮腰光寛・前沖縄北方相は、農業の経営継承や農家の所得向上に重点を置くべきとする考えを示した。食料自給率目標だけにこだわらず、深刻化する農業の担い手不足などの課題に直結した内容に見直す狙いとみられる。
小野寺委員長は「年内に一定の論点をまとめ、具体的な内容について踏み込んだ政策を図っていきたい」と述べた。
宮腰氏は「今回は農家の高齢化や若い農業経営者の不足などを考えると農地を含めた経営継承が大きなテーマだ」と強調。その上で「農家の農業所得や農村での所得をどう上げていくかが基本計画の目玉になるべきではないか」と提起した。
現行計画ではカロリーベースの食料自給率目標を45%に掲げるが、直近の18年は37%と過去最低に落ち込んだ。45%達成に向けた品目別の生産努力目標も大半の品目で実現が難しい状況だ。
党内には自給率を目標にすることを疑問視する声は少なくない。米中心だった食生活が変化していることへの対応に加えて、自給率低下を招いたとの批判をかわしたい思惑も見え隠れする。
一方、農業就業者は2015年で196万人と、政府の見通しを7万人程度下回る。担い手不足を背景に農地面積も減り続け、直近の19年で439万7000ヘクタールとなり、政府の25年の確保目標440万ヘクタールを早くも下回る。
会合では「規模の大小を問わず、経営を継承している農家にはしっかり支援しないといけない」(進藤金日子氏)、「水田地域を維持するには兼業農家を含む関連人口が多くないと大規模農家が(過重負担で)苦しくなっていく」(鈴木憲和氏)などの意見が挙がった。
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2019年12月05日

日米協定 熟議程遠く 参院委可決 政府、要求応じず
参院外交防衛委員会は3日、日米貿易協定の承認案を与党などの賛成多数で可決した。4日の参院本会議で承認される見通しだ。参院の審議は計11時間余りで、より精緻な農林水産品への影響試算や、追加交渉で農業分野が対象になる可能性など、重要な論点の政府と野党のやり取りは平行線のままだった。野党の資料請求に政府・与党は引き続き応じず、議論は深まらなかった。
自民、公明両与党と日本維新の会が賛成。立憲民主、国民民主両党などの共同会派と共産党、参院会派「沖縄の風」は反対した。
日米両政府は、来年1月1日の発効を目指す。日本政府は承認後、関係政令の閣議決定など国内手続きを終え、米国に通知する。発効すれば牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税が削減される。米は除外した。
参院では、有識者らを招いた参考人質疑も実施したが、質疑時間は11時間15分にとどまった。衆参両院合計でも22時間余りで、特別委員会で130時間以上審議したTPPや、米国抜きのTPP11の際の審議時間を大きく下回る。
衆参両院の審議を通じ、野党側は、時期が未定となった自動車・同部品の関税撤廃を除いた経済効果や、TPPと、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効済みの現状を踏まえた農林水産品の影響試算などを要求した。追加関税の回避の前提となる首脳会談の議事録なども求めたものの、政府・与党は提出要求には応じなかった。
採決前の討論で、野党は「再三の提出要求にも一切応じず、国会への説明責任を放棄した」(野党共同会派の小西洋之氏)などと政府を強く批判した。
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2019年12月04日